part22 >>667


「……………んっ……」
陰を落としていた睫毛が震えると黄金の頭がふらりと揺れ、ゆっくりと目を覚ます。
よく手入れされたチェアにもたれ掛かりながらぼぅっと瞳に映った流れ行く雲を見つめると、ゆっくりと周りを見渡す。
「…………夢、か………」
寝惚け眼に映るいつもの変わらぬ光景になにを確かめたのか、肩を落としながらぽつりと残念そうにベアトリーチェは呟いた。


今でも脳裏に浮かぶ―――。
随分と楽しい夢だった。今まで生きてきた中であれほど楽しい夢はなかった気がする。
楽しい…楽しい……。


「…目が覚めたか、ベアトリーチェ」
深い年齢を感じさせる良く響く声に視線を移せば見知った顔がそこにあった。
「…金蔵…来ておったか」
久方ぶりの来客に頬を緩めて歓迎するようにベアトリーチェは微笑を向ける。
その微笑を金蔵は身内の誰にも見せぬような柔らかな笑みで見つめ続ける。愛しそうに、心の底から愛しげに。
未だ夢から覚めやらぬ頭ではあったが、唯一の来客に失礼であろうとベアトリーチェは身を正し――テーブルに紅茶のカップが置いてあることに気付いた。
金蔵が淹れてくれたのだろうとカップに手を伸ばせば、指先に触れるそれはひんやりと冷えていて
この場に置かれた時は暖かな湯気を立ち上らせていたであろう紅茶が放置され、どれ程の時間の経過と共に冷やされていったのか
それは金蔵がずっとこの場に居た事の証しでもあり、己が友人をどれ程待たせてしまったのか
触れた指先だけで充分すぎるほどに伝わり、緩やかにベアトリーチェは頭を振る。
「……妾は随分とそなたを放って寝ておったようだな。すまぬ金蔵」
「良い。私は好きでここに座っていただけの事だ。
 …それにお前の寝顔を見るなど随分と久々でな、起こすのが勿体無かったのだよ」
申し訳なさ気に頭を垂れるベアトに金蔵は軽く笑ってその金の髪を撫でた。
大きくて暖かな手はまるで父親のよう…。2人は親子ではなかったが、その様は宛ら仲の良い父と娘であった。
思えば金蔵とは不思議な関係だと、ベアトリーチェは思考する。
こうして頭を撫でられ、優しい言葉をかけられれば心がほわっと温かくなるのを感じる。
雪解けの冷たい水を暖めてくれる日差しのように…。
きっとこの気持ちは父に向けるそれなのだろうと、親の記憶を持たぬベアトリーチェは愛しげに見つめる金蔵にはにかむような笑みを向けた。
「…して、どんな夢を見ていた? 目が覚めた時、随分と寂しそうであったぞ」
その問いにベアトリーチェは一瞬言葉に詰まる。けれどそれは決して言い難いという類のものではなく
ただほんの少し…恥ずかしく、照れてしまう…そんな印象を受ける表情だった。
「…金蔵からしたら大した夢ではないかも知れぬが…」
ベアトリーチェは髪を飾る薔薇のように頬に朱を混じらせて染めながら、脳裏に焼きついている夢の話を語り始める。



「―――そこは、どこかの一室のようでな…妾はチェス盤を指しておった。
 目の前には、白いスーツの男――どうも妾の対戦相手らしい。
 その男は様々な手を打っては妾に切り返され、それでも手を緩めることなく妾を打ち負かそうとしていた。
 無能と嘲笑っても、大切な者達を失っていっても、あの力強い輝きを失わずに…真っ直ぐに…」


どこか遠い場所を見るように、懐かしそうに…待ち遠しそうに…ベアトリーチェはあの瞳を思い出す。
その様はどこか恋焦がれるようでもあり、子供の頃に見た絵本の登場人物…「王子様」と呼ばれるものに憧れるようでもあった。

