右代宮縁寿は夢の中にいた。
薄く霧掛かった回廊には赤いカーペットが敷かれ、その奥は暗闇へと続いている。
左右の厳かなランプには、今にも消え入りそうなキャンドルがその奥へ奥へと手招いている。
縁寿は導かれるがままに、暗闇へと歩を進める事にした。

ただただその廊下を歩きながら、縁寿は次第に考えていた。
これが夢だという事を理解しているからだろうか。思えば不思議な話だ。
普段の自分ならば、何をするにももっと警戒しているはずなのに。
歩き続けているうちに、そんな考えも浮かばなくなり、縁寿は次第に心が軽くなっていく事だけを感じた。

ふと縁寿の目の前に扉が現れた。豪華に、威圧的に、冷たく作られた巨大な扉。
縁寿がその扉を開けると、そこは寝室―――魔女の寝室だった。
その寝室はとても暗く、狭い。
その中央には部屋には不釣合いな大きく、豪華な、眠り姫の為のベッドがあった。

ベッドの上には小柄な少女が一人横たわっている。
見知らぬ少女だったが、縁寿はその少女に出会った事があるような気がした。
「んっ……、あン」
少女が小さく声を上げて身悶える。状況を理解すると、縁寿は急に気恥ずかしさを感じ始めた。
(何やってるのよ私……っていうか何よこの夢)
「あぁん、もう……くぅっ……」
たおやかなドレスをはしたなく乱して、少女は自らを慰めていた。
いつからそれを続けているのか、全身には汗が浮かび、それでも尚果てる事が出来ずにいる。
「あっ、あっ、ダメっ、ああぁんっ!―――はぁぁ……」
そうしてまたも少女は昇り詰める寸前で力尽きた。そして何故か右代宮縁寿はそれを呆然と眺めている。

(何なの?私にどうしろって言うの?あぁんもう!)

バタンとわざと大きな音を立てて扉を閉めると、流石に少女もこちらに気がつく。
「ちょ、ちょっとぉ?何よアンタ……、縁寿?」
「全く、見せつけてくれちゃって何のつもりなのかしら」
縁寿が大股で近づいて来るので、少女は逃げ出す暇もなく、ベッドの上で身じろぎするしかない。
「溜まってんでしょ?私がシテあげるわ」
「あ、アンタねぇ……。何勝手に人の部屋に入って来て勝手なこ、キャアアア!?」
問答無用とばかりに縁寿は少女を押し倒すと、高級そうなドレスを剥ぎ取っていく。
「やだぁあああ!!な、何すんのよぅ!この馬鹿ぁ!!」
「おとなしくしてればすぐ良くしてあげるわよ」
「ワッケ分かんない!離して、離してよぉ……ひゃあんっ!」
露になった小ぶりな胸に縁寿が舌を這わすと、少女は敏感にそれに反応する。
「やぁあ……そこ、ダメぇ……」
「じゃあ他の所ならいいのかしら」
縁寿は体勢を少女を後ろから抱きかかえるような格好に変えると、耳元で囁きながら、太股に手を伸ばす。
「……何よこれ。もうぐしょぐしょじゃない」
「――――ッ」
内股に指を這わすだけで、感電するように体を跳ねさせる。
「アァ……、んッ……!も、もう……許してぇ……。もう……」

「―――――どうして欲しいの?」
少女の秘所には触れぬように、縁寿は優しく指をしならせる。
「言ってくれなきゃ。わからないわよ?」
最後の一言を促すように囁き、耳たぶに無慈悲に舌を這わせる。
「―――せて」
「何?」
「イカせてッ!イカせてよぉ!―――ひとりじゃ、一人じゃダメなのぉ!!」
搾り出すように少女は叫ぶ。縁寿の背筋にぞくりと快感が走る。
ずぷりと縁寿の中指が少女の中へと侵入する。
「あっ、あっ、あっ、ぁ……」
「あら、まだ一本しか挿れてないのよ」
続けて人差し指をゆっくりと差し入れる。二本になった指が代わる代わるに中をかき混ぜていく。
「――――――――――――」
指を動かす度に自らの腕の中で小刻みに震えるのが、何故だかとても可笑しかった。
「いくわよ」
少女の口は三本目を咥え込むと、束ねた指を根元から心地良く締め付ける。
「何よこれ。こんなに嬉しそうに飲み込んじゃって。いやらしい人……」
「ぁう……!縁寿の、ばかぁ……」
「動かすわよ」
「やっ、あ、待っ……!くぁぅ!」
縁寿は束ねた指を激しく動かし始める。それもわざとぐしゅぐしゅと音を立てて、羞恥心を煽るように。
「いっ……、やあああああああああ……!だめぇええええ……っ!」
「……本当みっともない。ほら、早くイっちゃいなさい」
「ばか、ばかぁ……!あっ、あっ、あっ、あああああああああああああああぅ!!」
がくがくと小柄な体を震わせて、少女は気を失った。
縁寿は少女をベッドに横たえると、自分の太股をハンカチで拭わなくてはならなかった。


しばらくして少女は目を覚まし、虚ろな目で縁寿を見つめた。
「―――気持ち良かった?」
「馬鹿縁寿。死んじゃえ」
からかわれたと感じたのか、少女はぷいとそっぽを向いた。
「………じゃあ。私はもう行くから」
「帰っちゃうの?」
再び少女がこちらを見つめる。縁寿にはその青い青い瞳が寂しげに見えた。
「うん、行かなくちゃいけない所があるの」
「そう。――――――――さ、さっさと行っちゃえば」
またもそっぽを向いて拗ねる少女に、縁寿は優しく近寄って、その小さな唇にそっとキスをした。
少女は一瞬驚いた顔で縁寿を見つめ、何か憎まれ口を叩こうと口をぱくぱくさせ、やがて批難がましい表情で押し黙った。
「――――シーユーアゲイン。……またね?」
「……ばかえんじぇ」
そうしてベッドに潜り込んだ少女を見守ったまま、右代宮縁寿はゆっくりと扉を開けた。




―――――そこに、私がいた。
そこには、だらしなく着衣を乱し、二本の腕で自らの体の火照りを慰める、淫乱で、情けない、右代宮縁寿がいた。
右代宮縁寿は少女を見ていた。振り返ると、そこには一心不乱に自らを慰める少女がいた。
結局、二人はこの扉を挟んで、ただ自分を慰める以外どうする事も出来ずにいた。
もしも、私、縁寿にこの扉を開けて、あの少女の所へたどり着く事が出来たなら―――――
どうしても、それが、できない。

先程の営みは一人きりの右代宮縁寿が見た夢だったのか。
バタンとわざと大きな音を立てて扉を閉めると、縁寿は逃げるように元来た道を駆け戻り始めた。


 〈オワリ〉


  • 絵羽おばさん…? -- (戦人) 2011-05-20 20:39:22
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