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タオル

確かに、これと同じマスクをつければ蝶・究極だね、と、パピヨンは言った。

カズキが振り向くと同時にパピヨンの手が伸びてきて、首にかかっていたタオルを勝手に引き抜き、自分の顔を拭く。

「銭湯で騒ぐのはマナー違反だよ」

驚愕する六舛らにパピヨンはそう言って、何事もなかったかのようにカズキの首にタオルをかけ直した。あまりに自然な一連の動作に、カズキはひとのタオルを勝手に使うなという注意さえできなかった。

『いや、その前に風呂くらいは、まずマスクを外させろ』

少年は後で合流した年上の少女戦士に、そう突っ込まれた。マスクをしたまま風呂にはいるのは確かに問題だ、うん。今度蝶野に会ったらそう言おう、と少年は思った。


以来、時々パピヨンはカズキの部屋にやってきては、銭湯に行くから、とタオルを借りてゆく。「タオルくらい自分で持って行けよ」とカズキが抗議すると、「しまうとかさばるだろう。それにこちらの方が銭湯に近いじゃないか」と一蹴された。結局、カズキが折れて、洗って返せよ、とタオルの入った引き出しをあさる羽目になる。

あ、そうだ。タオルを取り出すその手が止まり、カズキが肩越しに振り返る。

「斗貴子さんが、銭湯ではマスクを外せってさ」

「外さない理由は、あの和製ブリュンヒルデも了解しているはずだが?」

決して人前ではマスクを外さないと宣言した青年は怪訝そうに返し、カズキから受け取ったタオルを首にかける。紫の(自称)素敵な一張羅と、“合資会社 たいよう工務店”の黄色いロゴ入りタオルはまるきりちぐはぐだった。しまうにしても、しまう場所が場所だけに、あのタオルは確かにかさばるだろう。帰途の濡れたタオルとなればもっと大変なことになるだろう。まー、蝶野の言うことにも一理あるかぁ、とカズキはあっさりと納得した。

「うーん、多分頭で解っていてもってヤツじゃないかなー。オレも実はちょっと思った。顔を拭くときはちゃんと全部拭かなきゃイミ無いだろ?」

斗貴子の言い分とはズレが生じていることにカズキは気がついていない。もちろん、パピヨンも。

「そうか、なんとかマスクを外さずに顔を拭く方法を練習しておこう‥‥ずらすのが一番簡単だろう‥‥いや、回転させた方がいいか」

いや、そもそもマスクをはずして普通に風呂に入れ、とこの場に斗貴子がいたら確実にツッコミが入りそうな科白だったが、幸か不幸かその場にいたのはカズキだった。

「方法は任せるから、カッコよく顔を拭けるようになったら是非実演してくれよ」

「楽しみにしていろ。蝶・感動するようなエレガントな洗顔を見せてやる」

にぃ、と笑ってパピヨンは窓を飛び出し、夜闇に消えていった。

Note

2005/02/06 初稿

微妙に論点がずれてゆく人たちを書いているのがちょっと楽しかった。で、6巻の逆さマスクなパッピーになる、と。

タオルで顔を拭くパピヨンは4巻の銭湯シーンを見て2番目につっこんだ箇所だったり。「アナタ、タオルは一体何処から?」って感じで。ちなみに1番は“カツカツ”の擬音(笑)。桶はナチュラルにスルーでした。

ところで、「そこんとこ承知で戦る?」のくだりは“銭湯で戦闘”の駄洒落展開にするつもりの名残だったんじゃ‥‥‥‥自分、勘ぐりすぎ。

2006/11/08 移行

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