応用分析化学

備考

癒し系
だけど板書量は多い
出席取らない

TeXが使えず限りなく鬱陶しいので、数式は全部省略します。
出そうなやつは後からフォローということで。
プリントもとりあえず後回し。が、本文中でよく引用する。

第一回講義

0.イントロダクション
分光分析で利用するのは、光の吸収、放出、散乱、干渉等。
測定する電磁波のエネルギーで分類。
波長(λ)・波数・周波数の3つの値で換算できる。

エネルギーE=hμ=hc×(波数)
     c=λv 波数=1/λ=μ/c
C:真空中での光の速さ(=3.00×10^8m/s)
μ:振動数(Hz)
λ:波長

ex)500MHzのHNMRにおける共鳴周波数を計算してみると・・・
  λ=c/μ=(3.00×10^8)/(500×10^3×10^3)=0.6(m)

エネルギー順に・・・
・X線
・紫外線
・可視光線
・赤外線
・マイクロ波(1mm~10cm)
・極超短波・超短波(10cm~10m)
・ラジオ波(10m~)

※電波の定義によって幅が異なる
分析化学では・・・
・電子スピン共鳴(ESR)→マイクロ波
・核磁気共鳴(NMR)→ラジオ波(あるいは超短波)

(復習)
原子吸光・炎光分析⇒原子化したもの(あるいはイオン化したもの)を分析に利用
↓          ※原子化したものはボルツマン分布に従う
分子分光分析
 分子軌道間の電子遷移や分子移動によるエネルギー遷移を利用
 分子の内部エネルギーE(int)=E(el)+E(vib)+E(rot)
 上式のEはそれぞれ以下のエネルギーを指す。
  E(el):電子エネルギー
  E(vib):振動エネルギー
  E(rot):回転エネルギー
 この3つのエネルギーの間には、一般に以下の不等式が成り立つ。
  E(el)>E(vib)>E(rot)

1.紫外・可視吸収
 満たされた分子軌道から、
 その次の高エネルギーの軌道一個の電子が励起されることを利用

A.遷移の種類
・σ軌道
・π軌道
・n軌道:直接結合に関与しない軌道 ex)非共有電子対

取り得る遷移には
σ→σ*、n→σ*、n→π*,π→π*
の4つが主に挙げられるが、そのうち特に分析化学で利用されるのは最後の二つ。
それぞれの遷移の特徴を挙げてその理由を説明する。

  • σ→σ*:エネルギー大 150nmより短波長(遠紫外領域)
  • n→σ*:非共有電子対をもつ化合物 ex)CH3OH(183nm)(遠紫外~紫外)
  • π→π*:強い吸収(200nm~) ★共役系の長さと吸収強度波長に相関あり
  • n→π*:弱い吸収
(復習)ランバート・ビア則 A=εcl
        ε:モル吸光計数 c:濃度 l:光路長

B.スペクトルと化学結合
 ・深色移動:吸収の長波長への移動(赤シフト)
 ・浅色移動:吸収の短波長への移動(青シフト)
○共役系があると、吸収強度増大、吸収波長の赤シフト
○(プリント参照)アルキル置換基→赤シフト
○シス・トランス異性→トランス体が長波長、吸収強度大
ex)【Ph-Ch2=CH-CH=CH2】において、
   シス体・・・・・・・268nm、ε=18500
   トランス体・・・280nm、ε=27000
(参)βーカロテン(色素)・・・λ=452nm、ε=15200
   共役系のびて赤シフト→可視領域

C.(補足)金属錯体の吸収スペクトル
 遷移の種類・・・d-d遷移
        電荷移動遷移(MLCT、LMCT)
        配位子のπ→π*遷移
 配位子分裂→(d電子軌道の分裂)→可視光の吸収域
  d-d遷移例 ex)[Ti(H2O)6]3+
  LMCTの例・・・KMnO4(濃紫色)
  MLCTの例・・・Fe(phen)3 フェナントロリンの空軌道にFe電子が入り遷移を起こす

第二回講義(1の続き)

D.測定の原理
 ランベルト・ベールの法則 
 A=-log(I/Io)=εcl
  I:光の強度
  ε:吸光計数
  c:濃度
  l:光路長

E.分析装置
  • ランプ・・・UV-VIS(紫外・可視光源) 
      タングステンランプ(タングステン・ハロゲンランプ)(320~3000nm)
      +
      D2ランプ(重水素放電管)(190~350nmの連続光源)
  • モノクロメーター:分光器
  • チョッパー:一定の周期で光を試量側と対照側に振り分ける
チョッパーは円盤型をしており、半分がミラー、半分が空隙になっている。
光源からでた光を、ミラー面が反射するとブランクの方に光が移動し、
空隙面の場合は、反射せずに光が素通りし、試料を通過する。
(詳しくはプリントNo.2の図9.13参照)

