「‥‥‥ふぁ。」
バッテリーフルチャージ完了。各部異常なし。
「あれ?マイスターは?」
クレイドルから寝室を見渡してみる。寝巻きに着替えていたのは見ていたから、まだ寝ていると思いましたけど、居ないようですね。あら、書置きが、
「『買い物いってくるので、留守番よろしく。お祝いにケーキ買ってくるから楽しみに待っててくれ。追伸、間違っても料理して迎えようなんてしないこと』か」
以前私が料理を作ろうとしてちょっと失敗したぐらいで、キッチン出入り禁止なんて、心配性なんですね。大人しく待つ事にしましょう。
「お祝いなんて、マイスターの命令どうりにしていただけじゃないですか。」
そう、対戦相手を追い込んでいた砲撃もすべてマイスターの指示にあわせ撃っていただけ、相手の装備からマップにおける行動を予測、そこに最適な砲弾を撃ち込む。
正確で的確な指示の元動いているから、バトルの後はうまくいっていたか不安になる。褒めてくれている間は大丈夫かな?
初戦の相手は一直線に向かってきたからそのままヘッドコアを撃ち抜き一発退場。トラウマになっていなければ良いのですけど。
マイスターに頼るしかない私は、まだまだ弱い。
強く、マイスターと堂々と胸を張れるくらいに、
―――十分強いさ、後は使い方を――
力の使い方を覚えなければなりませんね。
「神姫ネットで、過去の戦闘ログの公開をしてましたね。」
私の整備用パソコンの表示を切り替える。私と同じ大きさのマウスの操作には手間取りましたが神姫ネットに無事つながりました。
さて、あれ?この写真の方はたしか。神姫GPですか。
「ただいまー。ってメルト何やってんの?」
マイスターが帰ってきたようですね。
「お帰りなさい、マイスター。この写真の方、今日の対戦相手ですよね。」
「ああ、たしかノアロークだったかな?やっぱりレースメインの神姫だったか。」
写真には表彰台で大きな優勝カップを掲げる姿が映っている。ペイントパターンもリボンをあしらった様なものだったので覚えていました。
「こういうの興味ある?」
マイスターはそのまま椅子に座りパソコンを操作し始める。
「はい!その、乗るのは無理ですけど、バトル以外の神姫の戦いを見てみたいんです。」
「開催場所は…一週間後の隣の市の神姫センターか、意外と近かったんだな。よし、バイトも休みだし遠征してみるか。」
伸びをするマイスター。たのしそうな横顔は見ていてうれしいのですが。
「あの、マイスター。」
「どうしたメルト?」
「お祝いのケーキは?」
「あ、悪い。」
机の隅に置いた袋から、いろいろ出すマイスター。
「ねこたたままんショコラ風味と、神姫用お祝いケーキワンホール。あとは、カフェオレヂェリーに、アッサムヂェリーあとは…。」
「買いすぎですマイスター。」
「俺用のチョコミルクレープワンホールっと。コーヒーはブラックのほうがよかったかな。どうしたメルト?」
「いえ、何でもありません。」
「ミルクレープはやらないからな!」
まったく、いつもの冷静な指揮官のような態度とのギャップを見れるのは私の特権ですけど、マイスターの甘いもの好きには困ったものです。
マイスター、私のケーキはあげませんから、こっちを見てくるのはやめてください!