ぶそしき! これから!? 4話 『シッパイ』
4-5
「ラミエ……」
「こ、この、わわたくしが、あんな無様な……」
勝者のはずのラミエがうずくまるように床に伏して、何事かつぶやき続けている。
顔を隠すかのよう、いや実際に顔を見られないよう腕でその顔を隠している。
バトルはバーチャル上のものだったため、身に着けているドレスはバトル前同様、傷も汚れもない。
しかし先ほどのバトルで出来事による彼女のショックは大きいのか、自身のマスターの声にも反応を示さない。
顔を隠すかのよう、いや実際に顔を見られないよう腕でその顔を隠している。
バトルはバーチャル上のものだったため、身に着けているドレスはバトル前同様、傷も汚れもない。
しかし先ほどのバトルで出来事による彼女のショックは大きいのか、自身のマスターの声にも反応を示さない。
「あー、もうちょっとだったのに! ちくしょーっ!」
「あははは……」
敗者のヒイロは地団太を踏んで悔しがっている。
あと一撃、あと一歩で届いた勝利を逃したのがよほど悔しいのか、その体で、声で悔しさを表わしている。
自身の神姫のそんな姿を見て、友大は思わず苦笑いしてしまう。
あと一撃、あと一歩で届いた勝利を逃したのがよほど悔しいのか、その体で、声で悔しさを表わしている。
自身の神姫のそんな姿を見て、友大は思わず苦笑いしてしまう。
(でもまあ、さっきのバトルよりは良いかな?)
先ほどのバトルよりも前、ゼルノグラードとのバトル後のヒイロの姿を思い出す。
(思うように戦えなくて、一方的にやられて落ち込んじゃった時よりも、今の方がヒイロらしい、かな?)
自身の神姫の姿を見る。
心なしか、悔しがってはいるがどこかすっきりしているようにも見える。
友大は何となくそう感じる。
心なしか、悔しがってはいるがどこかすっきりしているようにも見える。
友大は何となくそう感じる。
「ところで佐伯君」
「はい」
自身の神姫に対して、しばらくそっとしておいた方が良いと判断した占部が友大に声をかける。
友大は何となく、次に聞かれる内容について想像できる。
友大は何となく、次に聞かれる内容について想像できる。
「ヒイロのことですか? あのパワーは前の人の改造らしいです。ここの店長の話では、レギュレーションの範囲らしいですけど」
「そうなんですか。あの人のことですから、嘘ではないでしょう」
占部が納得したという風に頷く。
(あ、そう言えば……)
友大がふと、あることを思いつく。
「あの、占部さんって神姫のドレスとか作れるんですよね。神姫用の武装を作ってみたんですけど上手くいかなくて……、少し聞いていいですか?」
勇気をだし、思い切って聞いてみる。
「神姫の武装を手作りしたんですか。いいですよ、わたしの分かる範囲でなら」
「本当ですか! ありがとうございます。実は――」
感心したように占部が頷き、友大の話を聞く。
友達と一緒に自身の神姫のためにスパンコールでスケイルメイルを作ったこと、頭が引っかかってしまい着用できなかったことを友大は話す。
友達と一緒に自身の神姫のためにスパンコールでスケイルメイルを作ったこと、頭が引っかかってしまい着用できなかったことを友大は話す。
「――それ、ファスナーを付けたら良いんじゃないですか?」
「はい?」
すぐに返ってきた言葉に友大が思わず聞き返してしまう。
「布服の上にスパンコールを貼り付けたアーマーのようなものなんですよね? 均一か手芸のお店、または通販で小さなファスナーを買って背中側に取り付けたら解決するんじゃないですか?」
「あっ、ああ!」
思わず手を打ち、納得する。
一瞬、何で気づかなかったのか自問してしまう。
一瞬、何で気づかなかったのか自問してしまう。
「パンフレット貰いますね――」
「はい、どうぞ」
占部は『迷い神姫を保護する会』のパンフレットをマリーベルからもらうと、手に持ったボールペンで裏側の白地の所に少しの遅滞もなく描きこんでいく。
「――と、こんな感じでしょうか」
「え、……あ! す、すごい!」
占部から渡されたパンフレットを見た友大が思わず声をあげる。
そこにはスパンコールスケイルアーマーのデザインとファスナーの取り付け方が描かれている。
そこにはスパンコールスケイルアーマーのデザインとファスナーの取り付け方が描かれている。
「あ、ありがとうございます!! 何てお礼を言ったら……」
思わず深々と頭を下げてお礼をしてしまう。
「気にしないでください。まあ、今回のバトルのお礼のようなものですよ。なかなか面白い――あら?」
友大の姿に少し困ったような、少し照れくさそうにしていた占部が気付く。
自身の携帯に着信が来ている。
自身の携帯に着信が来ている。
「ごめんなさい。ちょっと電話が……」
「あ、はい。どうぞ」
少し申し訳なさそうな占部に促す。
「ありがとうございます。……はい、占部です。………えっ?」
電話に出た占部が何か驚いたような声をあげる。
すぐに真剣な表情になり対応を続ける。
すぐに真剣な表情になり対応を続ける。
「はい。……そうですか」
(……なにか、仕事で急用ができた時の父さんみたいな雰囲気だ)
占部の様子を見て、ふとそんなことが思い浮かぶ。
「……っ」
占部が一瞬、思い悩むような表情をする。
少しだけ、視線を出入り口の方に向ける。
少しだけ、視線を出入り口の方に向ける。
「……分かりました。はい、では――」
そして、すぐに視線を戻す。
話が終わったのか、携帯を切ってしまう。
