2vs2戦術発展
はじめに
2vs2では1vs1とは異なり、以前から議論されているように「友軍との行動順」という要素の存在によって、戦術がより複雑となっている(参考)。 すなわち友軍との連携が必要な規模のマップにおいては、チームのうち先に行動するプレイヤー(以下アシスト役)と後に行動するプレイヤー(以下フォロー役)が、それぞれ己の役割を考慮した行動を取る必要が生じてくる。このような行動順に即した戦術の最適化という観点からの議論は、これまで1vs1研究を重点的に行ってきた当研究所においては十分になされておらず、2vs2戦術をさらに発展させる可能性を秘めているといえる。そこで本稿では、この「友軍との行動順」に着目し、2vs2のより具体的な戦術を模索する。しかしながら、現在のWURI内外における当該分野の研究進捗状況を鑑みると、2vs2戦術を体系的に論じる段階には至っていない。そのためここでは、Tips集の形で「友軍との行動順を考慮した戦術案」を列挙する。
なお本稿では友軍との連携を題材としているため、p1とp4、p2とp3がチームとなっているような場合(多くの2v2マップではそう設定されている)を扱い、p1p3とp2p4のチーム戦については議論しない。また、p1とp4が共闘できるような形状のマップについて議論することをはじめに記しておく。また、注意していただきたいのは、2v2アライメント理論の末尾でも指摘されているように、十分に意思疎通が可能な人物が友軍を務めている場合にのみ、以下のような戦術は実行可能であるということである。相手が見ず知らずの人間であったり、とりわけそれが外国人であったりする時には、多くの場合実行が困難である。
1.アシスト役とフォロー役に適した陣営と雇用パターンの考察
以前に、2vs2のチームプレイ時における雇用の役割分担を議論したことがある(2vs2戦術)。たとえばオーク陣営とアンデッド陣営がチームとなった場合は、近接格闘ユニットとしてオーク軍が兵卒ばかり出し、アンデッド軍は暗黒僧の雇用に専念するという雇用の連携が有用である。本節では、このような連携に、友軍との行動順という概念を加えて考察する。
先のオーク、アンデッド連合を例としてを考えよう。たとえばp4とp1のチームの場合、チーム内ではまずp4が先に行動する。総攻撃時にはp4がいち早く敵に接触して攻撃を仕掛けることになる。次にp1は、p4が仕留め損ねた敵を倒したり、敵が倒れて空いたヘクスに盾用のユニットを配置することになる。このような場合にもしp1がオーク陣営でp4がアンデッド陣営ならば、先に示した通りp4が暗黒僧を多量に雇用し、p1は暗黒僧をカバーするための兵卒(場合によってはトロル)を雇用するという連携が理にかなっている。しかし逆に、p1がアンデッド陣営でp4がオーク陣営であった場合はどうであろうか。先ほどの場合と同じようにアンデッド陣営が暗黒僧ばかり雇用しても、前衛であるはずの兵卒は先に行動済みであり、暗黒僧を守ることができない。そこで先ほどとは異なりp1は、盾役としてグールなどを雇用する必要が出てくる。ただし両陣営の主な攻撃力は依然として暗黒僧頼みであるため、p1が歩兵ばかり出してもよいわけではない。p1アンデッド、p4オークの場合は逆の場合よりも注意深いユニット運用が必要となる。
次に、忠誠陣営やエルフ陣営など、多様なユニット構成を持つ陣営について議論しよう。チームはたとえば、両陣営とも人間であったとしよう(べつに人間+エルフでもよい)。総攻撃時にはやはり、前衛を魔術師で焼き払って、開いたスペースに歩兵をねじ込みつつ奥の投射系を殴るという展開になるだろう。このような場合やはり、魔術師はp4が雇用し、p1はカバー役にまわって槍兵を多数雇用するのが良いと思われる。陣営がかぶってしまったようなチームだと特に、p1とp4のユニット種に差がないため、漫然と戦うと弱点を突かれたりして苦戦することが多い。本節で紹介したような工夫を活用すべき好例であろう。
2.回復ユニットの活用
