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8話


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 星光(シングァン)皇子は、自室で椅子にもたれかかり、天井を

仰ぎ見ていた。目の中が異物でも入っているかのようにゴロゴロする。

星光は眉間を指でもみほぐした。この間刺客に襲われた一件以来、夜眠れない

のだ。目を閉じようとすると必ず襲ってくる恐怖。刺客の息遣い、

肺を圧迫する刺客の体重─────全てがとても鮮明に蘇るのだ。

 盾達は相変わらず彼を守っていた。特に蒼豹(ツァンバオ)はあの一件

以来、一日の大半を星光の警護にあてている。たとえ目に見えずとも

近くに蒼豹の気配を感じるのだ。星光は、彼女が何故倒れないのか謎だった。




 紅兎(ホントゥ)は、星光の警護の交代に向かう途中、ふと仲間の気配を

感じ立ち止まった。宮殿を吹き抜ける蒼い疾風・・・。会って間もないが、

間違えることはない。紅兎は囁きを風に乗せて話しかけた。

 『おい、蒼豹、ちょっと降りて来いよ』気配は少し迷うように揺らめくと、

すとんと降りてきた。眉間に皺をよせて紅兎を見る。

 「用があるなら手短に頼む。私は忙しい。」紅兎は腕を組み、片眉を

くいっと上げて蒼豹を見た。「その多忙さの原因の話をしようとしてるんだ」

「・・・何?」

 「はっきり言うぞ、お前、働きすぎだ。過労死するぞ。紺鮫(ガンジャオ)

の番のときも出てるだろう。奴はごまかせても俺は騙せないぞ。」

「大きなお世話。自己管理は徹底している。あなたに言われるまでもない」

 紅兎はイラついたように蒼豹を睨んだ。「いい加減にしろ。何のために

盾が三人も居ると思ってるんだ。そんなに仲間の仕事が信用できないのか」

 蒼豹は嘲るように口の端を吊り上げると、冷め切った口調で言った。

「同じお方にお仕えしているだけで仲間か。下らない。私は私の好きなように

やらせてもらう。殿下の警護に支障が出ない限り口を挟まないで貰おうか」

「なら何故俺の番のときは居ない?その間に休んでいるんだろうが、それは

俺を信用しているということじゃないのか?」

 蒼豹は嘲笑をますます深くして紅兎を見た。しかし、その目には怒りと

苛立ち、そして──────気のせいだろうか?─────微かに悲哀が浮かんでいる。

 「答える義理は無い。だがあなたの後学の為に言っておく。私が誰かを

信用することなど永劫有りえはしない。あなたの腕は買っているが信用など

していない。あなたが殿下を裏切らない保証など、万が一にも無いのだ」

 蒼豹は紅兎に背を向けた。もう話すことは無いということか。

紅兎は去ろうとする蒼豹の背中に声をかけた。

 「誰も信用していないと言ったな」蒼豹は足を止めた。「そうだ」

「ならお前、殿下さえも信用していないのか?」

 蒼豹は、ほんのわずかだけ振り向いた。「信用するしないではない」

彼女は言った。「私たちは、殿下の道具なのだ



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