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 『 School flaw 』 著:クレイ・G

 第一話 強制参戦? 




 俺は今夢を見ている。

とてつもなくなつかしく、とてつもなく切ない夢を。

 それは八年前、まだ自分が周りとは違う特別な人間だと知らずに、無邪気にいられた時の夢だった。

そのころ自分には仲のいい一つ年上で外国人の女の子の友達がいた。

その子はいつも自分の事を遊びに誘いに来てくれた。

俺はそれが嬉しかった。

俺はその子とは毎日、日が暮れるまで遊びまわったものだった。

遊ぶとき先頭に立つのはいつも俺で、内気な性格だったその女の子はいつも俺の後ろを黙って、けど楽しそうについてきてたっけ…。

女の子は俺のことを”サイチャン”と呼び慕ってくれた。

俺もその女の子の事が大好きだった。

俺はそんな二人の関係がいつまでも続くと信じて疑わなかった。

 しかし、ある事件が俺と女の子の関係を崩してしまった。

交通事故であったらしい。

俺はその時の記憶が曖昧だから何があったのかよく分からない。

覚えているのはその女の子が泣きじゃくりながら俺の名前を呼んでいる姿だった。

その前に何があったのか分からない。

ただ、

「サイチャン!サイチャン!!しっかりして!!サイチャン!!」

俺の名を呼び続ける金色の髪の女の子の声で俺は目を覚ました。

顔を涙でクシャクシャにして、俺の名前を呼び続ける女の子。

 しかし俺はそれに答えることができない。

声が出せない。

悔しかった。

ただ一言返事をすることさえできない、それがとてつもなく悔しかった。

しかしそれより悔しかったのが俺がこの女の子を泣かせてしまっているという事実だった。

なんで彼女が泣いているかはわからなっかた。

 女の子にはいつも笑っていてほしかった。

 俺は女の子の笑っている顔が好きだった。

 視線をおとしてよく見てみると女の子の服が血で汚れていた。

大丈夫かよ…。

心配になる。

彼女は昔からよく怪我をしていた。

そのくせ、彼女はいくら自分が怪我をしていてもほかの人になにかあるとそちらを心配する癖があった。

人が傷ついているのを見ていることができないタイプの人間だった。

俺は女の子が何処を怪我をしたのか確かめようとしたとき、女の子からこんな言葉が紡ぎだされた。

「しっかりして!!サイチャン!!お腹と腕からこんなに血が出てる…怪我何とかしないと…サイチャン!!サイチャン!!!
 しっかりして!!サイチャン!」

 最初女の子が何を言っているのか分からなかった。

頭が回らない。

言葉の意味が分からない。

何を言ってるんだ?怪我をしてるのは女の子の方ではないのか?俺はどこも怪我してないしどこも痛くないのに…どうしてそんなこと言うんだ?

本当に言っていることの意味が分からない。

ただ、あるのは腹部と腕がやけに熱いのとそこからだんだん体中の熱が抜けていく感覚だけだ。

しかし次の瞬間その意味を文字どうり”痛いほど”理解できた。

突然体中に激しい痛みが押し寄せる。

あまりの痛みに体がはねる。

「あがっ!!!」

あまりの痛みに情けない悲鳴が上がる。

混乱を起こしていた脳が正常な状態に戻りはじめたのだろう。

体中の感覚が一気に押し寄せる。

 あまりの痛みに頭がおかしくなりそうになる。

しかしそれもまた湧き上がる痛みのおかげで正気に戻る。

いっその事気がふれてしまったほうが楽になれるかもしれない。

しかしそんなことできいるはずない。

痛みで狂おうにもその痛みでまた正気に引き戻される。

腹部から背中に走る痛み。見てみると腹部は赤く染まっていた。

なるほど怪我だ。しかも半端な怪我ではない。

おそらく最初に感じていた熱が抜けていくような感覚は血が抜けていく感覚だったのだろう。

ちょっとだけ気が楽になった。

まだ自分が生きていると確認できたから、まだこの痛みがあるうちは女の子と一緒にいられる。

「サイチャン!!!大丈夫!?サイチャン!!!!!……ごめんね…私のせいでこんなことになっちゃって………本当にごめん…」

 なんで君が謝る事あるんだ?まだ、まだ大丈夫だから。

 俺は女の子の名前を呼ぶ。

今自分が出せるぎりぎりの消え入りそうな、情けない声で、

「大…丈夫。大丈…夫だから。泣かないで…___ねぇちゃん。俺はどこも悪くないから…心配…ないから。
 どこも痛くないから…___ねぇちゃんは…悪くない…から…泣かない…で」 

