B級戦術研究
本稿では、ちょっと残念な戦術、試行錯誤の末にボツになった戦術などのうち、特に楽しげなものや夢のあるもの、利用方法によっては有用である可能性のあるもの、やれば場が盛り上がるものなどを紹介する。なお、 本稿に記載している戦術を実施することによって生じるいかなる損害についても、当研究所は一切の責任を負わないことをあらかじめここに記しておく。
■目次
1. グリフォンスパム
2. 潜水
3. ゾンビ肉の壁作戦
4. ボスによる速攻
1. グリフォンスパム
文字通り、ナルガン陣営においてグリフォンのみを雇用する戦術である。Dauntlessがしばしばお戯れで行っているのが目撃される。Dauntlessはこの手のお遊びが大好きなプレイヤーである(参考 リプレイ倉庫のスパム集)。ほとんどの場合有効な戦術とは言えず、Ladderの試合でやるのは自殺行為に近いが、大幅な実力差がある場合には成功する場合がある。有効なマップはWeldynを筆頭とする広くて水辺が多いマップ。たとえばWeldynだと、相手が空軍を持たない陣営(人間、エルフ、オーク)で水辺の偵察を怠っていれば、グリフォンによるボスの急襲が可能である。またボスのHPが低いと、殺害が容易となる。ただし、襲撃が失敗に終わってもWURIは一切責任を負わない。
2. 潜水
潜水(骸骨系ユニットによる深水ヘックスへの潜伏)はアンデッド陣営のみが有する能力の1つである。この能力を生かした戦術が実現できないであろうかということは、アンデッド使いのプレイヤーであれば一度は考えたことがあろうかと思う。しかし実戦(とりわけLadderでは)では、稀にDauntlessが戯れにやっているのを見かける程度であり、実用化には程遠い段階である。B級戦術研究で本稿を紹介する時点で何をかいわんやというわけである。以下で、WURIにおいて潜水の検討を行ったことがあるマップについて紹介する。
(1)フリーランド
中央部に深水がある。ここは進軍にはあまり使われないルートなので露見しにくい。ただし水に潜る瞬間を斥候にみつかってはいけないため、実施難易度はやや高い。ゲーム開始直後に骨を送り込んで隠しておくのがよい。隠したからといってどう役に立つかはあまりわからない。しいて言えば、中央に総攻撃を仕掛けるときのお供ぐらいだろうか。
(2)weldyn
このマップは水辺が広く、また主塔の目と鼻の先に深水があるのがよい。一端潜ったら、そのまま中央近くまで潜りっぱなしで到達できるのがいい。敵の魚なんかが骨に遭遇すると、敵プレイヤーが驚いて愉快である。また骨に遭遇したユニットはそのターンに(遭遇直前にどれだけ移動力が残っていたとしても)それ以上移動できなくなるので、捕縛して殺してしまうのがいい。 そのために、岸辺に捕縛用のユニットを展開させておくのがよい。ただし深水における骨の回避率は10なので注意が必要である。相手が滑空ドレークなんかだったらもう最悪。他に注目すべき点としては、主塔の後方にも深水が広がっており、ボスが骨系であれば、ここに隠すことができるということであろう。なお、意味は全く無い。
(3)Basilisk
このマップには、hex数は少ないものの、キーとなる位置に深水が配置されている。まず中央部の深水は、斥候にやってきた魚などをびっくりさせる用途としてはかなり良い配置となっている。ただしWeldynのように、引っかかった敵ユニットを他のユニットで捕縛、殺害するのはやや難しそうである。また、案外盲点となるのが村1(参照) 近くの深水である。ここに骨を隠しておき、防御が手薄だと思わせておいて攻めてきた敵軍にカウンターを食らわせてやることが可能である。カウンター目的なので、逆アライメント戦では使いづらい。すなわち、攻められる時刻が朝なので、カウンターもへったくれもないということである。また同アライメント戦であっても、骨1匹ぐらいでは戦力差が覆らないぐらいの大群で押し寄せられたら、やはり意味はない。カウンター以外で有効に働きうるシチュエーションとしては、骨が居るとは知らずにやってきた斥候がうかつにも村1付近にとどまった場合、これを捕縛したりする、などであろうか。
(4)そのほかのマップ
当研究所では未検討であるが、Sullas Ruinsも面白そうである。マップが広大であるため、敵軍の目を盗んで骨を深水に隠すチャンスが多いと思われる。また、主戦場の付近に深水があるため、実用度もそれなりにありそうである。ver1.8で登場したマップも未検討であるが、面白そうなものがあった(マップ名失念)。検討が進んだら、また紹介したいと考えている。
3. ゾンビ肉の壁作戦
