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962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2008/01/21(月) 00:55:57.57 ID:amsvSgo0
夢を見る
それは決まって、自分が暗い部屋にいるところから始まる。
しばらくすると、部屋の外から荒々しい声が聞こえてくる。
罵声。悲鳴。
夢の中で自分はひたすら迫りくるなにかにおびえ、部屋の隅で震えている。
そして、静寂がくる。
息が出来ない。
―靴音がする。
自分はただ目をつぶり祈る。
―そいつはゆっくりと、部屋へと近づいてくる。
―そして、ドアが開く。
―見覚えのある顔
目を見れない
―そいつはただ一言
“忘れるな”
聞き覚えのある声で、そいつは夢の終わりを告げた。
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2008/01/21(月) 00:56:37.03 ID:amsvSgo0
「ふぁ~ああ」
欠伸を一つ。
今日は寝つきが悪く、眠れなかった。
「・・・まったく・・・なんだってまだこんな夢を見てるのかね」
寝起きの頭を起こすため、部屋にある洗面台まで移動する。
「・・・・ハァッ」
冷たい水で顔を洗う。
鏡に映る顔は、ひどく青ざめている。
愛用のタオルをとり、顔を拭きながら食堂へと向かう。
そして、リビングに入って気づく。
「・・・なるほどね」
そこには写る数字も見て、毒々しくつぶやいた。
「おはよう赤、今日も君は早いな。」
「おはよう青。いや、みんなの分の朝食も作らなきゃならないしね。」
みんなの中では一番早起きな青と朝の挨拶をかわす。
いつもと変わらない日常。
つぎに緑が起きてきて、桃。
黒は不定期だが、だいたい少し遅めに起きてくる。
「んじゃ、私は黄を起こしてくるかな。」
「あぁ、頼む。」
そして、一番のネボスケの黄を青が起こしにいく。
「んで、昼ごろにはあいつらとバトル・・・か。」
それが日常。
繰り返される、変わらぬ日々。
「これでいいんだよな。」
気づけばそう無意識に呟いていた。
「んっ?なんか言ったか赤?」
青がリビングの扉から頭をだして聞いてくる。
「・・・いや、今日の昼食は何にしようかなって言っただけだよ。」
「そうか。そうだな・・・それなら洋食がいいな。コーヒーに合う物を頼む。」
「はいはい。んじゃパンとスクランブルエッグでいいか。手抜きだけど。」
「いいじゃないかたまには。最近は和食ばかりで飽きていたからな。」
「緑が和食好きだしなぁ。」
冷蔵庫から卵を取り出しながら言う
「・・・まったくどこかの誰かさんは緑には優しいからな。」
「そんなことないさ。俺はみんなに優しくしてるつもりだよ。」
「・・・どうだか。まぁなにより味噌汁にコーヒーは合わないからな。手抜きでも洋食はありがたい。」
青が肩をすくめて言う
「で も ! 私のコーヒーは手を抜くなよ。」
「はいはい。」
「もちろん大人らしく
「無糖でね。わかってるよ。」
「・・・ならいいんだ。よろしくな。」
最後に微笑んでから青はリビングから出て行った。
時刻は8時。
みんなが起きてくるまで30分くらい。
「んじゃパパッと終わらせますか。」
964 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2008/01/21(月) 00:57:24.38 ID:amsvSgo0
「に、しても遅くないか?」
時計は昼の3時を指している。
いつもならとっくに出撃している時間だ。
「みんなも、それぞれどっか行っちゃったしなぁ。」
まぁ俺も帰ってきてからやろうと思っていた皿洗いを始めちゃってるわけなんだが。
「あいつら風邪でも引いたのか?それともまた旅行かなんかか。」
「後で電話してみるか。」
緑の皿を洗い終わって黒の皿に移ったときだった。
トントン
「んっ?」
タンタン
「なんだ?」
玄関の方から音がする。
「また新聞の勧誘かなんかか?インターホン使えばいいのに。」
手をすすぎエプロンを外す
「はいはい!!今出ます。」
急いで玄関に向かいドアを開けた。
「あ、あかさん!!!」
「おっ!どしたの首領ちゃん?」
そこには涙を貯めた悪の軍団の首領がいた。
「おんなかんぶさんがっ!!みんながっ!!」