けれど夢中に話していたベアトリーチェは気付かなかった、金蔵の一瞬浮かべた表情に。
まるで身内を前にするかのように冷え冷えとした、全てを凍らせるような表情に――。
「…所詮夢は夢。ベアトリーチェ、大事なのは今、であろう」
「む…それは…そうだが…」
金蔵が思ったほど食いつかなかったのが面白くないのか、ベアトリーチェは口を尖らせて声にはならない不満を訴えた。
金蔵はその心の内を知りながら何も語らず、視線すら合わせようとしない。
何故そんな態度を取るのかベアトリーチェには皆目見当もつかず、心の内の不満は益々強くなっていく。
「…確かに今も大切であるが、妾はもう一度あの夢が見たい…。
 …もう一度、あの男に……」
ベアトリーチェはそっと目を閉じて恋する乙女が夢想するかのように、自分に立ち向かってくる夢で出会った男を思い返す。
何も知らない、ただ魔女であると…それだけを課せられ、そんな自分に疑問を抱く日々を送るベアトリーチェにとって
自由に、強い意思を持ったあの男が、とても眩しく思えたのだ。
蛹は太陽を知らない。きっとそれは、太陽を知ってしまえば蛹はその眩しさに魅せられ
恋しさのあまり不完全な変体を遂げて飛び立ってしまうであろうから。
けれどその蛹の変体を今か今かと待ち続けていた捕食者は、自分以外の元へ飛び立とうとする蛹を…
完全な蝶と成り、己が全てを奪えると思っていた蛹の想いを――決して許しはしないのだ。

「ベアトリーチェ…」
金蔵は、その変体を成しえようとする蛹の肩を掴む。両の手で、決して逃がさぬと言うかのような強い力で。
「…金蔵? ………ん…痛い…。どうかしたか?」
「…ベアトリーチェ、お前は私の物だ」
「…? 金蔵、妾はそなたのものではないぞ? 妾は誰の物でも…」
「いいや、私の物だ! お前は私だけの…私だけの黄金の魔女ベアトリーチェ!!」
ベアトリーチェのその華奢な身体が太い腕に捕縛され、強く、強く抱きしめられた。
「…痛い…金蔵、痛い…」
ギリギリと身体を強く抱きしめられ、羞恥よりも先に痛みが勝って形の良い眉を寄せて訴える。
けれどもちろんそんな抵抗は金蔵には届かない。
「ベアトリーチェ…お前は私だけの物…私の全て…
 誰にも渡さぬ、渡してなるものか…! 例え夢であっても同義よ、お前の目に映るのは私だけでなくてはならん!!
 おお…ベアトリーチェ…何故私の思いを受け入れない…何故こうまでしてお前を愛しているのに受け入れない…!!!
 愛してる!愛しているベアトリーチェ! お前が私を受け入れないのならば…お前が私以外を見ると言うのなら…
 その目も、耳も、五感全てを私が支配しようぞ!!! そしてお前を永遠に私の物へと…!!!!!」
金蔵の慟哭とも呼ばれる言の葉はベアトの胸の内に黒くモヤモヤとした不安を植えつける。
何を言っているのか、何をしようとしているのか、ベアトリーチェは知らない。わからない。
けれど本能では理解していた…何か、とても悲しい事が身のうちに起きると―――。

「な、なァ…金蔵? 妾の夢の話が不快だったんなら謝るよ…だから…さ…、離してくれぬか…?」
胸に巣食った不安からか、爆弾を前にしたようにそぉっと伺うように、その爆弾に衝撃を与えないよう恐る恐る口を開く。
けれど変わらない。金蔵はもう既に、その爆弾を爆発させているのだから。
「き、きんぞ………―――ヒッ…ぐ?!?!」
白く滑らかな曲線を描く首筋に、金蔵は歯を突き立てて噛み付く。
それはさながら美女の生き血を吸う吸血鬼――けれどこの吸血鬼は美女を愛していた、狂おしい程に。
だから、こんな物では足りなかった。
肌理細やかな肌に食い込んだ歯は痛々しく、小さな悲鳴がベアトの口から漏れると白い首筋にじわりと血が滲んでいく。
それを味わうかのように吸い付き、舌で傷を舐めながら恍惚に満ちた笑みを金蔵は浮かべる。
「い…たい……うくッ…」
「…ベアトリーチェ…ベアトリーチェ…!」
金蔵はうわ言のように愛しい人の名を呼び、やがて首筋から唇を離す。
皮膚の下を流れる血管が見えるほどに透き通った白い肌に…痛々しい、印が咲いている。
赤く、紅く、咲いた、逃げられない証。

