クラウ・ソナスがリーグに参加してから一月が経った。
既に16戦目に入ったが、未だに勝ち星はついていなかった。
既に16戦目に入ったが、未だに勝ち星はついていなかった。
「ぇぅ…マス、ター……ごめんなさいっ…ひぅ」
今日も胸ポケットで彼女は泣いていた。戦闘に慣れるために、ここ数戦同じ武器を使い続けているが、効果はまったくといっていいほどあがらない。敵の捕捉と照準補正に時間が掛かってしまい、引き金を引く前にやられるのだ。
毎日頑張っている彼女を励まそうと、何か声をかけようと思う光矢だが、最近はそれも出来なくなってきていた。ここまで負けが積むのは珍しい、とエルゴ常連にも有名になり始めていたし、ここ3戦ほどは負けた後に声をかけると泣きが酷くなるばかりだったからだ。
毎日頑張っている彼女を励まそうと、何か声をかけようと思う光矢だが、最近はそれも出来なくなってきていた。ここまで負けが積むのは珍しい、とエルゴ常連にも有名になり始めていたし、ここ3戦ほどは負けた後に声をかけると泣きが酷くなるばかりだったからだ。
家に着きテーブルの上に彼女を置くと、光矢はため息交じりに聞いた。
「…クラウ、やっぱりリーグ出るの止める?」
「……!?」
「……!?」
マスターの発言は彼女には辛いものであった。いつも戦闘の後に恐れていた言葉。負ける度、いつリーグから外されるのかと心配していた。それは彼女の存在意義を脅かすものだと思っていたからである。
マスターはリーグに出るために神姫を購入した。しかし、負け続けていれば解雇、返品されるかもしれない。その不安がいつも彼女をおびえさせていた。
マスターはリーグに出るために神姫を購入した。しかし、負け続けていれば解雇、返品されるかもしれない。その不安がいつも彼女をおびえさせていた。
「その、毎回泣かせてるしさ。辛い思いするなら出なくても……」
「イヤです!」
「イヤです!」
マスターの傍に居るためにはリーグに出なくてはいけない。そんな思いが彼女に反論させた。基本的に神姫はマスターを慕うようプログラムが組まれている。そして同じくマスターには従うようにも。しかし、感情回路の昂ぶりによっては規定のプログラムを無視して反抗することもある。
「わたし、頑張ります!頑張って勝ちます!だから、ここに居させてください!! それが私の購入目的だったんですよね!!」
「や、でも無理して出ることも無いよ。試合に出なくても君を捨てたりは…」
「……やです・・・」
「や、でも無理して出ることも無いよ。試合に出なくても君を捨てたりは…」
「……やです・・・」
それっきり彼女は黙り込み、彼女用に造った個室に閉じこもり出てこなくなってしまった。
* * *
「で、ヒッキーモード突入のまま出てこないと?」
3日目に入った閉じこもりに困った光矢は、友人のFの許を訪れていた。
「まぁ、出てこないもんを無理に引っ張り出すのは、オマエがイヤだろ?」
「・・・うん」
「となるとなぁ。時間かけるしかねぇんじゃね?っと、出た出た。」
「・・・うん」
「となるとなぁ。時間かけるしかねぇんじゃね?っと、出た出た。」
見ると、Fのパソコンに次々とウィンドウが現れた。そこに書いてあるのは・・・
「クラウの戦績データ?」
「ハイ、暁様。勝手ながら解析を掛けさせていただきました」
「ハイ、暁様。勝手ながら解析を掛けさせていただきました」
パソコンにコードで繋がれていたFの神姫、クリスが答えた。
「クラウ・ソナス様の戦績、と言うよりは 戦闘による平均スペックデータ、です」
「?」
「つまり、戦闘中の各種データを集計、整理した結果、クラウ・ソナス様の平均的なスペックを割り出したものです」
「?」
「つまり、戦闘中の各種データを集計、整理した結果、クラウ・ソナス様の平均的なスペックを割り出したものです」
理解できない、という表情で光矢は首をかしげ、Fに向き直った。
「で、そのスペックデータを出してどうするの?」
「・・・ちょいまて、もう少し調べてか・・・!?」
「・・・!!」
「・・・ちょいまて、もう少し調べてか・・・!?」
「・・・!!」
出てきたデータを、改めて見直したFとクリスの表情が一変した。が、光矢には何が起こっているのか理解できていない。
「クリス、これ間違いじゃね~よな?」
「私のメンテナンスをサボっていないとすれば、ほぼ正しい値だと思いますが・・・」
「つったって。これはおかしくね?」
「ええ、まぁ・・・」
「私のメンテナンスをサボっていないとすれば、ほぼ正しい値だと思いますが・・・」
「つったって。これはおかしくね?」
「ええ、まぁ・・・」
なにやら二人が興奮気味に画面のウィンドウとにらめっこをしている間、置いてけぼりを喰らっている光矢は黙って待つほかなかった。
そうしてしばらくの後、Fが光矢のことを思い出し、軽く謝罪を述べた後に言った言葉は
「オマエの神姫、未来予知でもしてるみたいだぜ?」
? ? ?
