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クマのぬいぐるみだと思ってたらサルだった

ショータが放課後、女子と一緒に何かしてたのは何となく知ってたけど、まさかフェルトでぬいぐるみを作っているとは思わなかった。
「ソウマ、これやるよ。お前もエナメルに付けとけ」
「おー、なにコレ、作ったん?」
「おうよ」
「すげー。さんきゅ、かわいいじゃん」
「サッカー部で貰えてないのはお前だけだからなあ、かわいそうで見てられね」
関東大会出場が決まってから、部の連中のエナメルバッグにはお守り代わりの手作りぬいぐるみがぶら下がるようになった。
いる奴は彼女とか、ファンの子とかがくれるのだが、俺は全部断っていて、ショータもそれはよくわかっていた。
多い奴は10個ぐらいぶら下がってるが、俺のはシンプルに飾りは無い。
ショータがくれたものをまじまじと見る。
手が込んでるのかどうなのか俺にはよくわからないけど、目がちんまいビーズだ。
手のひらより小さくて、俺はとてもこんなものを作ろうとは思わない。
「すげぇな、よく出来てるじゃん、このぬいぐるみ。ちゃんとクマに見える」
「はぁ?」
「何?」
「ぬいぐるみじゃなくてマスコットだし」
「どう違うのよ」
「平べったいし。ぬいぐるみったら立体だろ」
「うーん?」
俺にはその違いが全くわからない。
「それにクマじゃなくてサルだし」
「あー? クマじゃねぇの?」
「サ・ル! よく見ろよ、ちゃんと違うフェルトで顔の色も変えてんだろ」
「でも、サルったら耳がもうちょっと横にねぇ?」
「それは、縫ってるうちに移動しちまったの! ちっちゃいからすげぇ苦労したんだからな」
「へえ…そういうもん」
「そういうもん」
「しっぽとか」
「縫ってるうちに抜けちった。ちっちゃいから苦労したの」
「…なるほどな。ところでなんでサルよ」
「そりゃあ…俺が猿渡ショータだから?」
「おー…」
なんかわからないが感動する。俺はショータのこう言うところが本当に好きだ。
「俺もお前と一緒にサッカーしてる気になっだろ」
「おお」
「次はクマ作っから。熊野ソウマの」
「うん」
部活が忙しくてなかなか一緒に帰れないし、土日も部活でつぶれて、こうやってショータと一緒にいられる時間が激減していた。
クラスも違うから、休み時間の廊下で、ほんの5分くらいの立ち話しか出来ないけど、顔を見てるだけで力が湧いてくる気がする。
「ありがとな。大事にする」
にこっと笑って、「んじゃな。次俺移動だから」と手を振ってショータはクラスに戻った。
次の大会は絶対に絶対にショータのためにゴールする。
手の中のクマにしか見えないサルに俺は固く誓った。