話が終わったのか、携帯を切ってしまう。
「ごめんなさい。急用ができてしまいました。あ――」
「あ、あぶな――」
急いで行こうとして、占部は足をもつれさせてしまう。
本人が思っているより、仕事の疲労と焦りが強い。
本人が思っているより、仕事の疲労と焦りが強い。
「――あ、いた!?」
堪えることができず、床に倒れてしまう。
「だ、大丈夫ですか!?」
「え、ええ。大丈夫です」
すぐに体を起こし、携帯とカバンを手放していないことを確認する。
友大が見たところ、どこかケガをしたり何かが壊れたりしているようには見えない。
友大が見たところ、どこかケガをしたり何かが壊れたりしているようには見えない。
「気をつけろよー」
「え、ええ……ラミエ。行きますよ」
少々おぼつかない様子で立ち上がり、占部は自身の神姫の所へ行く。
「――ぇ、あ、はい」
ラミエは自身のマスターの手に乗せられたところで、ようやく気づく。
「――って、お姉様! 朔様のお話を聞くのではなかったのですか!?」
「会社でトラブルが起きたそうです」
悲鳴のごとき声をあげるラミエに、占部は簡潔に答える。
「そんな……!?」
「話は、後で必ず……」
絶句する自身の神姫を宥めながら占部が店の出入り口に向かう。
「会計をお願いします。包装はいりません」
店を出る前に手早くカードで会計を済ませていく。
ラミエの手には、先ほどのバトルで使った武装が握られている。
ラミエの手には、先ほどのバトルで使った武装が握られている。
「……」
友大はなぜか、占部の後姿をじっと見ている。
「? どうしたんだよマスター。占部さんのことずっと見てさ」
ヒイロが、そんな自身のマスターの様子をいぶかしむ。
「ああ、うん……」
(……いいなぁ。大人ってお金があって)
ヒイロの声に生返事をしつつ、友大はそんなことを思わず、しみじみと思ってしまう。
武装パーツをポンとあっさり買える姿に、羨望すら覚える。
武装パーツをポンとあっさり買える姿に、羨望すら覚える。
■ ■ ■
「……」
大人の占部と子どもの自分について比較してしまう。
そうするうちに、自身の神姫に武装1つ与えることすら難しい自身の懐具合とスキルについて思い悩んでしまう。
そうするうちに、自身の神姫に武装1つ与えることすら難しい自身の懐具合とスキルについて思い悩んでしまう。
「ヒイロ。なんか、ごめん」
何となく自身の神姫に対して申し訳ない気持ちになる。
「? なんであやまるんだよ? ――と、そうだ!」
急に自身のマスターに謝られて怪訝そうになったヒイロが、何か思いついたように声をあげる。
側の武装パーツがある商品棚の方へ向かう。
側の武装パーツがある商品棚の方へ向かう。
「なぁ、マスター。武装パーツだけど――あれ?」
マスターと約束した武装パーツの件について話そうとし、あるものに気付く。
それは視点の違い、人間よりもずっと小さい神姫だから気づけたことだ。
それは視点の違い、人間よりもずっと小さい神姫だから気づけたことだ。
「どうしたのヒイロ?」
「なにか、落ちてるぜ」
怪訝そうにする自身のマスターの声を後に、ヒイロは商品棚の下の隙間に潜り込む。
「……マスター! こんなのがあったぜ!」
すぐにヒイロが棚の下から戻ってくる。
一緒に、棚の下からあるものを引っ張り出す。
一緒に、棚の下からあるものを引っ張り出す。
「それ――」
ヒイロが棚の下から引っ張り出したものは小型の記録媒体だ。
誰かが落したものが棚の下の隙間に入ってしまったのか。
誰かが落したものが棚の下の隙間に入ってしまったのか。
「落し物かな? 届けないと――って、あれ?」
思わず声が出る。
ヒイロが引っ張り出した記録媒体は、友大はどこかで見た覚えがある。
ヒイロが引っ張り出した記録媒体は、友大はどこかで見た覚えがある。
「ど、どうしたんだよ?」
ヒイロは自身のマスターの素っ頓狂な声に少し驚く。
「よ、よく、見せて」
友大はヒイロが拾った記録媒体を手に取り、もう一度よく見る。
落とした時に擦れたりしたのか微小な傷がついている。
よく見ると記録媒体に小さくEBSとマジックで書かれている。
記録媒体の形や色、ごく最近に見たことがあることについて気づく。
落とした時に擦れたりしたのか微小な傷がついている。
よく見ると記録媒体に小さくEBSとマジックで書かれている。
記録媒体の形や色、ごく最近に見たことがあることについて気づく。
「これって、占部さんのじゃあ……」
記憶の山を掘り起こす。
バトルをする前に占部が鞄から出し、スーツのポケットに入れた記録媒体とそっくり、いや多分それだろうと思う。
バトルをする前に占部が鞄から出し、スーツのポケットに入れた記録媒体とそっくり、いや多分それだろうと思う。
「そうなのか! じゃあ返しにいかないと――」
そこで気づく。
バトルの前に自己紹介をしたが、占部たちの連絡先は知らない。
占部たちが出て時間が少し経っている。
急いで行った様子から、今から追いかけて間に合うか怪しいものだ。
バトルの前に自己紹介をしたが、占部たちの連絡先は知らない。
占部たちが出て時間が少し経っている。
急いで行った様子から、今から追いかけて間に合うか怪しいものだ。
「「……」」
思わず、互いの顔を見合わせる。
「……どうしよう?」
思わずつぶやいてしまう。
手に拾った記録媒体を持ったまま所在なさげに立ち尽くしてしまう。
手に拾った記録媒体を持ったまま所在なさげに立ち尽くしてしまう。
――――To Be Continued☆