part22 >>437


 青白い回廊に足音を響かせて、戦人は一人歩く。外に見える薄闇に沈んだ庭園には、美しい薔薇がどこま
でも咲き誇っているが、そんなものには目もくれない。彼の心にあるのは今は何も話さない一人の魔女と、彼
女の元から奪われたゲーム盤のことだけだった。
「……ちくしょう」
 ぎりぎりと唇をかみしめて、戦人は呻く。第五のゲーム、ベアトリーチェの元から奪われ魔女どもの玩具にさ
れてしまったその盤上では、ロノウェの言うとおり「愛」のかけらもない展開が繰り広げられていた。
 プライバシーを侵し、気遣いや決意を嘲笑う探偵。貶められる人々の様子を楽しむ魔女。
 ベアトリーチェも残虐な魔女ではあったが、それでもこのゲーム展開はあまりに卑劣だった。そして何より、
あの盤は醜悪な魔女どもの玩具ではない。
 あれは、戦人とベアトリーチェの、二人のためのゲームだ。二人が競い、相手を読んで進めるはずのゲーム
が、ただの暇つぶしの道具と化している。そんな状態を、戦人が許せるはずもない。
 だからたった今まで、戦人は彼女らのゲーム盤をのぞきこみ、その世界に降り立ち、魔女たちから切り取ら
れた世界を奪い返そうと必死に戦っていたのだ。……成果は、決していいとは言い難いが。
「…………」
「………………くす、くすくす」
「っ、!」
 回廊に響く、少女の笑い声。疲れたからお茶にしましょ、とラムダデルタが言って、ゲームは今一時中断され
ている。戦人はその間に部屋に残してきたベアトリーチェの様子を見てこようと席をたったから、あの魔女ども
が今何をしているかは知らない。
 ひょっとしたら、その辺の柱の陰で、自分が顔をしかめているのを見て笑っているのかもしれない。嫌な想像
を振り払って、戦人は足を前へ動かす。
 今のベアトリーチェは、一人では何もできない。苦痛から逃げようにも、近くに誰かが付いていなければ彼女
が苦しんでいることさえ分からない。だから出来るだけ、戦人はベアトリーチェを一人にしたくなかった。かとい
って、あのゲーム盤のところへ無理矢理連れ出したくもない。仕方がないので、ゲームの間はワルギリアが可
能な限りついていてくれることになっている。とはいえ、ワルギリア自身がゲームに呼び出されてしまえば、ベ
アトリーチェは独りぼっちだ。
「くすくすくす……」
 幻聴なのか、現実なのか。少女のひそやかな笑い声が、回廊中に反響する。背筋をぞわぞわと嫌な予感が
這い上って、戦人の足はいつの間にか走り出していた。いくつもの角を曲がり、ベアトリーチェのいる部屋を目
指す。夜露にぬれた庭園の薔薇が、むせかえるような匂いで戦人を包み込んでいた。

「ベアト――――」
 ようやくたどり着いた部屋の扉を押し開けて、しかし戦人の体は動きを止めた。視線の先、部屋を出る前に
ベアトリーチェが腰かけていた椅子の上は、無人。ワルギリアの姿は部屋になく、外と同じ薄闇の中に部屋は
沈み込んでいる。
 その中央で、蒼い足を小刻みに動かす毒蜘蛛が、金色の蝶を食っていた。
「――――!?」
 目の前の光景に、頭の中が真っ白になる。
部屋の真ん中にうずくまった、毒蜘蛛、いや、古戸ヱリカ。そしてその下敷きになっている、長い金の髪を広げ
た魔女、ベアトリーチェ。彼女の体はまるでクモの巣に磔になったように床に押し付けられ、そのうえでヱリカ
が蠢いている。ぴちゃ、と濡れた音が、小さく部屋の中にこだました。
くすくすくすくす、くすくす。女の甘い笑い声が、部屋の中に響く。ヱリカはベアトリーチェにのしかかり、そのドレ
スを乱し、裾から手を差し入れ、彼女の体を弄んいた。白い手がドレスの胸元を這いまわり、脚の間に体を挟
み込んで開かせる。そのたびに、微かにベアトリーチェの体が揺れ、頭がいやいやするように振られた。
 戦人にはそれが、毒蜘蛛に生きながら食われる蝶が、断末魔の悲鳴を上げて痙攣しているように見えた。
「――――テ、テメェェ!!」
「きゃっ!」
 目の前が怒りで赤く染まって、気づけば戦人はヱリカに体当たりをしていた。華奢な少女の体が跳ねのけら
れ、どしんと尻もちをつく。蜘蛛が前足を折りたたむように長い蒼髪をくねらせて、ヱリカは一瞬だけ不快そう
に顔をゆがめたあと、いかにもおもしろいと言いたげに眉をあげた。
「あらあら、これは戦人さん。さっきぶりですね」
「うるせぇ!!テメェ、ベアトに何をした!?」
 胸倉をつかみ上げると、少女が眉をしかめて首を振る。野蛮な人は嫌いです、とでも言いたげな仕草に、戦
人の怒りが燃え上がる。そのまま首を締め上げる勢いで、少女の胸倉をつかんだ手に力を入れると、ヱリカ
が苦しそうに顔をしかめた。
「う、ふふ……何をそんなに必死になっているんです?その人はあなたの敵じゃなかったんですか?」
「それはお前には関係ない!!俺は今、お前が何をしていたか聞いているんだ!!!」
「くすくすくす……ただ、ちょっと遊んでいただけですよ。暇つぶしに、ね。だからムキにならないでください」
 挑発的に、そして嫌味なくらいに美しく、ヱリカは笑む。自分が悪いことをしたとか、そういうことをまったく思
っていない、ひどく無邪気で、そしてそれゆえにおぞましい笑顔だった。胸を締め上げる手が、その気味の悪
い笑みを前にゆるんでしまう。