動揺に揺れるベアトリーチェの蒼の瞳を金蔵は真っ直ぐに見据え、言葉を紡げないでいる唇に指を這わせる。
形を確かめるように柔らかな感触を指先で伝い、愛しげに瞳を細めた。
「この小鳥が囀るような麗しい声を聞かせる唇も
 この滑らかでふとした事で薔薇のように華やかな色を咲かせる頬も
 このお前の真っ直ぐな心を思わすようなすぅっと通った鼻も
 この海を見たことのないお前が見せる深い蒼の色をした瞳も
 この形よく揃った眉や、瞬きする度に揺れて美しい影を作る長い睫毛も
 この日の光に浴びれば朝露のように光り輝き、散りばめた硝子の破片のような彩りを見せる髪も
 この私を離して止まぬお前の心も――全てが、私の物
 誰にも渡さぬ。…ああ…今こそお前は私の物だ……ベアトリーチェ…愛している…!!」
その言葉はまるで呪い。黄金の蝶を永遠の檻へと縛り付ける為の呪い。
ベアトリーチェは温厚な面しか見せない金蔵の、今まで隠し通してきた奥底にある狂気に初めて触れた。
小さく手が震え、どうしたらいいのかもわからず、突然塞がれた唇に声を上げる間も無く瞼をぎゅっと閉じて耐える他なかった。
金蔵の唇はベアトリーチェの震える小さな唇を啄ばむように貪り、チェアに腰を下ろしたベアトリーチェの細腕を力を籠めて引っ張り上げる。
チェアと同様、よく手入れされたテーブルの上に華奢な身体が乗り上げ、頭の上で交差するように細腕は1つの手で押さえつけられ
その拍子に冷えた紅茶の入ったカップはテーブルから揺れ落ちると地面へと吸い寄せられ、けたたましい音を立てて琥珀色の液体が飛び散った。
小さく呻いたベアトリーチェの唇を開放し、豊かに育った胸へと手を這わせて力任せに胸元からドレスを破り裂く。
「――ッ…?! や…ぅぅ……っなに、を…?!」
ふるっと白い乳房が晒されるとカァとベアトリーチェの頬が羞恥に染まる。
金蔵は形の良い、豊満と呼んで差し支えのない乳房を掌で揉みしだく。
「…んっ、ふ……ァ…」
ベアトリーチェは自身の唇から漏れた声に戸惑い、ぞくりと身を震わすような刺激を感じてしまう自分自身が恥ずかしく思え
困惑と羞恥で唇を噛んでは声を漏らさぬように務める。
「ベアトリーチェ、声を聞かせておくれ…
 お前の快楽に濡れた声が聞きたい…さぁ私の黄金の魔女、どんな声を聞かせてくれるのだ?」
口元に加虐的な笑みを浮かべながら金蔵は白い乳房の頂上を指で摘み上げた。
「…ッ、ひゃんんんッ!」
ピクンッと背筋が伸びて薔薇のように鮮やかな唇から甲高い声が響くと金蔵は更に笑みを深くする。
くにくにと親指と中指で擦り合わせるように弄れば、頂上に色付いた桜色は硬く主張をし始めていく。
初めて経験する刺激の数々にベアトリーチェは身震いする。ふるっと白い乳房が震えると淫らに勃起した突起も揺れ
上気した顔と、悲しげに金蔵を見つめる潤んだ瞳――肌蹴た両の胸とも相まり、金蔵は劣情の炎を更に灯らせた。
満たされる支配欲に心は歓喜に震え、桜色のそれを口に含む。
「ふぁあッ…アァ! ん…く…ひぅぁ…あ…ッ……ンんん!」
硬く勃起した突起をころころと舌で転がして弄びながら吸い付き、金蔵は慣れた手つきで生娘には強すぎる快楽を与えていく。
ベアトリーチェは思考も定まらず、ただ与えられるままに嬌声を漏らす。
けれど霞んだ思考の欠片は疑問を投げかける。 何故? どうしてこんな目に合うのか、と…。

「…ベアトリーチェ…なんという可愛らしい声なのだ…。
 おおぉ…やはりお前は素晴らしい…!! 私の黄金の魔女、ベアトリーチェよ!!」
乳房から唇を離しベアトリーチェの瞳を見据えた金蔵の瞳には、目の前の怯える女は映っていなかった。
この少女ではない誰かを見つめるような、どこか距離を感じるような視線。
その中に映る狂気と情愛にベアトリーチェは恐ろしさと共に、そんな目をする金蔵を哀れに思うのだった。
「くくくッ…ははははははははははははは!!
 逃さぬ。 決して逃さぬぞベアトリーチェよ…」
「…ッひ…い…うぐぅぅっ…ぁあぁああッ!」
金蔵の爪が、掌が、ふくよかな乳房にきりきりと食い込む。
締め上げるような力に柔肉は形を歪め、食い込んだ爪は白い皮膚に紅い痕を刻む。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い! 胸を捻り潰されてしまう!
目尻から雫がぽろぽろと零れる。唇を噛んで、拘束されたままの腕を動かそうともがく。
だが金蔵の拘束はぴくりともしない。
ベアトリーチェの抵抗は全くの無駄なのだ。
「い……やめッ……ひぃっ?!」
漸く胸を締め付けていた手が解かれると
下腹部に、違和感。
そう、金蔵の手によって分厚いドレスがたくし上げられ、宙に浮いた細い足とレースの施された下着が晒されたのだ。
ベアトリーチェは何をされるのかわからなかった。
そんな知識は与えられていなかったのだ。
だがわかる。雌の本能が訴える。逃げなければいけない、この人じゃない…望むべき人はこの人ではない、と――。
「やだぁっ…。 やめて…金蔵……いやだ……妾は、こんな事…こんなの……」
「まだ…私を拒むというのか…」
「………う…ひっ…………ぇぅ……ぐす…」
ベアトリーチェは遂には泣き出してしまった。
その美貌をぐしゃぐしゃに濡らしながら、子供のように泣きじゃくった。
いやだいやだと、首を振って髪が乱れるのも厭わずに。

