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日本軍のインテリジェンス
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小谷 賢『日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか(講談社選書メチエ)』
- 小谷 賢 著
「戦争中、日本は情報戦に負けた」と言われているが、それは暗号を解読されていたという単純なレベルのものではない。暗号解読に関して言えば本文中で述べてきたように、日本も連合軍の暗号をある程度解読していたため、この分野で日本がまったく無防備であったというわけではない。
それよりも深刻な問題は、日本がインテリジェンスを組織的、戦略的に利用することができなかったという組織構造や、対外インテリジェンスを軽視するというメンタリティーにあった。イギリスなどと比べると、政治家が情報を戦略的に利用する意図が低かったために、日本が戦略的劣勢に追い込まれてしまったということである。この点をよく理解しておかなければ、いずれまた同じ過ちを繰り返すかもしれない。
目次
- はじめに
- 立ち遅れている日本のインテリジェンス研究
- インテリジェンスの本質
- 明治以降の日本のインテリジェンス
- 第1章 日本軍による情報収集活動
- 1 情報源による類型
- 様々な性質の情報源
- 2 日本の通信情報(シギント)
- 実力の過小評価
- 近年の見直し
- 第2章 陸軍の情報収集
- 1 通信情報
- (1)対米英暗号解読活動
- (2)対中暗号解読活動
- (3)対ソ暗号解読活動
- 2 人的情報(ヒューミント)
- (1)沿革
- (2)情報機構の改革
- (3)対ソ情報活動
- (4)中国大陸における情報活動
- (5)南方における情報活動
- 3 防諜(カウンター・インテリジェンス)
- (1)憲兵隊
- (2)陸軍省調査部
- 第3章 海軍の情報収集
- 1 通信情報
- X機関の設立
- 方位測定の活用
- 2 人的情報
- 軍令部特務部
- 日本海軍に雇われたイギリス人たち
- 3 防諜
- 防諜の不徹底
- 油断と慢心のツケ
- 第4章 情報の分析・評価はいかになされたか
- 1 陸海軍の情報分析
- 分析とはどのようなプロセスか
- 軍上層部の無関心
- 2 陸海軍における情報部の地位
- 「作戦重視、情報軽視」の弊害
- たび重なる判断ミス
- 役割分担の欠如
- 空母サラトガを四度撃沈?
- 3 情報部の役割
- 深刻なセクショナリズム
- 「インテリジェンス」と「インフォメーション」の混同
- 第5章 情報の利用―成功と失敗の実例
- 1 戦術レベルにおける利用
- 成功した事例
- (1)作戦戦闘における通信情報
- (2)作戦戦闘における人的情報
- 2 主観と偏見──情報の落とし穴
- (1)連合軍(主にイギリス)の対日イメージ
- (2)日本陸軍の対米英イメージ
- (3)日本海軍の対米英イメージ
- 第6章 戦略における情報利用―太平洋戦争に至る政策決定と情報の役割
- 日本とイギリスの情報戦略に対する姿勢
- (1)三国同盟に至る情勢判断
- (2)独ソ戦勃発に関わる情勢判断
- (3)暫定協定案とハル・ノートに感する情報判断
- 主観的判断と情報の政治化
- 第7章 日本軍のインテリジェンスの問題点
- 固有の問題点
- 情報部の立場の弱さ
- 情報集約的機関の不在
- 近視眼的な情報運用
- リクワイアメントの不在
- 終章 歴史の教訓
- (1)組織化されないインテリジェンス
- (2)情報部の地位の低さ
- (3)防諜の不徹底
- (4)近視眼的情報運用
- (5)情報集約機関の不在とセクショナリズム
- (6)戦略の欠如によるリクワイアメントの不在
- あとがき
- 註
- 索引
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関連リンク
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- 日本軍のインテリジェンス - 池田信夫 blog(旧館)
- 小谷賢:日本軍のインテリジェンス