本戦術はゾンビを大量雇用し、盾として活用するようなものを指す。アンデッド軍は万能な盾役が存在しないことは読者各位もご存知であろう。骨は打撃にも炎にも弱く、グールは弱点が無いとはいえ頑強はつかずHPも高くはないため、打撃や斬撃、投射などの集中攻撃により1ターン以内に倒されることも稀ではない。ゴーストも低HPであるため投射ユニットによるゴリ押しには滅法弱く、かといって暗黒僧は格闘全般に対して脆弱である。そのため格闘(とくに打撃含む)と投射の混成軍が迫ってきた場合、なすすべなく後退することを余儀なくされる。たとえばオーク軍のトロル+兵卒+弓兵しかり、忠誠軍の魔術師+歩兵(槍、馬、重歩兵)しかりである。これに対して安価なゾンビを大量雇用し、骨および暗黒僧の両方を覆うようにして布陣することで、前述のどちらの兵種が迫ってきても恐れなくともよいというのが本戦術の目的とするところである。実施例を以下の図に示す(rebellofhell vs Zorro, CotB replay ver1.8)。
この方法は前述のような防衛的観点に加えて次のような攻撃的メリットも存在する。図のような布陣で多数のゾンビを用意すれば、多少の先制攻撃を受けたとしてもゾンビは到底全滅には至らず、自軍ターンでゾンビ無双を狙えるという長所もある。さらに、自軍が敵拠点を狙う際の踏み込みにも用いることができる。実際にLadderでも稀にこの戦術を目にすることができる。Ladder選手のLichking(参考 2011年1月時点でR1900超)はこの戦術を好み、初手から複数のゾンビを雇用することで知られている。(※Lichkingはどちらかというと、自陣付近で布陣してカウンターを狙うという防御的戦術を得意としている。これは後述するがゾンビの移動力を考慮すると合理的な運用方法である。)
しかし、本戦術がB級戦術である所以として、以下のような欠点を有することを付記しなければならない。1点目はそのコストパフォーマンスの悪さである。ゾンビは1体8ゴールドであるが、HP18で攻撃力も6-2と凡庸である。特に先制攻撃を受ける場合は、人間槍や魔術師(昼間)や兵卒、トロル(夜間)などに2撃で倒され、相手に損害を与えないまま居なくなる場合が多い。ゾンビを雇用しすぎると、UD軍のダメージソースである暗黒僧の数が減少し、攻撃力不足に陥る。相手の数を思うように減らせないまま攻撃を受け続けると、簡単に被害だけが膨れ上がる。
2点目の欠点は、ゾンビの移動力の低さにある。ゾンビは移動力が4であるので、よくある押し引き(参考)では攻撃に間に合わなかったり、敵に逃げられたり、あるいは自軍が撤退する際には逃げ遅れることが簡単に生じる。このような押し引きにおける逃げ遅れは、とりわけ逆アライメントにおいては致命的となる。逆アライメントかつ敵の主力が高攻撃力であるような忠誠軍、ドレーク軍が相手では、この戦術は分が悪いと言える。逃げ遅れて槍兵やらドレーク戦士に瞬殺されるのが関の山であろう(前述のLichkingは例外的に、vsドレークでカウンター狙いのゾンビ無双を得意としている)。一方で同アライメントであれば、敵の攻撃を受けるシチュエーションに遭ったとしても、壊滅的被害を蒙らなければカウンターを狙える。勿論その場合はゾンビ無双を狙う。というか、ゾンビの雇用によって攻撃力が低下しているため、主砲の火力は間違いなく劣っているからである。なけなしの暗黒僧を総動員してうまく敵前衛のHPを削り、確実にゾンビ化することが求められる。また虎の子の暗黒僧をゾンビで確実にガードし、倒されてしまわないようにする必要がある。ゾンビ化に失敗し、前衛を倒し損ねると、攻撃に参加した暗黒僧が危険に晒されることになる。勿論攻撃回数が少ないLv0ゾンビではこういった事象は日常茶飯事であり、それは本戦術がB級戦術たる所以であることの証左でもある。なお、結果的にゾンビが画面上に溢れることになるという点では、長期戦におけるLv0雇用へのシフト(参考)も同様であるように見えるが、本戦術は初期からゾンビをばんばん雇用するという点で、これとは区別されるべきである。
4. ボスによる速攻
文字通り、ボスを用いて速攻を仕掛けるものである。ボスはLv2ユニットであるため攻撃に参加させることによる威力は大きい。また総ユニット数が少ない序盤であれば、戦力全体に対するボスの寄与は大きく、うまくいけばそのまま試合を決めてしまうほどの威力を有する。しかし言うまでもなくリスクも非常に大きい。そもそも速攻(参考)自体がリスキーな戦術であり、失敗はほぼ敗戦を意味する。また前線に出た自軍ボスが殺害されるリスクもある。さらにボスが出撃中に雇用が滞ることによる隙を突かれて戦況が悪化することもある。このように本戦術は極めて采配が難しく、初心者が迂闊に採用しても成功する保証はない。初心者はボスを積極的に戦線に投入しようとする傾向が強いため、なおのこと注意を払う必要があろう。WURIでも一時期は本戦術を積極的に採用していた時期があったが、上述のような点から現在は威嚇や陽動といった補助的な意味合いでの運用が中心となっている。
