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6話

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 例えば今までの仮定を否定してみる。
 今まで「それ」を人間という生命の形をした存在として仮定して考えていた。
 今回はそれを否定し、全く別の存在として扱い考える事にする。
 つまりは人間としての大きさや、質量を別のものと仮定する。物理法則を全て無視するのは次の機会にするとしよう。

 まず最初に「それ」の情報を整理してみよう。
 壹、「それ」は一度も視界に入れて見て、確認した事がないので、大きさと形は一切不明である。
 貮、「それ」は背中から声を必ず掛けてくる。
 參、「それ」は私と会話出来ている。つまりは「ヒト」としての言葉が使える。
 肆、「それ」は私より高い声を出しており、性別で言えば女性という仮定が有力である。
 伍、「それ」は家から離れても付いてくる事が出来る。
 睦、「それ」は移動中の音が一切無い。
 漆、「それ」は私の近くに他人がいる時は一切発言をしない。
 捌、「それ」は他人も見る事が不可である。
 玖、「それ」は夜になると活発に発言してくる。
 拾、「それ」は食事をしていない。
 こんなところだろうか。
 それでは仮定を開始する。
 まず「ヒト」である仮定を無くしたことから、いくらでも大きさの仮定を変化出来る。大きさは私の後ろに常駐出来る事から、最大で私の部屋に収まるくらいだろう。高さは三米以内、幅は仮定しにくく、移動も出来る事から最大で一米あれば十分だろうか、最小で言えば須臾以下だろうと考えられる。だが、流石にここまで小さいのは仮定しかねる。何故なら「それ」の言葉は明らかに鼓膜で聞き取っているのだ。テレパシーでも使わない限り、そんな小さいものの音なんて拾う事が出来ないだろう。
 次に何故背中からなのかという点。ただ単に姿を見せたくないだけなのだろうか。それ以前に「それ」は背中にどのように移動しているのかという事を考える。もし「それ」が本当に極少の小ささで、背中にひっついているのだろうか。小さいのであれば重さは確かに感じる事も無く、後から声を掛ける事も可能であろう。そして続けて「ヒト」としての言葉が聞こえる点。これはかなり現実離れしているが、宇宙人なのだろうかも知れない。宇宙人なら声を変える技術だってあるだろう。
 ……まあ流石にこれは無いとして次だ。
 声は女性と決めつけてしまうのもあれだが、確かに高い声で、男性には出せない高さである。もし男性だと仮定するならば、声変わりをしていないか、子供であるとも言える。と、普段は仮定するが、今回は「ヒト」以外である。これも宇宙人……なんて事は言えず、全く見当もつかない。
 次に纏めて言ってしまうが、「それ」は私がどこに行こうが、一人きりになってしまえば、話しかけてくる。これは「それ」を私しか確認する事が出来ない為、「それ」が他人から私が変な人に思われないようにと思っての行動なのだろうか? それなら外出時は大人しく留守番でもしてほしいものである。そして移動は家にいる時と同様音が聞こえない。背中にべったり付いているのであれば、浮いていない限り足音が多少聞こえるはずだ。確かに屋外なら他の人の足音などが邪魔をして聞こえないかも知れないが、屋内であれば聞こえるはずなので、これは浮いているのか、先ほど仮定した、背中にひっついているかのどちらかだと仮定する。
 次に夜になると活発に声を掛けてくる。まあ私としては夜にテレビを見て一緒に会話する相手というのはいいものだと思うのだが、これも疑問でもある。朝よりは夜の方が頻繁に声を掛けてくる回数が増えるというのも、何か訳があるのか、それとも私に声を掛けるには何か条件でもあるのだろうか?
 最後に食事ついて、「それ」は食事を一切取らずに存在を確立している。生命というのは何かしら糧がないと存在を維持出来ないものである。それを考えれば「それ」は食事以外の何かで糧を作っているのかも知れない。

「ふぅ」
 私は一口分残っていたコーヒーを口に含み飲み干し、片付ける為に立ちあがる。
「ねぇ」
 今回も「それ」は何も発てずに声だけを掛けてくる。
「何?」
 私はキッチンでコップに付いたコーヒーの後をスポンジで擦り落としながら答える。
「楽しい?」
 ある意味難しい質問をして来る。
「普通」
 いつものようにあしらう。
「私との会話は?」
「楽しいわよ」