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1話.


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 例えば家出。
 世の中にはプチ家出なんて迷惑な話だってある。
 しかし変な言葉だが本気の家出だってある。例えば私。
 家族関係が最悪だなんて事になったら、家を飛び出したいと思うのが道理だろう。現に私は有言実行まで行っている。
 しかし家出なんてものは正直博打でしかないのも一つある。家出をしたとしても行く宛てなんてないだろう。友人の家に迷惑を掛けに行くか、祖父母の家に行って強制送還される。これならまだ可愛い物だ。だが、世の中には臓器を売ったり、性処理としてなど体を売ってまで住みかを見つけなければならない。だからこそ、どんな事があろうとも学業を終えてから就職して、初めて家を出るのが正しい行動ではあるのだろう。
 まあ例外もあるだろう、その保護者が悪人だったりとか。
 しかし言うまでもなく私は馬鹿だろう。学業も終えず、家出なんて事をしたのだ。一歩間違えれば、もう死んでいて当然な話で、言ってしまえば、こんな生活が五体満足出来ているのが奇跡としか言いようがない。
 私は高校卒業する前に家出しているので、高卒すら持っていない。就職なんてものも無理だろう。良くてネカフェ難民だっただろうという想像が頭をよぎる。

「よく分かったわね」
「ねーちゃんの事なら何でも分かるよ」
「そう、じゃあね」
 私は勢いよく扉を閉めるが、すぐさまチャイムが連続で鳴るので、仕方がなしにチェーンを掛けたまま少しだけ開けて会話だけでもすることにした。
「何で来たのよ」
「ねーちゃんといっしょー」
 家出して着やがったようで、しかも私の家まで見つけるなんて迷惑過ぎる話だ。
 しかしこのまま外に出しておくのもあれなので、結局は部屋に招き入れる結果になってしまった。

「で」
「で?」
「何で来たのよ」
「家出したから」
「ハァー……」
 後で非通知で実家に電話でもするか悩んでいると、招かざる客は部屋をうろつく。
「ほら、話は終わってないからそこ座りな」
 私は床を指差し、正座しろと言う意味合いも込めたのに、何故か指にくっ付いてしまう距離で座る。
「もう少し離れなさい」
「やだ」
「追い出すわよ」
「それもやだ」
 何で私が家出した原因の一つが来てしまうのだろうか、私は頭痛がしたような感じに陥る。
「あーもう、じゃあそこでいいから私の質問に答えなさい」
「はーい」
「どうして家出したのかしら」
「ねーちゃんがいなくなったから」
 私はこの子がいるから家出したってのに……。
「私がいなくなったからどうだって言うの」
 聞くまでもない事を聞く。
「ねーちゃんの事好きだから」
 それが邪魔だったってのに。でもこんな時でも、私が怒る様な事はしないはずだった。つまり別の理由があるはずだ。
「本当は?」
「勘当された」
「勘当ね……、何やらかしたのよ」
「新卒で就職できなかった」
 現代において就職氷河期と呼ばれる物があり、就職しにくい現場があるのだが、職種を選ばなければ大手じゃなくとも、中小企業くらいならいけるはずだが、あのクソ親父なら大手以外を認めず、こんなことをやりかねない。
「じゃあどうやって此処を見つけたのよ」
 家出してから実家に連絡なんて教えた事もないし、携帯電話だって何処かの川に捨てて新しいものを買った。此処を知っているのは九十九くらいしかいないはずだ。しかも私と九十九は同じ高校だったが、この子は全く違う場所だし、面識もさせた記憶もない。
「世の中には探偵っていう職業があってだね」
「へー、後でどこのどいつか教えてくれない」
 探偵如きに見つかるなんて、探偵業法が施行される前なら逆に訴えてやれたつーのに、ストーカーとかで。しかし今からでも文句くらいは言いに行ってやろうと思い聞いてみると、あっさりと口を割った。
 私を見つけたので、何も考えていないのだろう。
「まあいいわ、ところで何も持っていないようだけど、これからどうするのよ」
「え?ねーちゃんと一緒に住むよ?」
 何当たり前のこと聞いてんのさ、みたいな顔をしているのが腹立たしい。
「あんたねぇ、ここは私の家よ? 今日くらいは泊めてあげてもいいけど、それ以降面倒は見ないわよ。あんたが悪いんだし」
 まあクソ親父が七十%くらい悪いが、就職できないのが悪い。それに私はこの子が好きではなく、むしろ邪魔な類だ。
「なんでー、いいじゃんいいじゃん」
「別にいてもいいわよ、強制退去してもらうだけだから」
 そういうと泣きだした。
 だからこの子が嫌いなんだ。でも防音になっているといえど、私には五月蠅いものでしかない。
「だーもう分かったわよ」
「ほんと!?」
 嘘泣きかの様に直ぐに顔を笑顔に戻していた。やっぱやめようかな。
「とりあえず、部屋も空いてるしそこにいていいわよ」
「やった!」
「ただし」
 私は念を入れるように言う。
「あくまで家賃がないみたいなもので、食費とかは自分で出しなさい。バイトくらい出来るでしょ」
「……分かったよ」
 これでもかなり譲歩してやったのに、まだ物足りないと言いたげだった。やっぱり外に蹴り飛ばすか。
「とりあえずそこの部屋使いなさい。毛布だけなら出してあげるわ」
 来客用の布団なんて用意していないので、冬用の毛布を貸してやることにした。
「というかごはん食べてるの?」
「コンビニで買ってるよ」
 どうやら金は持っているようだ。まあ勘当されてから探偵雇ったようだし、当たり前か。
「じゃあもう遅いし寝なさい」
 私は邪魔者をさっさと寝かせようとする。
「待って」
 無理やり部屋に押し込んだ私を呼び止める。
「何?」
「えっとね、一緒に寝ない?」
「寝ない」
 そう言ってやはり隔離するかのように押し込んで閉める。外に鍵があったら閉めているところだ。
 私も相手をしていたら眠くなったので寝る事にした。