1vs1だと、エルフ呪術師などの治療ユニットによるHP回復と、村や再生による回復は重複しない。しかしながら友軍のユニットによるHP回復と、自ターンの村(or再生)の回復は重複する。これは回復イベントの発生タイミングが重ならないからである。したがって治療ユニットの価値は1vs1の時よりも高いと言える。チーム構成がエルフ×2や、エルフ+ドレークであった場合は、互いの治療ユニットを交換したり組み合わせたりすることで、さらに高い効果が期待できる。
3.奇襲と散兵
ややトリビアルな例であるが、奇襲と散兵を組み合わせる例を紹介しよう。適用可能な組み合わせが少ないため、なかなか活用する機会にお目にかかれないかもしれないが、出くわしたら試していただきたい。話は簡単で、p1がナルガンでp4が人間かドレーク陣営である場合には、p4が散兵ユニットで回りこみ、p1の盗賊で奇襲を発動させるというものである。1vs1では、中級者以上の試合であれば特に、巧みなZOCにより奇襲が防がれることが多い。翻ってここで提案する手法によれば、散兵によってZOCが無効化できるので、奇襲を発動させやすい。
ただ、WURIメンバーで一度試してみたが、狭いマップだと敵味方が密集しやすく、散兵を使ってもなお敵を挟めないことが多かった。中規模以上のマップでないと有効活用できないかもしれない。
4.村明け渡しによる完全分業
anreal研究員の発案によるチーム間での村明け渡し戦術を、チーム行動順という要素を加味して考察した。anreal研究員の提案は、p1がp4の村を全て取ってしまうことで、p4は雇用ができないが、維持費のマイナス分を背負うことでチーム全体の資金としては有利になるというものである。またp4はボスが主塔に居る必要がなくなるため、前線で戦い続けることができるというメリットも存在する。チーム行動順を考慮すると、村を明け渡す側は、初期雇用以外には一切ユニットを雇わないため、ユニットを消耗するフォロー役には不向きである。したがって、村を取る役と明け渡す役の決定には、チーム内の行動順を考慮する必要がある。チーム1は、p1が村を全てとり、p4はたとえばアンデッドなら暗黒僧を多く出して暴れ続けるという構成が良い(チーム2に村を荒らされないためにも、先に動けるp1が村取りを行う必要がある)。一方でチーム2は、p3がフォロー役で、p2が村を明け渡す役であるということに注意する必要がある。
こちらも、WURIのメンバーで一度試してみたが、まだまだ調整が必要な段階であると感じた。まずp1は、村を全て取ってしまわないといけないので、斥候を複数出す必要がある。しかしp4は初期資金をとっとと使い切って攻め込まなければならず、城のスペースが不足してしまう。したがってp1とp4の初期雇用をどのような割り振りにするかを検討する必要がある。また、突撃役のp4はどうしてもHPの回復が追い付かないと思われる。とくに長期戦になると、その傾向が強くなると予想される。anreal研究員が提案しているように、白魔ボスなどによる回復が必須であろう。その場合、p4ボスによる回復は有効であろうが、p1ボスが回復持ちであっても有用ではない。なぜならばp1ボスは2人分の雇用をしなければならないため、主塔から離れるのは得策ではないからだ。どちらかの陣営がエルフかドレークで回復ユニットを雇用するか、人間陣営で魔術師を白魔にレベルアップさせるか、などの対策が必要であろう。
おわりに
前述の通り、本項は具体的な戦術案の列挙に過ぎず、当研究所における2v2研究は未だ途上であることはおわかりかと思う。2vs2は1vs1よりもプレイに時間が掛かる。またLadderのようなレーティングが存在しないため、せっかく試合が始まっても、すぐに途中抜けするようなプレイヤーと当たることもしばしばある。このような事由により2vs2の研究は1vs1のそれよりも、進捗そのものが遅くなる傾向にある。今後の進捗も遅々としたものになりがちだと思われるが、温かい目で見守っていただければ幸いである。