弱々しく微笑んだ要に
吉祥が唇を噛んだ
「穏っ…行くぞ」
涙を堪えて要に背を向けた吉祥
要に向き合い小さく息ついた
「ばーか」
『うんっ…バカだよ…ねぇ、俺どうなるの…?』
「しばらく…封印っつーとこだ」
『なんで…』
要の言葉を遮って静かに
言葉を紡いだ
「俺も吉祥も…お前の息の根止めれるほど、強くねーよ」
『っ…穏…』
「じゃぁ…またな」
幾百、幾千の年月を超え
またいつか、もう一度
あの頃みたいに
三人で笑え合えてた
懐かしい日々を
願いながら
『ゴメンね…ありがと…』
----------。
『御前!今日も来るのー?』
『お、旦那!久しぶりだねー』
華やぐ町に着物を着崩し
腰に三本の刀を差した
男が一人
町の大通りを歩いていた
町人たちの声に手を上げて答えながら
津神屋へ戻る
『あ、御前!お帰りなさいまし!』
「吉祥は…?」
『旦那様でしたら母家に』
嗅ぎなれた煙草の煙をたより
いつもの部屋へ戻る
「変わりなかったか」
「あぁ、いつも通りだ」
「そうか…」
開け放たれた障子の外に広がる
突き抜ける青空
風に乗ってやってくる穏やかな夏の香り
季節はもうじき-夏-
「なぁ、吉祥」
「ん?」
「久しぶりに出かけねぇか?」
何もなかったように
空は晴れ渡っていた
【ごきげんよう】
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