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5話


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 例えば日常。
 例えば今日。
 例えば今この瞬間。
 エアコンの冷房を常時付けた部屋は涼しいを通り越し、寒いと呼べる程だ。
 エアコンのリモコンを見ると、設定が二十五℃とかなり低い設定で、風速も中になっていた。どおりで寒い訳である。
 私はリモコンを弄り、二十八℃に上げ、風速を弱に落とす。この部屋はそれほど広くはないので、これで十分である。しかし自動的に切るタイマーは使わない。
 外では蝉がそれほど五月蠅くない鳴き声を鳴らし、その蝉を捕まえようと童子達が駆け回る。いくら高級マンション周辺と言えど、こういう子達がいるのは何かと風流である。ところで最近の蝉は人間が近づいても全く逃げもしないそうだ。まあ捕まると分かって、無駄な力も使いたくないのだろうかも知れない。一週間近くの命だけど。
 私はこの蝉捕りという事をした事がない。正確には虫を捕りに行くなんて事はした事がないので、多少憧れを持っている。私はあんなところに生まれたばっかりに、娯楽などはかなり制限されていた。その中でも虫捕りなんて物は、怪我でもしたら駄目という理由でさせて貰う事が出来なかった。学校も私学の良いとこで、そんな野蛮な真似なんて思われて、一緒にする相手もいなかったからだ。
 とは言っても、この歳になってしまうと、流石にそうははしゃげない訳だ。みっともない訳でもあるし、体力的にも自信はない。まあこの話は置いておこう。
 ともかく私がこの部屋の窓から外を見ても日々大差もなく、毎日が同じ日を過ごしているように感じられる。
 そりゃ毎日株の値は変わるが、それでもやってるのは株の売買という単純な事だけだ。他にも買っている株などの情報も収集したりするが、それは毎日そこまで色々あるわけでもない。毎週でも大ヒット商品でも出れば別の話だが、そんな事もあり得る訳はない。
「とは言ってもなー」
「そうは言ってもねー」
「何かしたい事でもある?」
 私に話しかける事しか出来ないはずの「それ」に問いかける。
「それは私がしたい事?」
「そうそう」
「うーん」
 悩んだ「それ」の声だけが聞こえる。実際に悩んでいるのかは相変わらず確認は出来ない訳だが。
「寝たいかな」
「寝れないの?」
「ずっとね」
 ふむ、どうやら寝る事は出来ない様だ。
「でも消える事なら出来るよ」
 消えれるそうだ。これは訳が分からない。
「じゃあ代わりに私が寝るわ」
 そう言って「それ」の代わりに寝ようとする。別に私が寝ても「それ」が睡眠出来ないのは説明は不必要だろう。
「ああっ、待ってよ」
 ちょっと涙目の様な声で声を掛けてくる。
 しかし私は好きな時間に寝るので、このまま本当に寝てしまう事にした。

 例えば、何かも良く分からない「それ」に話しかけている自分を馬鹿だと思った時。