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「小雨」(2008/12/22 (月) 20:05:40) の最新版変更点
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どの駅で降りたのか覚えていない。
憂鬱な桜。線路沿いの土手に咲いている。おそらく中央線に乗っていた。
千鳥ヶ淵、四谷、おそらくその辺り。それからしばらくあてもなく歩いた。
橋を渡って、まっすぐな車通りの多い道を延々闊歩。空気は暖かくて足蒸れる。折りしも小雨がぱらつきシャツを濡らす。
学生よりサラリーマンの姿が多い。四谷から新宿の辺りだろうか。確信はない。逆かもしれない。
花と葉と煤煙の香り、ここは都市だ。僕は田園の生まれで、中学の頃は田んぼの真ん中のアスファルト道を、太陽の光に目を細めながら歩いた。少し道を外れると国道が走っている。古くからある街道で、東京から成田へ通じている。
近所の生垣が良く手入れされた家には、梅、桜、蜜柑、雪柳、紫陽花……ツツジなどがあった。緑の葉の濃い木や、名前の知らないものも沢山植わっていた。
空気はいい加減少し蒸れている。汗なのか雨なのか判断つきかねてくる。なんとなく心地よい。この柔らかさは幾度目かのキスを思い出させる。彼女は、雨の中でそっと目を閉じた。何時のことかは余り覚えていない。少し昔だ。濡れた髪の匂いがした。
シャッと軽快な音をたてて車が走りぬけて行く。トヨタ? ニッサン? 車のメーカーが気になりだしたのは、教習所に通い始めてからだ。車はもう決めているの? などと路上を走る合間に聞かれる。意識しだすと、微妙な形の違い、性能などが気になってくるから、不思議なものだった。