…何でだろう。

あの女の子の名前が思い出せない。

あんなに毎日のように遊んで毎日のように名前を呼んでいた女の子の名を…。
大切な人の名を…初恋の人の名を…。

思い出せない…。

 何でなんだろう。

何で思い出せないのか。

信じられない。

「ウソッ…!だってこんなに血が出てるもん!痛くないわけないもん!!どこも痛くないなんて嘘 だもん!!」

女の子は涙を流しながらさけび続ける。

「違うの…違うんだよぅ…悪いのは…悪いのは私なの…」

女の子の目にはさっきよりも大粒の涙が止めどなく流れていく。

ただぽろぽろと、

「私が…私が悪いの…私が道路に飛び出したりするから…。サイチャンが危ないって言ったのに… それなのに…」

 その一言で今の状況を思い出す。

周りをよく見てみると大破した車が俺の目の前で炎を上げて燃えてる。

それも俺が横たわっている直線状にタイヤのブレーキ跡がくっきり残っていた。

俺は女の子のかわりに車に轢かれた。

確かに轢かれたのだ。

しかし気なることが一つある。

もう一度、まわりを見渡してみる、車がガードレールに突っ込んだような形跡はない、なのに横転して車ではない形になって炎を上げ燃えている、
はたして人一人、しかも子供を轢いただけで車がここまで大破するものだろうか…。