ボスによる速攻が可能であるための条件がいくつか存在する。1点目はアライメントによる制約。デフォルトの開始時刻の設定だと、ほとんどのマップでは秩序陣営による速攻は不可能である。そのため人間やドレーク(トカゲ除く)陣営によるボス速攻はそもそも実施できない。2日目以降のボスを含む総攻撃は検討に値するが、その頃には敵軍も充分なユニット数で迎撃体制を整えていることがほとんどであるため、奇襲とはならない。では混沌陣営であれば何でも良いかというと、そういうわけでもない。2点目は、速攻に用いるに足る移動力と攻撃力とを有するかどうかが問題となる。主塔からの移動を考えると移動力6が好ましい。普通に夜1に敵拠点にボスを届かせるために、移動力6が必要である場合がほとんどである。また、速攻が不発に終わった(攻撃を行わずに撤退することを含む)場合のリカバーを考慮すると、移動力5では心もとない。また移動力6を満たすからといって、充分な攻撃力を持たないボスで速攻をかけても恐るるに足らずということになる。オーク陣営の殺戮者は攻撃力という点で不満がある(ただし後述するが主塔乗っ取りのための襲撃であれば攻撃力は度外視してよい)。ナルガンの熟練盗賊だと、奇襲を考慮すると攻撃力も充分であるように思えるが、初心者相手でもない限り奇襲は決まらず、熟練盗賊の散兵を生かそうとすると、どうしてもボスを単身で敵陣深くにねじ込む必要があり、リスクが高すぎる。よって熟練盗賊も難しい。当研究所の読者であればお分かりかと思うが、適任なのはデスブレードを置いて他には無いと思われる。ただし倒されないように細心の注意を払うこと。デスブレード以外に適任のボスが存在するかどうかは検討の余地がある。たとえばエルフ射撃手などは、貫通耐性以外の相手には適任であると思われる。ただしそもそも混沌属性ではないので、速攻を行うことがあるかどうかという点が問題になる。相対的には対人間と対純粋ドレークに対しては夜に攻撃をかけても良いように思われるが、混沌のような攻撃力上昇がないため、攻めあぐねることが多いように思われる。ほかの候補としてはトカゲがあるが、ランダムではボスにトカゲlv2が選ばれることはない(ver 1.6?より)。アンデッド陣営以外についてはWURIでは検討不足であるため、現状ではこれ以上の議論は行えない。今後の解析が待たれる。
以下で、いくつかのボス速攻の実施例を紹介する。
(1)フリーランド速攻
具体的な行軍についてはMap別攻略のフリーランドを参照していただきたい(リンク)。5ターン目に中央村をデスブレードが襲うというものである。しかし相手がまともに偵察を行っていれば、中央を標的としていることを簡単に察知され、迎撃体勢をとられる。無理に速攻を仕掛けようものなら、カウンターにより暗黒僧が倒されたり、ボスが挟まれて帰れなくなるといったことが普通に起りうる。また敵軍ボスが赤魔術師であろうものなら、速攻はほぼ不可能である。そのためほとんどは、敵軍を後退させて翌朝の総攻撃を遅らせるための威嚇として使われ、実際に襲撃が起こることは(少なくとも最近のLadder戦では)ほとんど無い。稀にだが、相手が初動を誤ったときには、襲撃が起こる。そしてそのまま勝ってしまう。
(2)ハウリング速攻
具体的な行軍については同上(リンク)。一部で大変な騒ぎになった上、マップが改訂された。その詳細についてはここでは語らないことにする。ボス速攻という本稿の趣旨を脇に置くと、速攻自体の威力や安定性はアンデッド軍よりもオーク軍のほうが勝ると思われる。また、HODOR速攻が有効に機能する(ただし相手陣営次第)数少ないマップでもある。相手が対応を誤ると、ボスによって主塔C(参照)を乗っ取ることができる。
(3)sulla速攻
具体的な行軍については同上(リンク)。aramaki研究員が考案し、充分な検討を経ないまま実戦投入されるも、アンデッド速攻については致命的な脆さを示すことが彼自身の手で実証された。また、マップが広く、ナルガンの熟練盗賊ボスとHODOR雇用による速攻が有効であると思われるものの、Ladderでの実用例は知る限り存在しない。
(4)シルバーヘッド速攻
具t(リンク)。上下の守りはコウモリ2匹ずつと皆無に等しく、中央突破に失敗すればほぼ敗北するという男気溢れる戦術である。初見殺し以外の用途としての価値はほぼ無い。初見殺しとしてはある程度の効果を発揮するようである。また、このマップは中央部の水辺を空軍で制圧するという速攻が可能であると思われ、ドレークによる速攻(または2日目の総攻撃)が有効な戦術となる可能性がある。しかしWURIでは詳細な検討を行っていない。今後の課題としたい。
(5)2vs2での村明け渡しによる完全分業
これもボスによる速攻と言える。具体的な戦術については2vs2戦術発展(リンク)の末尾を参照。一見楽しそうであるが、本当に楽しいかどうかは保証できない。