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一匹狼←ヘタレ受

「いちまーい…にまーい…」
「うわああああっ!!」
…もう何回目だ、隣で腰を抜かしかけているこいつに手を貸すのは。
真っ暗な体育館に響き渡る残響を聞きながら、俺はため息をついた。
「あ…ありがとう…」
暗がりなのであまり顔は見えないが、半泣きなのは声で分かる。
「お前、そんなに怖いの苦手ならお化け屋敷なんて誘わない方がいいんじゃねーの」
もたもたして一向に立ち上がれないようなので、腕を掴んで一気に引き上げながら言うと
イケメンで、クラスでは割りと人気もあるが実は怖がりだったらしい大野は
「いや…だってジンクスがあるから…どうしても来たくて…」ともごもご言った。
うちの高校の文化祭は、毎年体育館にできる巨大お化け屋敷がかなり怖いことで有名だ。
男女で来て仲良く二人でゴールし、その後告白すれば必ず成功すると言われている位だ。
俺も怖いといえば怖いのだが、隣の奴がこれだけ怖がっていれば怖さも飛ぶというものだ。
こんだけ怖がりのくせにジンクスのためにお化け屋敷に来るなんて、
どんだけ相手のこと好きなんだこいつ。
「つーか、そもそもなんで練習が俺なんだよ。お前なら一緒に来てくれる奴たくさんいるだろ」
そう、俺はこいつが好きな子に告白する練習台として来ている。
店番は午前で終わりだったし見たい物も特にないので
同じくフリーになったクラスメイトが、どこに行こうかと賑わう中
一人で帰ろうとしていたところをどうしても、とお願いされた。
でも、ほとんど話したこともないクラスメイトに普通こんなこと頼むか。
「え…あー…えっと……石井なら好きな人のことしつこく聞いたりしないかな、と…」
…ああ、なるほど。
つまり俺ならいつも孤立してるから言い触らしたりしないだろうってことか。
「…そんなにその相手のこと好きなのか?」
暗がりを大野のペースに合わせてゆっくりと歩きながら俺は聞いた。
そういえば、まだ大野の手を握ったままだった。
「…うん」
大野の手から熱が伝わってくる。
「あまり話したことはないけど、一年の時からずっと好きなんだ」
…まるで、俺が告白されてるみたいだ。
「告白、上手くいくといいな」

心とは裏腹なことを言った約五分後、俺たちは手を繋いでゴールして
お化け屋敷が怖かった、でも石井に告白したくて頑張った、という本当の告白を
怖さやら何やらで、涙ぼろぼろの大野の口から聞かされることになる。