なぜだ。

しかもこれほどの事故ならば俺自体死んでいてもまったくおかしくない状況だ。

 しかし俺にはここまでが限界だった。

段々意識が遠のいてきた。

意識が完全になくなる前にもう一回女の子の顔を見る。

泣いている。

大粒の涙をぽろぽろと流しながら。

その涙に濡れて真っ赤になった目と、風に揺れる金髪が印象的だった。

しかし、俺には彼女に声をかけるほどの余力はのこされていなかった。

段々意識が遠のいていていく。

少しづつ視界がせまくなる。

彼女は何かこちらに向かって懸命に叫んでいるが、うまく聞き取ることができない。

狭まる視界の中で俺は彼女の青い瞳をみつめ続ける。

 しかしここで思考が止まる。

もう限界だった。

今までそこにあったかすかな光は消えうせ不意に闇が意識を支配する。

目の前に夜が訪れたようにだんだん真っ暗になっていく。

もう…何も考えられない…………………………


「お…!大……か!?…供が血だら………れて……!!だ………を!」


遠のく意識の中でよく聞き取れない声だけが聞こえた。

どうやら助るようだ。

一気に緊張感がほどけていく。

俺の意識は一度ゆっくりと暗闇の中へ落ちていった。



















 次は病院の白いベッドの上で横たわっている場面から始まっていた。

俺は交通事故で病院に運ばれぎりぎりのところで一命取り留めをたらしい。

ベッドの上はひたすら暇でつまらなっかた。

いつも一人で話し相手が一人もいなっかった。

俺はあの女の子がお見舞いに来てくれるのではないかと期待を持ったりしたものだが結局彼女がこの病院に来る事はなかった。

最初はきっと来てくれると淡い希望を持ったりしてみたものだがその希望もいつか消えていった。

 しばらくすると刑事を名乗る男が何度か訪れて来ることがあった。

聞かれることはもちろん事故のことについてだ。

警察もやはりあの車の大破の仕方はおかしいと考えたようだった。

誰が見立ててもあの壊れ方はおかしかった。

まるで爆弾でも使って吹き飛ばしたような壊れ方だ。

子供ではまずあのようなことはできないだろう。

魔法でも使わないかぎり…






 結局女の子が面会に来ることはなかった。

ある日母親がいつものように俺のもとにやってきて俺にこんなことを告げた。

「この病院を退院したら、お引越しする事にになったわよ。」

突然。

本当に突然のことだった。

俺は引越しを拒んだ。

引越しなんてしたくなかった。

俺はこの町が大好きだった。

この町でやりたい遊びもいっぱいあったし、何より大好きなあの女の子と離れるのが嫌だった。

「何でだよ!!そんなの嫌だよ!!僕は引越しなんてしたくない!!」

 俺は必死に反対した。

どうしてもこの町を離れたくなかった。

その事を両親に必死に伝えた。

しかし俺の意見は却下された。

親からしてみれば、俺の反対意見なんか所詮子供のわがままにしかすぎなかったのだろう。

  それにどうやら両親たちに対する周りからの風当たりがかなり強かったらしい。

 あれだけの交通事故に巻き込まれておきながら生きている子供の親、連日家にはマスコミが押しかけ、最終的に病院にも押しかけてくるようになった。

結局、俺は退院と同時にこの町を去ることになった。

 俺はこの町から居なくなる前にどうしてもあの女の子に会いたかった。

会ってお別れを言わなければならない、そう思った。

 あの女の子には絶対言わなければならないそう思っていた。

しかし、女の子はいくら待っても来る事はない。

 寂しい。

 





 とうとう退院の日が来た。

 俺は退院するのが嫌だった。

退院すれば引越しをしなければならない。

引越しをすれば女の子に会えなくなる。

嫌だった。

女の子に会えなくなる苦痛だった。

しかも女の子に”さようなら”さえも言えていない。

悔しかった。

しかしどうしようもなかった。

あの子の元に行くこともできなかったし。

あの子が会いに来てくれることもなかった。

 そして俺はとうとう何事もなく退院を向かえた。

 もうあの子は来る事はない…

 俺はあきらめて両親の車に乗ろうとしたそのとき、ふと気づいた。

何か聞こえた。

後ろのほうから声がした。

最初のうちはよく聞こえなかった。
 
 しかしだんだんよく聞こえてくる。

 それはよく知った声だった。

だんだんはっきり聞こえてくる。

聞こえてくればくるほど胸が高鳴る。

俺の名を呼ぶ、ここしばらく聞いていなかった、しかし聞きなれた声。

自分を呼ぶ声…

「待って…待ってよ!!サイチャン!!」

俺はゆっくりと振り返る。

目の前には今までいくら待っても現れることのなかったあの少女の姿があった。

 息遣いが荒く、額には汗がにじんでいた。

ゆっくりと息を整える。

 不意にガバッという音ともに俺の体に衝撃が走る。

気づくと、女の子が俺の胸にいた。

心臓、トクンとなった。

 そしてあっけにとられているうちにもう一つの衝撃が俺の心を揺さぶった。

 唇に触れるものがある。

最初は何か分からなかった。

気が動転している。

思考が停まる。

段々落ち着いてきて冷静になってきたとたん、俺はそれが何であるか理解した。

女の子の唇。

それが俺の唇に触れていた。

その時初めて自分が女の子とキスをしていると理解した。

それはあまりにも幼い、触れ合うだけのかるい行為だった。

しかしまだ幼かった俺には十分ショックな出来事だった。

そんなに長い時間触れ合っているわけではなかったか俺にはかなり長い時間に感じられた。

自分の頬が熱を帯びていくのが分かる。

俺があっけにとられていると、女の子は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにでこう言った。

「サイチャン、私のファーストキスの人なんだから、ちゃんとせきにん取ってくんなきゃ嫌だよ…」

俺は最初、何を言われているのか分からなかった。

しかし彼女の言葉一言一言が俺の頭をクリアーにしていく。

「だからサイチャン…大きくなったら、一人でここに来れるくらい大きくなったら…またここに帰 ってきて…。」

女の子は顔を真っ赤にしながらそして不安そうにうつむきながらこちの様子をうかがっている。

 俺は微笑むと力強く言う。

「もちろん!!!約束したよ!!そっちこそ忘れんなよ!!!!」

女の子は、はっと顔を上げ、嬉しそうに微笑むと強く頷いた。

「うん!!絶対に!!」

今も覚えている。

あの少女のうれしそうな笑顔を…



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