「………ああ駄目だ…全然駄目だ……。
 …お前は私の物だと何度言えば分かるのだッ!!!」
「ヒッ……!」
「私の物を私がどうしようと、どう扱おうと、お前が泣こうが喚こうが事実は変わらぬ!!
 私を誰だと思っている。 右代宮を復興させ、栄光を築き上げた右代宮金蔵よ!!!
 手に入れたい物は全て手に入れてきた!!
 金も!地位も!快楽も!友も!そしてお前もだ…ベアトリーチェ!!
 そう…云わばお前は家具よ。
 家具が主人に意見しようなどとおこがましいにも程があるわッ!!
 後悔するならばお前が私と契約し、私に見初められたのが運の尽きと思うがいい!
 お前に与える痛みも、悲しみも、悦びも、後悔も、懺悔も、悔しさも、憤怒も、全て…全て私が与えるものなのだ!!
 くはははははははははッ!!! ぁああぁぁああははははははははッ!!!」
愛に溺れ、愛に狂い、それでも報われぬ男。
天を仰ぐその双眸からは涙が零れ、怯えた娘のように身を縮こませるベアトリーチェの紅く痛々しい爪痕にぽたりと降る。
「…………ベアトリーチェ、愛している。お前の為ならば全てを犠牲に出来よう。
 さあ…私の愛を今こそ受け入れるのだ…!」
金蔵はベアトリーチェの上品な下着を乱暴に引き摺り下ろす。
何も受け入れたことのないそこは先程の刺激で湿り気を帯び、秘裂に指を這わせればとろりと蜜が指に絡みついた。
自分でこんな風に触れたことすらない場所…そこを他人に弄られる。
羞恥と嫌悪に唇を噛み締め、まるで現実を受け止めたくないかのように…ベアトリーチェは顔を逸らした。
「くッくくくくくッ……ベアトリーチェ…淫らなお前もまた美しいぞォ?」
喉を鳴らしながら低く笑う金蔵。
カチャカチャと慣れた手つきでベルトを外し、よく仕立てられたズボンと下着を下ろした。
片足を掴まれて開かれるとベアトリーチェは身を硬くし、恐る恐る下腹部へ視線を向ける。
「…ひぃっ……」
思わず小さく飲み込むような悲鳴が唇から漏れた。
無理もないだろう。初めて見る男のソレは、グロテスクな異物にしか見えないのだから。
亀頭が秘裂を撫で、ぬちょと互いの愛液が混ざった音が立ち、それが更にベアトリーチェの羞恥を煽った。
「や…だ……ひぅっく…や………やだぁあぁ…!
 ……―――ぅ…ぃあぁァアアッ…アァぁあああああああああぅぁぁぁぁああ――!!」
金蔵が自身をベアトリーチェの秘所に埋没させていく。
ミチ、メリ、と股が裂けるような激痛が苛み、唇からは悲鳴が漏れ出す。
破瓜による血が地面にぽたりぽたりと広がり、真っ赤な薔薇を咲かせた。