いきなり何を言い出すのか。
神姫というモノと未来予知というオカルトめいた言葉が上手くかみ合わない。
いきなり何を言い出すのか。
神姫というモノと未来予知というオカルトめいた言葉が上手くかみ合わない。
「・・・つまり、なに?」
「簡単に言うとだな・・・」
「簡単に言うとだな・・・」
* * *
どうやらクリスの調べたデータは外側(観戦している状態)から入手できるデータだけではなかったらしい。
神姫バトルサービスに登録すると、各種サポートが受けられるのは周知の事実だが、そのサポートを行うにあたり、本社では個体情報の保存を逐一行っているらしい。
つまりバトルサービスに登録してある神姫は、毎回PODの中に繋がれる度にその個体情報を保存しているというのだ。
今回クリスが調べたデータはその保存データも含めたものらしいのだが、その結果とんでもないことが判明した。
神姫バトルサービスに登録すると、各種サポートが受けられるのは周知の事実だが、そのサポートを行うにあたり、本社では個体情報の保存を逐一行っているらしい。
つまりバトルサービスに登録してある神姫は、毎回PODの中に繋がれる度にその個体情報を保存しているというのだ。
今回クリスが調べたデータはその保存データも含めたものらしいのだが、その結果とんでもないことが判明した。
本来『未来予知』というのは【超能力】か【経験の蓄積による推測】の二種類に分けられる。
超能力についてはその原理が不明、またはあいまいなため、(人間ですら自由に扱えないのに)機械に組み込むことは不可能である。
もう一つの経験は、回数を重ね、統計をとり、その結果を整理していくことで【大まかな定石】を割り出す方法である。
この方法は機械にも可能であり、確率論という科学をプログラミングすることで実現可能である。
超能力についてはその原理が不明、またはあいまいなため、(人間ですら自由に扱えないのに)機械に組み込むことは不可能である。
もう一つの経験は、回数を重ね、統計をとり、その結果を整理していくことで【大まかな定石】を割り出す方法である。
この方法は機械にも可能であり、確率論という科学をプログラミングすることで実現可能である。
しかし、問題はこの後。
クラウ・ソナスという個体は戦闘経験が皆無に等しいにもかかわらず、相手の動きを正確にトレースしていたというデータが残っていたのだ。
銃口の角度、弾丸の機動、相手の機動、トリガーまでの時間、反応後の射出時間と衝撃による斜線の誤差etc.
多くの場数を踏んだはずのクリスでさえ、ここまで正確な予測は立てられないと言う。
つまり、【異常】なのだ
クラウ・ソナスという個体は戦闘経験が皆無に等しいにもかかわらず、相手の動きを正確にトレースしていたというデータが残っていたのだ。
銃口の角度、弾丸の機動、相手の機動、トリガーまでの時間、反応後の射出時間と衝撃による斜線の誤差etc.
多くの場数を踏んだはずのクリスでさえ、ここまで正確な予測は立てられないと言う。
つまり、【異常】なのだ
実際に発射まで行き着かなかったのは、演算速度が追いつかず、結果を出す前に攻撃受けていたためである。
しかし、仮に【何か】が攻撃を防いでいたら。たとえば『味方』が居たら・・・。
しかし、仮に【何か】が攻撃を防いでいたら。たとえば『味方』が居たら・・・。
* * *
「そこで提案なんだが」
「?」
「βテスト中の2on2に出てみたらどうだ?」
「?」
「βテスト中の2on2に出てみたらどうだ?」
~続け~