ぶそしき! これから!? 第0話 『トモダチ』
0-3
「……あ」
神姫センターの店員神姫に武装神姫について色々説明してもらった帰り道に、ふと思い出す。
ネットで武装神姫の取扱店を検索した際に、先ほどの神姫センター以外にももう一件あったことを。
今の所からそれほど遠くはない。
少し寄り道する程度の所だ。
わずかに逡巡し、今回はちょっと覗くだけと、その場所に向かう。
ネットで武装神姫の取扱店を検索した際に、先ほどの神姫センター以外にももう一件あったことを。
今の所からそれほど遠くはない。
少し寄り道する程度の所だ。
わずかに逡巡し、今回はちょっと覗くだけと、その場所に向かう。
「あった」
携帯のナビで特に苦労することなく、もう1つの神姫取扱店に到着する。
――『おもちゃ屋スターフィールド』
中古品も取り扱い、売買する旨が看板に書かれていた。
薄暗い感じはない。
戸惑わず子どもでも入れる、そんな感じの店だ。
薄暗い感じはない。
戸惑わず子どもでも入れる、そんな感じの店だ。
「いらっしゃいませ」「い、いらっしゃい……」
入るとカウンターから声がかけられる。
店内は清掃が行き届いていて清潔で明るい。
近くの棚を見ると、ロボットもののプラモに武器セットが並べられている。
少し奥の方を見ると武装神姫のUSEDコーナーが見える。
行こうとして、ふと気づく。
カウンターに人の姿がない。
店内は清掃が行き届いていて清潔で明るい。
近くの棚を見ると、ロボットもののプラモに武器セットが並べられている。
少し奥の方を見ると武装神姫のUSEDコーナーが見える。
行こうとして、ふと気づく。
カウンターに人の姿がない。
「あの、今店長が留守にしているから、あたし達が店番をしています」
「な、なにか御用でしょうか」
よく見ると、カウンターには店の名前が書かれたエプロンらしきものを着た緑髪と黒髪の2体の神姫の姿がある。
黒髪の神姫は何故かメイドさんの衣装を着て、恥ずかしげにしている。
黒髪の神姫は何故かメイドさんの衣装を着て、恥ずかしげにしている。
「ええと、ちょっと中古の神姫が見たくて……」
黒髪の神姫があまりにも恥ずかしそうにしているので、何か見てはいけないものを見てしまった気分になる。
少年も少し恥ずかしくなりながら要件を話す。
少年も少し恥ずかしくなりながら要件を話す。
「……」
緑髪の神姫が黒髪の神姫を少し見やり、一息ため息をつく。
あの様子では接客は無理だろうと判断する。
あの様子では接客は無理だろうと判断する。
「あたしが案内します。ハーティア、レジお願い」
「ま、マリーベル。分かったよ」
相方に頼み、マリーベルと呼ばれた緑髪の神姫が少年に向かう。
「お客様、手に乗らせてもらってもいいですか」
「あ、うん、いいよ」
提案に素直に頷き、少年がその手を差し出す。
「失礼します」
一言断りを入れてから、カウンターから一飛びして軽やかに少年の手に乗る。
■ ■ ■
「そこを右に曲がった棚が、武装神姫の中古素体の場所です」
誘導に従い、少年は歩を進める。
手の上の神姫を見て、ふと浮かんだ疑問を問いかける。
手の上の神姫を見て、ふと浮かんだ疑問を問いかける。
「……ねえ」
「はい、何ですか?」
手の上の神姫が静かな口調で答える。
「君ってマオチャオ?」
「……そうです。あたしは猫型MMSマオチャオのマリーベル」
答えが簡潔に返ってくる。
「ええと……」
「あたしは他のマオチャオの性格と大きく違うから、お客様が疑問に思うのも当然です」
少年がさらに聞く前に、マリーベルは静かな口調で話す。
その様子は実際に見た、話に聞いたマオチャオという神姫のハイテンションのものとは大きく異なる。
その様子は実際に見た、話に聞いたマオチャオという神姫のハイテンションのものとは大きく異なる。
「神姫にも色々います。あたし達みたいな変わり者だって当然いる。……あたし位で驚いていたら、これからもっとびっくりすることになるよー」
最後に基本的なマオチャオの真似をして、冗談っぽくマリーベルが言う。
しかし、表情は少年の知っているマオチャオの元気いっぱい天真爛漫の笑顔ではなく、どちらかといえば少し固く、儚い感じの笑みだ。
その笑みの違いが、少年にも神姫も色々であることを実感させる。
しかし、表情は少年の知っているマオチャオの元気いっぱい天真爛漫の笑顔ではなく、どちらかといえば少し固く、儚い感じの笑みだ。
その笑みの違いが、少年にも神姫も色々であることを実感させる。
「あ、うん。……よく分かった」
「あ、お客様」
ちょっと考え事をしていると、マリーベルから呼びかけられる。
「通り過ぎてます。USED素体の場所」
「――え?」
そそくさと戻り、少年は武装神姫の中古素体の陳列棚に目を見やる。
「……あ、神姫センターで見た新品のよりすごく安い」
少年の懐具合で考えれば、それでもまだまだお高い値段だ。
しかし、手が届かないほどではない、そんな具合だ。
しかし、手が届かないほどではない、そんな具合だ。
「神姫センターは基本定価だから。それにこのお値段は武装なしのUSEDですから」
「そうなんだ。えと、買ったら動かないとか、何か問題が起きたりとか、しないよね」
ふと思った疑問をマリーベルに尋ねる。
「ええと、そこは――」
「ソフトもハードもチェック済み。起動しないということはないよ。
保証期間も付いてるから、起動後に何かトラブルがあっても安心。
