あの月夜
あの涙
揺れる金糸…
後ろに浮かぶ下弦の月…
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桜鬼が現れてから
吉祥の様子がおかしい。
いつもなら店を閉じ、夕餉と風呂を済ませて
なんの色気もなく寝るって云う29歳にしちゃ
随分、枯れた生活をしている吉祥なのだが…
最近、酒を煽る姿をよく見る
それも月が出てる日に限り
部屋の前で、静かに呑んでる
「穏…要が生きてるそうだ」
「あぁ…桜鬼が言ってたな」
風呂上がりの俺には肌寒い
夜風に揺れる髪
「要が…帰ってくるんだ」
「おい…」
「また、三人で笑えるんだ…」
「吉祥…」
「ねぇ、穏…かなめ」
「吉祥っ!!」
ビクッと揺れる肩
その儚い背中に俺はとどめを刺した
「…アイツは…お前の愛した要じゃねぇっ!!俺とお前が葬ったっ!『月夜叉』なんだよ!!」
雲に隠れていた月が
再び顔を出し、静かに泣く
吉祥を照らした
「吉祥…俺はあの時から…離れねぇって決めたんだ。お前が答え出せ。要を…月夜叉をもう一度、狩るのか狩らないか」
虚ろな目をした吉祥の肩を掴み、視線を合わせた
しばらくの沈黙ののち
吉祥が俺の手を握った
「穏…一緒に死んでくれる?」
「…ガキの頃からこの歳まで一緒なんだ。今更だ。」
三人で笑ってたあの頃
「宮雅の御前様や」
「なんだよ、津神屋の若旦那」
どこで狂ったのか
「今日は付き合え。明日は店を休みにするから」
「久しぶりに俺に構えよ」
「調子に乗るな。……気がむいたらな」
いつか戻ると信じてた
「しばらく忙しくなるな」
「俺には丁度いいけど」
「浪人だからだろうが」
「あ。散歩できなくなる…」
たまには忙しいのも悪くない
【月が知ってる涙】
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