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暇だった。とにもかくにも暇だった。
起床。検温。朝飯。包帯の交換。昼食。午睡。夕食。包帯の交換。就寝。
このルーチンワークのつまらなさ加減は、入院したことのあるヤツにしかわかんねーだろうな。
テレビはあるし、看護婦さんが雑誌や文庫本を貸してくれたりもしたが、
俄然アウトドア派の俺にはどれも無用の長物で、俺は専ら、窓の外を眺めたり、院内を散歩したりして時間を潰していた。
見舞いに来てもらっている幸せな患者を見かけると、どうしようもなく悲しくなる。
なんでヒナタを引き留めなかったんだ? あいつのことだから責任感じて、絶対留まってくれたぞ?
そういった馬鹿な考えが浮かんできては、それを沈める毎日が続いていた。
親父やお袋に連絡するのも癪だった。それに仮に連絡したとして、年下の女の子にポケモンバトルで負けて火傷させられた、なんて言えるか?
無理だね。恥ずかしさで死ねる。
そんなこんなで、俺の侘しい入院生活が始まって一ヶ月経ったある日の夜こと。
俺がベッドに潜り込んでからしばらくして、ドアの開く音がした。
隣のベッドのおっさんがトイレにでも行ったのか?
そう思って体を横にして耳を欹てたが、10秒待っても何も聞こえなかったので、仰向けに戻った。
「ヒッ」叫びそうになる俺に、「しーっ」と指を立てるヒナタ。
「どどど、どうしてお前がここにいるんだよ?」
「タイチのことが心配で戻って来ちゃった」
「嘘だろ……はは、まるで夢を見てる気分だぜ」
「ねえタイチ、あたし、ちゃんとタイチに謝りたい」
「謝るって……、いいよ、もう」
「それじゃダメなの」
腰に重みを感じる。気づけばヒナタは俺に馬乗りになって、恍惚とした表情になっていた。
「タイチの好きにしていいよ」
「マジで、言ってんのか?」
「……う、ん」
肉付きの良い太股。たわわな胸。雪のように白いうなじ。幽かな汗のにおい。俺の理性は1秒を待たずして飛んだ。
そこで夢は終わった。寝惚け眼が、朝日と、乱れた布団と、俺専属の女医と、彼女の視線が向けられた先を順に見た。
俺は全てを理解した。
泣いた。
                完