「我が主を楽しませてさしあげることもできない、役立たずのお人形になってしまったその人が、どれくらいお
人形なのか、ちょっと試してみただけですよ。本当に何も感じないのか、ってね。くすくす、くすくすくす」
 ヱリカの言葉に導かれるように、戦人は倒れたベアトリーチェに視線を落とした。
 美しい金の髪が、床に広がり、海のように波打っている。ドレスの胸元は乱され、白い肌と豊かな膨らみが
ほとんどむき出しになっていた。裾はめくり上げられ、すらりとした脚が太もものあたりまでのぞいている。
そしてベアトリーチェは、その白い頬を淡く染めて、苦しそうに息をもらしていた。花の蕾のような唇は半開きで
、唾液で湿っててらてらと光って見える。かすかにその奥に見える桃色の舌が、ひどく淫靡だ。
 うつろな視線が、かえってその艶やかな口元や、無防備な体の色香を強調している。思わず見入ってしまっ
たところで、力の抜けた手をひきはがし、ヱリカが素早く部屋の出口に駆けよった。
「っ、待て!」
「くすくすくす!!心はどうなろうと、体は正直、ってことですね!なかなか興味深いですが、私は暴力が嫌いな
ので、ここでお暇させていただきます。それではごきげんよう」
 言うだけ言って、ヱリカの姿がドアの向こうへ消える。くすくすくす、という、毒をはらんだ甘ったるい笑い声だ
けが、部屋の中に残った。
「……ベアト、大丈夫か」
 倒れた体を抱き起こして、うつろな瞳に問いかける。悲しいことに、返事はやはりない。ただ、いつもは何の
色も浮かべないその瞳が、微かに潤んでいるのがわかった。
「…は、……ん、っ……」
「ベアト?」
「はぁ、……ぁ……」
 そっと肩に添えた手の下で、いつもは人形のように動かないからだが、ぴくぴくと動く。むき出しのままの太も
もが悩ましげにくねり、乱れたドレスの裾をさらに乱す。体の震えに合わせて、真っ白な乳房がふるふると震え
、その桃色の先端が赤く色づいていく。
「ベアト?ベアト、どうしたんだ?なぁ、おい」
「あっ、……あぁ……」
 白い頬が、赤くなっていく。息はさっきよりも荒く、体の震えは止まるどころか激しくなっていく。
「……くそっ、あの毒蜘蛛女……」
 何をどうしたのかあまり考えたくなかったが、ヱリカはどうやら相当にベアトリーチェの体を弄び、玩具にして
くれたらしい。そのせいで、中途半端に高められた体の熱がおさまらないのだろう。戦人は男だから、中途半
端に体が熱い状態がどれほど苦しいかはよくわかる。女も同じかはわからないが、今のベアトリーチェの体は
、彼女自身の意志とはまったく無関係に発情しているのだと思った。