「痛い痛い痛い痛いぃぃいいぃいいいぃぃぃ!!!
 ひぐぅぅうぅぅッ!! ぁあぁあうぅぅぅぃぃいっ――!!!」
ベアトリーチェの肉を裂く悦びに金蔵は笑みを零しながら一気に突き入れる。
細い身体が背を弓形に反らし、青い瞳は見開かれぽろぽろと涙が零れた。
呼吸が出来ないほどの痛み。身体の内側が焼けているような、肉を裂かれる痛み。
けれど血を滴らせるそこは金蔵のモノをしっかりと包み込み、きつく締め上げては悦ばせてしまうのだった。
「くくくくくくっ…痛いか? 痛いかベアトリーチェ!
 ああ…もっとだもっと。もっと痛みを感じよ…もっと私を感じるのだぁぁああぁああ!!」
休む間も無く突き入れた肉茎をずりゅと引き抜き突き入れる。
遠慮もなにもなく、ただ貪るだけにそれを繰り返す。
「ひぁ…!い、た……ぐぅぁあッ!
 …や…らぁあぁっ! ぬ…ッいてぇぇえぇぇええっ!!」
既に涙でぐしゃぐしゃにした顔が更に涙で濡れ、痛みのあまり表情を歪ませ
ベアトリーチェは泣き叫びながら懇願する。
「くはははははははははッ!!
 誰が止めるものか! お前は私の物!私の物なのだぁぁぁああああぁあああああああ!!!」
金蔵の下で跳ねるように翻弄される身体。豊かな胸は誘うように揺れ
紅い痕は逃れられぬ証のように白に映える。
「ぅあ…ァアッ…ン! ひぃぃぁあ…ッ!んくぅぅぅあっあ!」
誰か助けて。誰でもいい、この悪夢から助けてくれるなら誰でもいい!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!こんなの嫌だ!!
助けて…助けて……!夢の中の…あの人……―――そう、名前は………

………………ああ………もう、こんな汚れた妾では名前すら、思い出せない―――。

「ベアトリーチェ…受け止めてくれ、私の想いを、愛を!全て、全てぇぇええぇぇえ!!!」
絡みつく肉壁と締め付けに金蔵も遂に果てようとする。
ベアトリーチェはこれ以上何をされるのか、もう考えられる余裕もなく――。
「ベアトリーチェ…ベアトリーチェ…ベアトリーチェぇぇぇえええぇぇええ!!!」
「あぁああ…ンッ、ひぅっ! んくぁあ…ぁあぁあああぁあああひっぃいゃぁあぁぁあああ―――!!」
ドクンドクン――、金蔵の肉茎が膣内で跳ねると最奥目掛けて精を吐き出した。
ベアトリーチェは自分の体内に熱く流れてくるものに
今の自分の状況が、取り返しのつかないことになったのを、理解した。
「………うぅう……ぅく…ぅぇえぇっ……」
ベアトリーチェは嗚咽を漏らし、静かに泣いた。
己の運命に、己の不甲斐なさに。


そして理解する。
あの夢は過ぎた奇跡だったのだ、と
こんな自分が見てもいい夢ではなかったのだ
もし見なければ、こんな事にはならなかった
今まで通り、自分に疑問を持ちながらも穏やかな生活が送れた筈

あの奇跡は、あってはならない奇跡だったのだ―――。

もう、名前も思い出せない、朧げとなってしまった“彼”の姿を追い求めながら
ベアトリーチェはただひたすらに、頬を涙で濡らした。


「くすくすくすくすッ…」
カケラの海に、魔女が1人――。
金蔵の狂乱と、悲しみに暮れる女を写したカケラを指で弄びながら
下卑た笑みを浮かべ、やがて塵を捨てるかのようにそのカケラから手を離す。
「中々面白い余興だったわ、ベアト。
 ニンゲンの時のアナタとはいえ、高慢な顔が涙で濡れる様は本当に素敵だったわよぉ!」
様々なカケラを映し出す海で、青髪を靡かせた魔女は愉快そうに高笑いを木霊させる。
「ふふふふふふ………次のアナタのゲームはどんなものなのかしら?
 精々私を退屈させないでね?
 あははははははははははははははははッ!!」
奇跡の魔女はその笑いを最後に、このカケラの海から姿を消す。
魔女が見ていたカケラは、どんな物語をこれから紡ぐのか。
それは、とてもとても悲しい結末――。
きっとこのカケラも、同じ。
不完全な蝶が己を弁えずに飛び立とうとして、ぐしゃぐしゃにべちゃりと堕ちて潰れてしまう
救いの無い結末しか用意されていないのだろう。


  • 少々可哀そうに思えるがこういう報われない感じも好きだ -- (匿名) 2010-01-30 15:24:44
  • 本編でやってもいいんじゃね?っていう。ついで微妙に20世紀少年思い出したな>夢 -- (名無しさん) 2010-04-02 01:29:05
  • これなんてEP7 -- (名無しさん) 2010-11-28 15:06:37
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最終更新:2009年10月02日 08:45