今なら素体のリペイントサービスもしていて、買ってくれた神姫をお好みの色に染めあげれるよ。
ボス……店長がいれば、起動やユーザー登録などの作業も手伝ってくれるよ。お買い得だね」
保証期間も付いてるから、起動後に何かトラブルがあっても安心。
今なら素体のリペイントサービスもしていて、買ってくれた神姫をお好みの色に染めあげれるよ。
ボス……店長がいれば、起動やユーザー登録などの作業も手伝ってくれるよ。お買い得だね」
「そうなんだ、ありがと……って誰?」
少年の疑問にマリーベルではなく、別の声が答える。
「あ、セラ姉さん」
マリーベルが声かけた方を見ると、そこにロングの青髪の神姫がいた。
その神姫は長袖長裾のゆったりした服を着て、その上に店名が書かれたエプロンを着ていた。
メガネをかけているせいなのか別の理由なのか、少し理知的でどことなく落ち着いたような雰囲気がある。
その神姫は長袖長裾のゆったりした服を着て、その上に店名が書かれたエプロンを着ていた。
メガネをかけているせいなのか別の理由なのか、少し理知的でどことなく落ち着いたような雰囲気がある。
「悪魔型MMSストラーフのセラフィルフィスだよ。よろしくお客様」
「あ、よろしく」
挨拶されて、少年は思わず挨拶し返す。
「マリーベル朝から店番ありがと。今バッテリー残量少ないでしょ。
お客様、よければあたしがマリーベルの代わりに案内と説明をさせてもらうけど、良いかな」
お客様、よければあたしがマリーベルの代わりに案内と説明をさせてもらうけど、良いかな」
「あ、うん。いいよ」
少年に了解を求めるセラフィルフィス。
バッテリー残量少ないなら仕方ないよねと了承する。
バッテリー残量少ないなら仕方ないよねと了承する。
「でも、あたしまだ――」
「いいから。お客様も了解してくれたし、しっかり一休みしなさい。無理をするのはマリーベルの悪い癖だよ。それに戻って店長に店番したこと褒めてもらいなよ」
優しく諭すようにセラフィルフィスはマリーベルに声をかける。
「分かった。失礼します、お客様」
マリーベルはぺこりと少年にお辞儀をして、手から降りてトテトテと走って去っていく。
そんな様子を少しかわいいな、と思いながら見送る。
そんな様子を少しかわいいな、と思いながら見送る。
「さて、お客様、マリーベルに代わりましてセラフィルフィスがご案内させていただきます。何かお探しのもの、またはお聞きしたいことなどありますでしょうか」
マリーベルを見送ると、セラフィルフィス茶目っ気を入れながら挨拶し、最後にウインクする。
「ああ、うん。そうだねー……」
棚を見やる。
そこには悪魔、天使、犬、猫、侍、騎士、種、花、鳥、人魚、兎、砲、銃火器、イルカ、戦車、飛行機、カブト、クワガタ、蝶などなど様々なものをモチーフにした神姫の素体が並ぶ。
ふと、棚から目を離して通路の奥を見ると、カーテンで仕切られた空間が見える。
そこには悪魔、天使、犬、猫、侍、騎士、種、花、鳥、人魚、兎、砲、銃火器、イルカ、戦車、飛行機、カブト、クワガタ、蝶などなど様々なものをモチーフにした神姫の素体が並ぶ。
ふと、棚から目を離して通路の奥を見ると、カーテンで仕切られた空間が見える。
「ねえ、あのカーテンで仕切られたところって――」
「あそこは年齢が上の方々のコーナーです。お客様にはまだ早い場所ですから。
それよりも、何かお気になる神姫はありませんか?
今なら、この騎士型や戦車型、セイレーン型なんてお求めやすい価格ですよ」
それよりも、何かお気になる神姫はありませんか?
今なら、この騎士型や戦車型、セイレーン型なんてお求めやすい価格ですよ」
にこりとやたら丁寧な口調で返され、さらに今のオススメの神姫を紹介される。
「あ、ホントだ。これなら、今まで貯めたお年玉とおこづかいで……。う~ん……」
「気になる娘がいたら、なんでも聞いてね」
値札を見ながら少年は悩む。
棚に戻し、値札を見て、を繰り返す。
時おり、質問をする。
セラフィルフィスはその姿を微笑みながら眺め、対応する。
棚に戻し、値札を見て、を繰り返す。
時おり、質問をする。
セラフィルフィスはその姿を微笑みながら眺め、対応する。
■ ■ ■
「――あ」
気がつくと、窓の外はすっかり赤く染まってしまっている。
思ったより長い間、悩んでいたらしい。
思ったより長い間、悩んでいたらしい。
「ごめん、帰らなくちゃ」
急いで帰らないと暗くなってしまうと店を出ようとする。
「あ、色々教えてくれてありがとう」
去り際に少年はセラフィルフィスにお礼を言う。
「どういたしまして。これ保護者同意書。また来てねー」
いつの間にか用意されていた保護者同意書を渡され、少年は見送られる。
出入り口に向かう際にカウンターが見える。
そこには店長と思しき大人の男性と、いつの間にかメイド服からツナギのような服に着替えた黒髪の神姫――教えてもらった通りなら、おそらく犬型MMSのハウリン――の姿があった。
出入り口に向かう際にカウンターが見える。
そこには店長と思しき大人の男性と、いつの間にかメイド服からツナギのような服に着替えた黒髪の神姫――教えてもらった通りなら、おそらく犬型MMSのハウリン――の姿があった。
「ありがとうございましたー」「ま、また来いよー」
声をかけられ、店を出る。
(家に戻って、お父さんが帰ってきたら、保護者同意書を書いてもらって、明日――)
うきうきと軽い足取りで少年は帰宅する。
――少年が神姫のマスターになるまであと22時間