微生物機能開発学


備考

出席が成績の6割と公言してました。興味を持ってくれることが第一とのこと。
遅刻したら気分悪いとは言ってましたが、具体的にどう対処するとかは言及せず。

TeXが使えないしリッチテキストでもないから、階乗は書き下します。
かなり細かく章分けされてますが、インデントとかしてないからよろしく。

第一回講義


1.有用微生物のスクリーニング

1.1自然界の微生物
1670年代、Anton van Leeuwenhoek による顕微鏡の創造
→今までなかった分野(フロンティア)の拡大
1861年 パスツールが自然発生説の否定
その後、醗酵の利用 酵素の利用(生きた微生物個体ではなく、微生物の一部を使って醗酵できる)

近年まで各分野で研究、利用されてきた微生物のほとんどが20℃~40℃、pH中性、豊富な栄養条件で旺盛に生育するもの。
なぜなら、産業的に有用あるいは楽に使えるのはそういうやつらだから。
しかしそのため手の行き届かなかったやつらもいっぱいいるんだぜ。

(1)難培養性微生物
①微生物はどの程度環境に存在しているか。
大気中 市街地の大気 ~10000/㎥
    54m以上の大気 2000/㎥
海洋  沿岸の富栄養海水 1000000/ml
    海底1万mの堆積物中 6000/g(1atm)
               600000/g(1000atm)
湖沼  富栄養 700000/ml
    貧栄養 500/ml
陸上  表層土壌 1000000~10000000000/g
    地中(~100m) 100000000/g
      (1000m) 1000000/g

②Viable but non-culturable(VBNC)
○蛍光顕微鏡下での観察(DAPI染色でDNAを検出)
○PCRを利用した16srDNA配列の解析
これらによって、微生物が存在している事は分かる。でも培養できない。
何してるか分からない。
ていうか、生きてるかどうかも分からない。。。
全微生物の0.1~10%程度しか培養出来ないらしい。

何故培養できないのか
a)培養方法が確立されていない
b)培養可能な微生物が培養不可能になっている
aはいい。bはどういうことか。
ex)定常期の後に何らかの環境ストレスを受け、誘導的に停止するケース
(ちなみに、定常期のものには、増える分だけ死んで個体数が一定になるケースもある。どちらなのかは条件次第)

(2)極限環境微生物(extremophile)
高等生物が生育できない極限環境に適応した微生物が存在する。

高温   thermophile
低温   psychrophile
酸    acidphile
アルカリ alkaliphile
高塩   halophile
高圧   barophile
他にも耐放射線微生物(上空に多い)など。

――ちょっと注目
対策
細胞の中身を変える:タンパク質が違う(高温、低温、高圧)
細胞の周囲を変える:膜が違う(酸、アルカリ、高塩)
なんでだろう?
――

1.2有用微生物のスクリーニング
point
狙った微生物がいそうなところからとってくる
どういう培地で育つか考える

(1)微生物の栄養
水は細胞全重量の80~90%
その他の元素の組成は乾重量あたり
C 50%
O 20%
N 14%
H 8%
P 3%
S 1%
K,Na,Ca,Mg 1%
Cl 0.5%
Fe 0.2% (体内の酸化還元反応をサポート)
その他 0.3%

第二回講義

(2)適切な培地の選択
何らかの物質を生体成分として利用する菌をスクリーニングする場合、全ての栄養素を網羅した合成培地から、その物質を構成する元素を抜き、その物質を元素源として加えてやればよい。

指示語が多くて難しい日本語ですが。英語に直すと理解しやすいかも。

①C源、N源、S源として何らかの物質を利用
これらは微生物の細胞中に1%以上含まれる物質なので、比較的スクリーニングしやすい。
HとOは水に含まれるのでスクリーニングできない。

  • 細菌のスクリーニング
無機合成培地から、CやNやSを除いたものを用意(寒天プレート)。ここに利用される物質を加えてやる。
例a)易分解性 n-アルカン資化菌のスクリーニング
土、活性汚泥、海水、底土などを、上の培地に植える。後はn-アルカンを蓋の部分に置いて、気化したn-アルカンを養分とできる微生物のみが生える。
ただ、n-アルカンにコンタミしたものがC源となる可能性もある。
それに、この方法はある程度目的菌がいないと生えない。
これらを解決した方法が集積培養。
件の無機培地(液体試験管)にn-アルカンを加えたところに、ソースを加え生やす。これはソース中にコンタミした物質などを養分にしている可能性があるので、再度培地+n-アルカンに加えて生やす。以下10回ほど繰り返す。植え継ぎで余分なものの濃度を希釈し、最終的に目的微生物の割合を上げるわけですな。
これで増えたやつを、先に挙げたプレートを使った方法で生やせばスクリーニングできますよ。
例b)難分解性物質の場合
PAH(polycyclic aromatic hydrocarbon)など、難分解性物質の場合上の方法は使えない。
だって、土中にほとんどいないから。
分解菌を増やすにはどうすればいいか。
土にPAHを入れて、放置。数ヶ月単位で。その間PAH量をモニタリングしておく。
数ヶ月たったら、PAH濃度が下がる時が来る。
そこでその土を使って集積培養してやればいい。
理屈は、土の中にごくわずかなPAH分解菌が、人間が観測できる程度まで増えるのを気長に待ってるだけ。気質は分解されないから豊富にあるしね。
つまり純度を高める前に存在割合を高めたわけ。作業ラクだし。

寒天培地で目的菌が生えているのかどうかを確認するには、寒天培地の上に白濁した寒天とPAHの混合物をのせてやればクリアゾーン(ハロー)ができる。
微生物実験で似たような事やった。

N源
カルバゾールという窒素を含んだ物質を利用する菌を見つけてきたい。
Cの場合と違い、カルバゾール利用菌には3種類がある。すなわち
 C源としてカルバゾールを使うやつ
 N源としてカルバゾールをつかうやつ
 CとN両方元素源としてカルバゾールを使うやつ
それぞれ、無機合成培地から利用元素を抜いたものにカルバゾールを加えたものを使う。

カルバゾールの分解経路は基本的に決まっており、アントラニル酸と2ヒドロキシ24ペンタジエン酸(?)に分解されるのだが、このアントラニル酸を分解する時にアンモニアが生じ、これをN源として利用する。カルバゾールをN源とする微生物には基本的にアントラニル酸分解酵素が含まれる。C源として利用する菌には、とりあえずアントラニル酸分解酵素がなくていい。
かっ……勘違いしないでよねっ
別経路の可能性だってあるんだからねっ!

S源としてはジベンゾチオフェンがよく研究されている。
元素源としての話はNと全く同様。
カルバゾールと違うのは分解経路。
C源とする場合は、芳香環の分解が行われる。これはナフタレンなどと非常に近い反応で、ぶっちゃけSと無関係。
S源とする場合はSの酸化反応が起こる。
このように、全く別の代謝経路をとっている。
もちろん、C源の分解経路からSを離脱する方法もあるし、S側でも同じ事がいえる。
ちなみにジベンゾチオフェンの研究が進んだ背景として、酸性雨にジベンゾチオフェンが含まれていることが挙げられる。Sを除去する反応を求められたとか。

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最終更新:2006年10月26日 00:57