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実はファンヒーター派

「ホットカーペットは素晴らしい」
 本日四月七日、高校の入学式。校長は入学の挨拶中にそんなことを言い出した。気でも狂ったか?
「いきなり何を言ってるんだと思った人もいるだろう。だが訊いて欲しい。私は今、猛烈にホットカーペットの良さを伝えたいのだ」
 いやいや、何だよ猛烈に伝えたいって。
「まずは話そうと思った理由を訊いて欲しい。先日、私はホットカーペットの素晴らしき暖かさに身を包んでいたのだ。それに加えて春の陽気の組み合わせは恐ろしいまでの睡魔を誘き寄せる! 皆も一度味わってみなさい。病み付きになるはずだ!」
 嫌です。俺は貴方みたいに病みたくありません。
「だがその至福は無惨にも終わった。私の妻が、もう寒くなくなったからホットカーペットしまいましょう、と言い始めたのだ……っ」
 そりゃ言うよ。もう四月だし。アンタなに世界が終わったみたいな顔してんの。
「私は反論した。まだ仕舞うのは早いと。しかし妻は、ファンヒーターがあるからいいでしょ、と……ホットカーペットは、ファンヒーターなどと言う環境にも燃費にも悪い下等なる物に負けてしまったのだ!……私は言い合っている中、目の前にさらされていたお小遣いをしぶしぶと受けとるしかなかったのだよ……」
 いやそれ、あんたが欲に負けただけじゃん。
「だから私は思ったのだ。この場でホットカーペットの至高さを話し、いかに素晴らしいものか理解してもらおうと!」
 あの中年、誰か止めろ。頼むから。
 とそこで登場する数人の男性教員。教員が校長を舞台裏に引きずり込む。
 ……こら、今からが本題なんだ、邪魔をするな!……何? 演説を止めないと私の妻に電話するだと!?……ごめんなさいすいませんすぐ止めます申し訳ありませんでした……

 程なくして、舞台裏から再び出てくる校長。
 演説台の前に立つ校長はさっきよりもおとなしくなっていたが、目にはいまだ宿る変な光。まだホットカーペット語ろうとしてるぞ、あの中年。
「入学生、祝辞」
 とりあえず式は進行。
 俺はやっと来た出番にやれやれと腰を上げる。さぁ、やってやるか。
 ゆっくりと舞台に上がる俺を見て、周りの声がざわつく。
 舞台に上がり演説代越しに校長と向き合う。そして俺は言ってやった。
「これで少し頭冷ましてください」
 そして舞台に上がる途中持ってきた消火器を校長に向けて発射した。
 吹き出る白い噴煙。校長は驚愕の声を上げた。
 消火器も空になり、いまだに事態を把握できてないらしい間の抜けた校長。
 すっかり白く染まった校長に俺は冷たい目を向ける。
「ファンヒーターを馬鹿にするな」
 それだけ言って、俺は静かに舞台から下りた。席に戻りながら、俺は胸中でつぶやく。
 ……グッバイ、俺の高校生活。