ドクン…
ドクン…
目の前で倒れた上総様に
焦りが増す
心臓が…やけに煩かった
----------
「夜影っ!水無月っ!」
「「はっ!!ここに」」
「夜影はそこの奴を捕らえておけ!水無月!医者を呼べ!!軍医でもいい!早く!」
部下二人をそれぞれ散らせ
急いで上総様の応急処置にあたった
「っ…弥助…」
「喋らないでくださいっ…傷に響きますからっ…」
傷が心臓ギリギリの位置を掠めている
布を割き、止血の葉を当てる
「弥助…お前の手は…っ…暖かいな…」
そう言って上総様は俺の手を握った
「今っ…医者が来ます…お気をっ…確かにっ…」
「弥助…」
「上総様っ!傷に響きますか…」
ふと上総様の顔を見ると
今までに見たことのない程
優しい顔をしていた
「あの雪の日…見る限り白の中…美しい椿が雪の中に咲いておった…紅に栄える死装束が痛くてな…ついつい…手折って来てしまったが…」
「かず、さ様…」
「俺の側で…また大輪の花を咲かせてくれた…弥助…主が仕えてくれたこと…幸せに思うぞ…」
「俺はっ…これからも上総様にしか尽くす事なんてっ…」
その瞬間、上総様の顔を見て
悟ってしまった…
この方はっ…もう助からない…
「…この戦乱は…しばし続くであろう…だが、決して…戦に染まるでないぞ…」
「はい…」
「最期をお前に看取って貰えるとはな…弥助…達者でな…」
「上総様もっ…ご武運をっ…」
俺がそう言い頭を下げると
ふっ…と聞こえ
上総様の息遣いが…静に消えた
しばらく俺は頭をあげる事が出来なかった
捨てた筈の涙が…止まらなかった
atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!
最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!