  • セル
  ○プラスチック}可視光
  ○ガラス   }可視光
  ○石英    }紫外(紫外吸収の際は石英セルを用いる)
  • 使用する溶媒
 →プリントNo.2の表6-2参照

F.UV-VISスペクトルの実際の利用
 ①定量分析・・・検量線の作成
  ex)タンパク質の定量(280nm、芳香族アミノ酸残基由来Tyr、Trp・・・)
  ex)DNA、RNAの純度チェック
    260nm/280nmの強度比
    ・・・DNA1.8、RNA2.0(タンパク質が混入するとこの値にならない)
 ②構造解析
 ③(分離分析用の)検出器 ex)HPLC、CE等
   ベンゼン環や共役系を持った化合物を検出
    214nm・・・多くの化合物が吸収を示す
    254nm・・・ベンゼン環を持つ化合物
(余談)フォトダイオードアレイ検出器
フォトダイオードを多数並べた検出器で多波長を同時に感知する
→リアルタイムでスペクトル測定が可能
3次元軸である時間における波長とその吸光度を同時に測定できる

<まとめ>
  • 電子エネルギー遷移を利用してその光の吸収を測定
  • 複雑な化合物の中から特定基を見つけられる

2.赤外吸収スペクトル(Infrared absorption spectroscopy)
試料に赤外線をあて、分子振動を反映するスペクトルを得る分析法
 近赤外 0.8~2.5μm
 赤外 2.5~15μm
 遠赤外 15~200μm
使われる単位……cmの-1乗(カイザー)=10000/波長(μm)
        1cmに入る波の数である。4000~667くらい。

A.分子振動モデル
二原子分子
バネ定数κのバネにつながれていると考えると、結合の強さとバネ定数がよい関連性を持ち、振動数が推定できる。

B.振動の種類
  • 伸縮振動:同一結合軸上にある原子が原子間距離を増減する
  • 変角振動:原子の位置が結合軸からずれる振動
それぞれの詳細と呼称
伸縮……対称伸縮Vs 逆対称伸縮Va
変角……面内はさみβ 面内横揺れρ
    面外縦ゆれω 面外ひねりτ
具体的にはプリント見ること。No3左上

第三回講義

C.特性吸収帯(charasteristic absorption band)
分子中の特定の官能基や原子団の示す特徴的な吸収
→プリント参照No3表11-2

D.指紋領域(1450~900カイザー)
全ての化合物で吸収が異なる領域。そのため化学物質の照合に利用される。

E.ベール則が成立→吸収強度が濃度に比例→定量に使える
 加成則が成立 →混合物の吸収が加算可→定量に使える

F.誘起効果と共鳴効果
  • I効果(Inductive effect)
  • M効果(メゾメリー効果、共鳴効果)
ある官能基における吸収波長にズレが生じた場合、いずれかの効力が支配的であるとすることで説明できる。
例、カルボニルの隣に付く基
電子吸引基→誘起効果→C=0結合長減少→振動数増加
電子給与基→共鳴効果→C=O結合長増加→振動数減少

G.共鳴の効果
π電子の非局在化により、C=Oの二重結合性が弱まる

H.水素結合の効果
ex)水酸基の遊離……鋭い吸収ピーク
  水素結合の強さにより波数が低下
    3300カイザー……ポリマー的に水素結合して連なっている(様々な状態)
    3485カイザー……2量体

I.質量の効果
振動数はバネ定数(結合の強さ)と二原子の質量(換算質量)で決定するので、結合の強さを変えずに質量を変える、すなわち同位体を使う事で、特定官能基・結合バンドを同定する事ができる。
なお、講義ではμの定義が間違って書かれていたので、そのまま写した人は注意。

J.IRの装置
FT-IR(フーリエ転換型)
マイケルソン干渉計:ハーフミラー(半透鏡)を使い、光路差を利用して単波長とする。
回折格子と比べると分かりやすい。

フーリエ変換
時間関数としての波形を周波数関数としてのスペクトルに変換する時に利用。

FT-IRの特徴
  • 高感度
  • 短時間測定可能→積算してS/Nを良くすることができる。

K.測定の実際
  • ヌジョール法…NaCl板にサンプルとパラフィンを混ぜた状態で測定(ガラス板不可)
  • KBr錠剤法…粉末試料とKBr粉末を混合してディスク状にして測定
  • ATR法…全反射測定。表面分析などに。(attenuated total reflection)