―今思えば。その時の俺は馬鹿だったと思う。
「なんだって!?さらわれた!?」
―いつも変わらないはずの日々
「大丈夫。俺が助けてくるから。」
―続くわけない都合の良い夢におぼれていたんだ
俺は、女幹部さんが監禁されている秘密基地へと走り出した。
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2008/01/21(月) 00:57:53.14 ID:amsvSgo0
「おかしい。」
着いた瞬間、そう感じた。
何度も訪れたこともある悪の秘密基地は、明らかに雰囲気が一変していた。
「あいつらもここまで来てるのに出てこないなんて。」
人気もなく。ただ、基地の奥へと続く扉だけが、不気味に開いてる。
「まさかな。」
「なにっ!?赤が一人で行ったのか!?」
「そんな無茶だよ!!」
青と黄が叫ぶ。
修行から帰ってきた二人は、基地の中で泣いている首領を見つけたのだった。
「てきさんはみんなつよくて、みんなやられちゃって」
事情を聞いた二人は驚愕した。
「まさか・・・私達の町にこんなのが出てくるなんてね・・・」
「・・・想定の範囲内。・・・今までのが運が良かっただけ・・・・」
二人からの連絡を受けた桃と緑が言う。
「でも、まさかこんな組織があったなんて。」
「黒、お前はこの組織の出資者の娘なんだって?ならこういう情報は知らなかったのか?」
「いえ、すみません。出資者といっても所詮はただの自己満足なんですよ。
お父様もほんとうに世界を平和にしようなんて思ってないんです。
ただお金を出資するというだけで・・・」
うつむく黒。
「・・・そうか。・・・それより、早く赤を助けに行かなきゃな。」
「そうだね。赤一人じゃ不安だし。」
「・・・場所、秘密基地でいいの?」
「はい。けんきゅうしつのおくのほうにいるの。」
「了解。んじゃ、みんな急ごうよ!」
「お父様に連絡してヘリを呼びました。みなさん、早く。」
966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2008/01/21(月) 00:58:25.60 ID:amsvSgo0
「嘘・・・だろ・・・?」
そこにみんなはいた。
「なんで・・・なんで・・・」
だが、みんなが怪我をして、倒れていた。
「なにがあったっていうんだよ!?」
「あ・・・赤・・・・。」
「お、男幹部さん!?」
そこには口から血を流し、倒れている男幹部。
「お前が来たってことは、首領は無事か。命をはったかいがあったぜ。」
「ちょっ!なにがあったんですか!」
「お前が聞いたとおりだ。うちによその組織の奴らが攻めてきて、乗っ取ろうとしてきたんだよ。
奴ら、首領を人質にとろうとして、失敗して・・・」
「赤!!この向こうに女幹部が捕まってる。」
「雑魚達が助けに行ったが・・・あいつらじゃ無理だ。」
「お前ならできる。頼む・・・みんなを。」
そう告げて、男幹部は目蓋を閉じた。
「・・・・。」
夢の言葉がフラッシュバックする。
「・・・クソ」
手が震える。
俺は正義の味方だ。
誰かを守るために、強くなったんだろ!!
「俺は・・・戦わなくちゃいけないんだ・・・」
奥から聞こえた悲鳴。
震える腕をおさえ、走り出す。
967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2008/01/21(月) 01:05:47.03 ID:amsvSgo0
「もうやめて!!」
―嘘だろ・・・
「やめてください!!」
―なんで・・・
「いやぁあああああああ!!」
「やめろぉおおおお!!」
気づけば叫んでいた。
広めの部屋の真ん中に男が立っていた。
右手に雑魚を掴み、持ち上げたままこっちを見てくる。
膝には女幹部がすがりついている。
周りには雑魚たちの体が横たわっていた。
「あぁ?なんだお前?」
真ん中に立っている男は不機嫌そうに雑魚を投げ捨てて言った。
「赤さん!!逃げてください!!」
「うるせぇよ!!」
男は腕を一振りして、膝にまとわりつく女幹部を弾き飛ばした。
ゴンッ
女幹部は壁に打ち付けられ、意識を失う。
「てめぇ・・・よくもみんなを・・・」
「ん?おぉ。誰かと思えば、ここのエリアの正義の味方さんですか。」
嫌みったらしく笑いながら、俺に近づいてくる。
「かわりに悪者やっつけたんだ。なにキレてんだよ?」
限界だった。
「ふざけんじゃねぇ!!」
俺は殴りかかった。