華道家とフラワーアレンジメント講師
「一万円でアレンジメント頼む。全体的にピンクな感じで」
事務所兼教室に現れた着物の男は、なんともアバウトな注文をすると、ドサッとソファーに腰かけた。
「出来上がるまで待ってるんで、早くな」
「デザイン考えて、花仕入れてから取りかかったら、有に一日かかる」
「泊まり込みか。着替えは貸してくれ」
「アホか、自分で生けろ」
華道家が花を生けずに、注文しに来るとは何事だ。バカにしてるのか、冷やかしか。
生徒さんが帰った教室を片付けながら、話だけ聞いてやる。
「お前が作ったのが良いんだよ。誕生日プレゼントなんだ」
嬉しそうに目を細めて笑う。
そんな相手なら、尚更自分でやれよ。
イラッとしたから、顔なんぞ見てやらん。
「メッセージカードにちゃんと書いてくれよ」
「そこにあるから自分で書け」
「お前の字で書いてくれ」
『Happy Birthday』の次には何故か奴の名前。
ムカついたから、真っ赤なバラを年齢の数だけ使ってやった。
最終更新:2010年08月23日 11:29