白髪婆2


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 白髪婆は柔和な笑みを浮かべる。
 その考えは計り知れないが、頬にはしる幾筋もの皺は無邪気な表情を見せている。およそ悪意とは縁遠い人、夢と現の境なす、ただ一本の道を時の始まる前から駆けている。
 謎めいた言葉も、すべて決着がついてみれば、大抵は成程と理解できるものだった。
「ナズナ嬢にお会いしたいのです」
「北を南に東を西に、ぶんぶん風は巡るよ、娘を訪ね。会おうぞ、また会おうぞ、さらば、さらば」
 ぐるりと頭を巡らせて、波打つ白髪を辺り一帯に広げた。視界が埋まる。キャンパスの布を被せられた心地がする。もう馴染みとなった感覚だ。
 白髪婆に始めて会ったのは、一年程前になる。その時は、何が起きたのかまるでわからなかった。夢を見ているのだと思った。
 色々な事が同時に起こった時期ではあったけれど、さすがに、あまりに突拍子もない出来事だったので、自分の頭がおかしくなったのだろうと思った。
 いまだに、何がどうなっているかは全く把握していない。しかし受け入れることは出来るようになった。
「さようなら、白髪婆」
「おうよ。達者でな」
 真っ白の世界にお互いの声だけが響く。
 この世界が理解できないのと、白髪婆が理解できないのは似ている。僕がまだ世界の初心者で、若いからなのだろうか。しかし年を取れば不思議な出来事に慣れるというものでもないだろう。
 ――白髪婆が飛ぶように去ってゆく気配がして、突然目の前に新しい風景がひらけた。
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