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-レイダ-

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 大路の喧騒に包まれて、路地裏では一人、また一人と地面に倒れていく。足刀が美しい弧を描き、パンクルックの少年が宙を舞いつつ首を刈る。その美しい姿は猛獣を想像させ、高速回転は足と連動して、敵の意識を立て続けに遠くへ追いやっていく。一陣の風が吹き抜けたかと思えば、首筋を、鳩尾を――そして後頭部を、勢いの良い蹴りが襲い掛かるのだ。
 カポエイラ、ブラジルの武術である。パンクルックの少年はイヤホンをつけ、まるでダンサーのように舞いながら敵を薙ぎ倒していく。音楽に合わせて修行を行う、カポエイラ使いの特徴だ。
「遅ェなあ……そんなんじゃ、師匠(メストリ)の教えを受けた俺に勝てねぇぜ?」
 楽しげに、心の底から戦いを嗜好する者の顔だ。ただ、高みを目指すことだけを目的に、這い上がってきた狼の眼だ。十人ほどいただろうか、既に大半は意識を奪われており、残る二人は恐怖に怯え、立ち竦んでいる。野生の常識を前にして、それに流されまいと必死なのだ。
 ――即ち、敗者は勝者に金銭を全て授ける。この界隈では負けなしの、灰狼のレイダと知らずにカツアゲを行った少年達は、まさにミイラ取りのミイラといったところか。
「レイダ、こっちはもう終わったよ~」
「ジェシカか。早かったな」
 背後からの声に、【敵】に背を向けるレイダ。
「うん。アンダーソンが頑張ってくれてさ」
「そうか。分け前を増やしてやらなきゃな……」
 と、レイダは苦笑する。完全に見下され、なけなしのブライドに火が付いた【敵】は、拳大の石を拾い、レイダに向かって投げ付けた。もちろん、負け犬のように醜い叫び声を上げなら……。
 石は勢いよくレイダに向かって飛んでいき、よもや当たるという、ギリギリの時。レイダは【願った】。
「俺がお前達の背後に立っていたら、面白いと思わないか?」
【敵】の後ろに、レイダはいた。願うことで、彼らの後ろへと回り込んだのだ。――それも、瞬間的に。
「バイバイ、また遊ぼうよ」
 二人まとめて蹴り飛ばした足で、地面に落ちている鞄をジェシカに向かって蹴り飛ばすと、レイダはお気に入りの音楽を口ずさみながら路地裏を去っていった――。