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……ずーっと。一緒、だからね

 ざぁ、と風が吹く。桜の花弁は宙を舞い、躍る。
「もうすっかり暖かいね。日向ぼっこしてると、眠くなっちゃいそう」
 気温はぽかぽかとして、頬を撫でる風は心地良く。まさに春眠暁を覚えず、だ。
「……あ、別に貴方といるのが退屈で眠くなるわけじゃないよ?」
 思わずつぶやいてしまった一言で彼が不機嫌になってないか少し不安になり、私は慌てて言い訳。
「だって、私が幸せなのは貴方と一緒にいることなんだから」
 私の気持ちを伝えるため、私は彼をぎゅっと抱きしめる。私の胸にすっぽりと収まってしまう、ちょっと小さな彼。
 でも、私はそんな彼が何よりも大好きで。
 大好きな彼をすぐそばで感じられる私はものすごい幸せ者だ。
「桜、綺麗だね」
 彼へ訪ねるように、私は言う。
 だけど彼からはなにも返ってこない。……もう、恥ずかしがりや何だから。
 私は彼を落とさないよう、大事に抱えて桜並木を歩く。
 彼は細い腕の私でも簡単に抱えられた。ちょっとだけ、嫉妬しちゃうほど軽い。
 貴方に負けないよう私もがんばっているけど、どうしても勝てない。彼氏よりも重い彼女って、なんか複雑。
 でも仕方がない。貴方には体がないのだから。体のない彼に、体のある私が勝てるはずなかった。
 彼に勝つには体を無くせばいいんだろうけど、そうしたら貴方を運べなくなっちゃう。
 大好きな貴方。愛しい貴方。大切な貴方。
 ……貴方がいけないんだよ? もう別れようなんて言うから。
 決して呪いたいほど怨んで憎くかったわけじゃないんだよ?
 このまま付き合ってるのは限界だなんて。耐えるのは無理だなんて。そんな、そんな……
 『決してあってはいけないこと』を、言うからいけなかったんだよ?
 そんなわがままを言うから、私はしかたなく貴方を首だけにしたんだよ?
 少しは反省、してくれてるのかな?
 ……うん、きっとしてくれてるよね。だって今の貴方は、ものすごく聞き分けがいいんだもん。
 私の言うことは黙って聞いてくれて、私のすべてを否定することなく受け入れてくれて、別れようだなんて言わない。とってもいい人なんだもん、ね?
 だから、貴方はきっと反省している。
 そんな貴方に、ご褒美上げなきゃね。
 そう思い、私は彼を持ち上げて、そっと彼の唇にキスをした。
「……えへへ、嬉しい?」
 聞いても、貴方は答えない。だけど私はそれでかまわない。
 私はまた、彼に訊く。
「ずっと一緒だよ?」
 そして私は、満面の笑顔を彼に向けた。
 ……ずーっと。一緒、だからね。『生首』だけになってしまった、私の恋人。