<IR分析のまとめ>
  • 分子の振動エネルギー遷移を利用
  • 官能基の種類に関する情報が得られる(定量・定性)
  • 指紋領域の吸収を利用して基地物質を同定できる

第四回講義

3.蛍光分析
物質が貸し・氏が威光を吸収して励起状態になった後の緩和過程において起こる光放射現象を利用。高度な分析法。
ex)検出限界
  吸光分析 1μm程度(10^-6)
  蛍光分析 10~100pm程度(10^-10~10^-11)
(余談)蛍光の利用例
   ・蛍光灯(青:450nm 緑:540nm 赤:610nm 赤青緑全ての光がでると白色灯)
   ・蛍光ペン
   ・蛍光増白剤(洗剤に含まれる)
cf)リン光・・・ex)非常口のマーク、時計の文字板
   蛍光よりも寿命が長い(→励起光を切ってもしばらくぼやっと光る)
   ZnS、CdSなど無機リン光物質に利用されている
cf)蓄光・・・はもちろんだけどこの類の光には含まれない

A.蛍光の放出される機構
○無輻射遷移:熱を放出して緩和する過程
◎輻射遷移 :光を放出して緩和する過程(←特定の光を持った分子・・・蛍光物質)
  蛍光、リン光ともに、吸収した波長よりも長波長の光を放出する。
  (つまり吸収した光よりも低エネルギーの光を出すということ)

B.蛍光物質の構造
光を吸収しやすく、蛍光を放出しやすい物質
(モル吸光計数が大きいほど、蛍光強度も大きくなる)
<構造的特徴>
  • 共役π電子系をもち、共役系が長く、平面性を有する化合物
  • 共役系に結合する置換基が電子供与性→蛍光増大 ex)-NH2、-OR
             電子吸引性→蛍光減少 ex)-NO2
  • 共役π電子が平面に固定されている分子は発蛍光性が大きい
ex)フルオレセイン(=蛍光物質)とフェノールフタレイン(図は略)
フルオレセインは励起エネルギーが分子内で失いにくいが、フェノールフタレインは単結合が存在するために回転運動しやすく、そのため熱として放出されやすい。このため、励起エネルギーをロスしてしまい、蛍光を発しない。

C.蛍光スペクトルと吸収スペクトルの関係
おきる確率の高い遷移→フランクコドン遷移(プリントNo.4 図6.8参照)
経験的に、ある軸に対して、対照的にスペクトルが検出されることが多いようだ。

D.励起スペクトルと蛍光スペクトル(Excitation Spectra & Emission Spectra)
  • 励起スペクトル→検出蛍光波長を固定して励起光をスキャン
  • 蛍光スペクトル→励起波長を固定して蛍光を検出
注)この二つのスペクトルは一つのグラフに書かれているが多いが、両方のスペクトルがいっぺんに測定されるわけではなく、一方の波長を固定してもう一方の波長を測定することによって二つのスペクトルを得ているのである。
★測定の注意点
  • 励起光よりも長波長で蛍光を測定すること(励起光が検出器に入るとよくない)
  • 測定pHに注意(pHによってスペクトルが大きく変化するものが多い)
★分析における光の進行方向の違い
(蛍光分析)・・・光の進行方向が変化(屈折)する(実物の紹介では90度方向)
(吸光分析)・・・光は一直線方向にすすむ

E.蛍光量子収率
「吸収された励起光の光量子数」に対する「蛍光として放出された光量子数」の比
比例定数をkとおくと、以下の関係式が成り立つ。
 F=k・Ia・Φf (F:蛍光強度 Ia:吸収した励起光強度 Φf:蛍光量子収率) 
  =kIo(1-e^-ecl)Φf (∵Ia=Io(入射光)-It(透過光)=Io(1-e^-ecl))
  ≒kIo(2.303ecl)Φf (∵希薄溶液近似(ecl<0.02)すると、1-e^-ecl≒2.303ecl)
つまり希薄溶液中では、蛍光強度は溶液濃度に比例するといえる。

F.蛍光とリン光の違い(fuorescence & phosphorescence)
  • 蛍光 :一重項励起状態から基底状態に戻る際に放出される光
  • リン光:三重項励起状態から基底状態に戻る際に放出される光
○光の寿命
蛍光 →10^-9~10^-7sec
リン光→10^-3~10sec
cf)吸光→10^-15sec

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最終更新:2006年10月27日 00:55