「……ど、どうしたら……」
 ワルギリアやロノウェに相談しようにも、たぶんプライドの高いベアトリーチェは、そんなことは嫌だと意識が
あったら言っただろう。かといって、このまま放っておいても熱がいつ引くのかはわからない。 もどかしげに震
える背を慰めるようにさすってやっても、かえって震えは大きくなるばかりだ。
「っ、ぁぁ……」
「な、なぁベアト、お願いだから落ちついてくれ……」
 戦人の体に触れる、ベアトリーチェの熱のこもった皮膚。乱れたドレスをなおしてやろうと思って目を落とせ
ば、豊かな胸や白い脚が視界に入ってしまう。ふるん、と震えた乳房の先端がぴんと立ち上がっているのを見
てしまえば、戦人の体も自然と熱くなる。まだ女性経験のない戦人にとって、熟れた体を惜しげもなく預けてく
る美しい魔女の姿は、見ているだけで射精してしまいそうなほどの欲情を誘うものだった。
すぐ近くの美しい貌が、欲情を宿した瞳で遠くを見つめているのを見ると、喉がなる。かすかに開いた口の間
で、ぴしゃり、と音を立てて唾液まみれの舌が動いたのが見えた時、戦人の理性がぐらりと揺らいだ。
「……ま、まずは体を落ちつけないとだよな。だったら一回高め尽くしちまえば……。だ、だからベアト、これは
お前のためであって俺の下心じゃねぇ……って断言はできねぇけど、とにかく……」
 戦人自身も荒い息を吐き出しながら、熱い魔女の体を後ろから抱きこむ。ベアトリーチェは特にそれを了承
した風でもなかったが、嫌がるそぶりは見せなかった。それ以上に、体の熱に眉をしかめて、苦しそうに息をし
ている。彼女自身も、熱を沈めてほしいと思っているように見えた。
「とにかく、ごめん……」
 形だけの謝罪とともに、戦人はその豊満な体に手を伸ばした。むき出しのままの震える乳房を包み込んで、
その感触を味わうようにそっと揉む。戦人の手の中で、二つの白い果実はぷるん、と震え、従順に手の動きに
合わせて形を変えながら弾んだ。
「うお……すげぇ」
「あ……あ、あん……」
 あまりの柔らかさと弾力に、思わずごくりとつばを飲む。少し力を込めて揉むと、ベアトリーチェの唇からこぼ
れる吐息が高くなり、甘くなる。ふわふわの乳房の中でも唯一固い頂をそれぞれつまんでやると、魔女の背筋
がびくんと震えた。
「あ、あぁ、……!」
「ベアト、これ、気持ちいいか?気持ちいいのか?」
 問いかけながら、戦人は夢中になって胸を愛撫した。乳首をやさしく指先でこすり、時々いじわるをするよう
に爪を立てながら刺激し、掌からこぼれんばかりの膨らみを強弱をつけて揉みたてる。掌に吸いつくような豊
かで滑らかな感触に、戦人は隠しようもないくらいに興奮していた。

「ベアト、ベアト……!」
「ふ、ぁ……っ、ひぅ……」
 熱情に震える戦人の指先が、ドレスの裾の方へと伸ばされた。無意識のうちに開かれていた脚の間に手を
差し込んで、すべすべとした太ももの感触を堪能する。そのまま脚の付け根の方まで指を這わせていくと、途
中で何かくしゃりとしたものが指先に引っかかった。
「あ……」
 後ろから体を抱きこんで裾の内側へ手を入れているため、戦人にはドレスの中は見えない。が、レースらし
きひらひらした感触と形状で、それが下着であることがわかった。ヱリカはベアトリーチェで“遊ぶ”時に、こち
らの方も手を出していたらしい。片足にだけひっかかった下着は、頼りない感触だけを伝えてくる。
 再び、喉がごくりと鳴った。恐る恐る、指先をさらにその奥へと伸ばす。熱気のこもったドレスの中で、戦人の
指先に濡れた何かが触れた。
「あ……!」
 びくん、とベアトリーチェの背がのけぞる。虚ろな瞳から、涙がじわじわと浮き上がってくる。それが苦しみで
も悲しみでもなく、欲情からきていることは上気した頬と熱い息からも明らかだった。
 その表情にまた煽られて、戦人はそっと指先を動かす。くちゅ、くちゅ、とそこに擦りつけるたびに水音が鳴り
、ぬるぬるした粘膜が指先に吸いついた。たまらず、衝動的にその指を、一番ぬるぬるしている場所へとあて
がい、力を込める。
「ふぁ、ぁぁ……!」
「っ……!」
 ぬるん、とベアトリーチェの胎内に侵入した指が、締め付けられる。たっぷり潤った膣内で、戦人の指に絡み
つくように壁が迫ってきて、きゅう、きゅう、と収縮する。密に濡れた内側が誘うように奥へと蠢いているのを感
じて、戦人の理性は音を立てて崩れた。
「ベアト……!」
「あぁ……!あ、ぁ……っ、」
 指を一気に二本差し込んで、濡れた内側を探るようにかき回し、ぐちゃぐちゃと音がするほどに抜き差しする
。ナカを広げるように指先で開いては激しく出し入れすると、とろけた粘膜が抜ける指に吸いついては締め上
げ、奥に向かって差し込む時には甘えるように緩んで絡みつく。ベアトリーチェは言葉もなく、ただ甘い声をあ
げて背筋を震わせている。


