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鰐ノ仔煩悶記 第十四帖「不安の種」

セキチクシティが近づくにつれて、空気からはどんどん湿気が消えていった。
おかげで俺の自慢の皮膚もぱさぱさだ。
休憩時間になるとスターミーさんが水を撒いてくれたけど、所詮、気休めでしかない。
保湿性の高いボールの中でぐうたらしていようかな、とも思ったけれど、できなかった。
理由? いつもの通り、ミニリュウのクソ野郎が俺のパウワウ姉さんにちょっかいをかけているからさ。
ミニリュウがこれ見よがしにヒレを振るう。
吐き気がした。
ミニリュウが僕や姉さんには見えない透明の敵に激しい攻撃を加えている。
姉さんは見向きもしていない。
へへん、ざまあみろ。
心の中で思い切り笑ってやる。と、そんな僕に気がついたのか、ミニリュウがこっちを睨んできた。
"今笑ったんじゃねえだろうな"
そんな意図を察して、僕は大きく首を振った。
悔しいことにやつは強い。喧嘩したところで勝ち目はない。
生まれたときから強いってなんだよ、と思う。格差社会かよ。
どうしようもなく苛々する。
俺の不快指数はぐんぐん上昇、みるみるうちにストップ高だ。
こんなときはピッピを虐めて気分を晴らそう。ピンクのボールを探すと、蝶々を追いかけて遊んでいた。暢気なやつだ。
「がう」おい、ピッピ。
「がうがう」おいってば。
無視された……だと?
くそっ、どいつもこいつも俺を舐めやがって。
ピッピなんて出会いたての頃はバカみたいに怯えていたのに、ポケモンタワーから帰ってきてから反抗することを覚えやがった。
極めつけはあのミニリュウだ。新参者のくせに偉そうにしやがって、いつか俺がアリゲイツになった時にボコボコにしてやる。

俺は寝っ転がってあの電気ネズミのことを思った。
なあ、あんたは今どこにいるんだ? あんたが帰ってきさえすれば全部片付くんだ。
ミニリュウの野郎が調子づいたり、パウワウ姉さんが心を煩わせることもねえってのに――。