「ベアト、ベアトっ……!だめだ、俺、もう……!」
 戦人のズボンの中では、とっくに興奮しきった自身が勃ち上がり、目の前の美しい体を蹂躙したいと主張す
るように激しく脈打っている。痛いくらいに勃起して布地を押し上げるそれを取り出すのももどかしく、戦人はベ
アトリーチェを床に寝かせると、その脚の方へと回りこんだ。魔女は相変わらず、甘い吐息をこぼしながらされ
るがままに横たわる。
「ベアト、いいよな、お前だってこんなになってるんだから、な、いいよな……!」
 正面から抱きしめ、豊かな乳房にむしゃぶりつきながら、戦人は人形のようなベアトリーチェに呼び掛ける。
意思のない、疲れ切った彼女の体を無理矢理に犯すことがどれだけひどいことか、戦人にはよくわかっている
。わかってはいるけれど、この興奮の前では全てが無意味だ。
 ズボンの前を開け、下着の中から取り出した自身は、すでに先端から先走りをこぼしてびくびく震えている。
このドレスの奥、桃色に色づいた秘所を犯して味わい尽くしたいと、戦人の体中が訴えていた。
「……っ、……!」
「ベアト、ごめん、ベアト……!」
 固く尖った乳房の先端を口に含んで転がして、両手でしなやかな体中に触れ、ドレスに潜む濡れた粘膜に指
を差し込んではかき回す。しどけなく投げ出された脚を掴んで開くと、その奥にとろとろに濡れた割れ目が見え
た。その赤い入口が、誘うようにひくり、ひくりと動いては蜜に濡れていく。
「ベアト、……!」
 後戻りできない欲情にさらされながら、それでも戦人はベアトリーチェに呼び掛けた。今ここでベアトリーチェ
が顔をしかめて呻き、首を振ったとしてもやめられるとは思えない。それでも、彼女の心をまるで無視して、そ
れこそ人形のように犯すのだけは嫌だった。
 戦人にとって、ベアトリーチェは敵だ。敵だけれど、不思議な感情がある。こんな風に意識をなくした彼女を
見ているのは悲しいし、もう一度あの子供のように楽しそうな笑みを見せて欲しいと思う。ゲーム盤で人の命を
弄んだ彼女を憎む一方で、時おり投げかけられる切ない視線の意味を知り、彼女を苦しみから救ってやりた
いとも思う。愛憎の入り混じった感情にさらされて、ひたすら本能に従って開放を求める体にさえ翻弄されなが
ら、戦人はすがるようにベアトリーチェに呼びかけた。
「ベアト、頼む、なぁ……!自分勝手ってわかってる、でもお願いだ、俺はお前を抱きたい……!」
「…………」
 その時、ふと、ベアトリーチェの表情が、動いた。ただうつろに潤み、夢を見ているような瞳が、すっと細まる。
そして、緩やかに開かれていた唇が、微かに笑みの形をかたどった。
 それが戦人には、彼女がこれからのことを許してくれたように思えた。
「ベアト……!」
 胸にこみ上げる感情の意味を、戦人は知らない。ただ、目の前の体がいじらしくて、彼女の心が遠いところ
にあるのが悲しくて、戦人はベアトリーチェの体を抱きしめた。そしてそこで、彼女の体が冷たい床の上に投げ
出されたままであることに気づく。幸い、ベッドは数歩先のところにあった。
 熱い体を抱きしめたまま、戦人はベアトリーチェの体を抱き上げる。ベッドに一緒に倒れこむように突っ伏し
て、戦人はベアトリーチェの穏やかに微笑んだ唇に、思いのすべてを込めて口づけた。


  • こういう展開が一番面白い -- (名無しさん) 2009-10-15 14:34:39
  • いいですねぇ…好きです。 -- (名無し) 2009-11-11 13:55:46
  • あ…もう終わりか…続きがみたいwいいね。 -- (名無しさん) 2011-10-27 01:36:27
  • 続きはまだですか!? -- (名無しさん) 2011-11-24 04:06:55
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