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日サンタと米サンタの入れ替わり

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これで俺は何度目のクリスマスを迎えるんだろう。この辺りに配属されて約100年……200年だっけ、まぁそれぐらいは経つのか。にしても、今の子どもは礼儀がなってない。礼儀作法が日本は正しいと聞いて、ここに配属させてもらったのに何だよ!!プレゼントリストはころころ変わるは、俺の姿を見ようと寝たふりしやがって!!最悪だ、まじで。ああ、本当さっさと故郷に帰りてぇ……いや、配属場所変わりてぇ。そんなとき、余裕ができたとか何とかいって、アメリカに配属された仲間が来た。

「YO!元気にやってるか?」
「……見りゃわかるだろ、見りゃ、疲れてるんだよ!」
「おーおー、そう怒るなって。僕たちは仲間だろ?」
「ああ……、八つ当たりしてすまなかった」
「でもどうしたんだい?随分やつれてる」
「ああ……、実はな……」

そうして俺は事の成り行きを話した。こいつは驚いた顔をしていた。そりゃそうだろう、ここまで悪い環境だったら驚いた顔して黙り込むのが普通だろう。そしてしばらくの沈黙が場を包む……。
こいつの顔はいつの間にか真剣な顔になっていて、遂に沈黙が破られた。

「今年だけ……配属場所交代するか?」
「え」
「だってイヤなんだろ?ここ」

確かにそう言ったのは俺だ。でも……

「いいのか?こことんでもなくえらい所だぞ?」
「いいんだよ、たまには優しさ、思いやり感じて来い」

こいつは一息つく間もなく、そう笑って答えた。

「だが……」
「あーっ、いいからさっさと行って来いっつうの!」

ど叱られた。タメ口で話してたが、こいつのほうが先輩だ。先輩の言うことには逆らえない。俺はしぶしぶ自分の蒔いた種に後悔しながら決意を固めた。

「……では行って来ます」
「おぅ、行って来い。楽しんでこいよ」

そして俺はこいつ――先輩を置いて日本を経った。

「ここがアメリカか……」

俺はびびった、いやまじで。どんだけ人がいるんだ。面積も日本の何十倍もありそうだ。こんなところで先輩は本当に楽しめていたのか?俺は不思議に思いつつ、ここのサンタたちのプレゼント工場に向かった。

「失礼します」

他のサンタたちの視線が俺に集まる。やばい、違う国に配属されているやつだとばれたのか……?そう思ったのもつかの間、皆もくもくと作業に戻っていった。よかった、ばれなかった……。
そうして俺も作業場に混じった。すぐそばに置いてあるリストを見ながら、プレゼントをラッピングしていく。長い沈黙が何日も、何日も続いた。ずっとその間プレゼントのラッピングをしていく。手が痛い。これのどこを楽しめと、と心の中で突っ込みをいれるぐらいだ。そうしていつの間にか時間は過ぎて、クリスマス・イブとなった。

重い荷物を持ち、俺は空を飛んで一軒目を訪れる。静かに煙突から下りて、飾りのたくさんついたクリスマスツリーのそばにプレゼントを置いていく。見る見るうちにツリーの周りはプレゼントだらけになった。最後の一個を置いて、下りてきた煙突のほうへ戻ろうとしたとき、何かが視界にはいった。

「……クッキー?」

そう、床に置かれた皿の上にクッキーが置かれてあった。その傍には牛乳が。

「ここのやつは優しいんだな。でも……まだわからない」

俺はいつの間にか人間不信になっていた。けれど、ここのやつが準備してくれたクッキーと牛乳は紛れもない思いやりと優しさだった。だから俺はそれらを頂き、2件目へと向かった。そう……知らなかった。

「なんだこれ……」

ここにも食べ物や飲み物が置いてあったのだ。3件目、4件目……ずっと訪れたが、ほとんどの家にそういうものが置いてあった。最後の家を出たときには、いつの間にか俺の目から涙が溢れていた。ああ、人間は俺や仲間を気遣ってくれてたんだ。気がつかなかった。俺のほほに川ができそうなぐらい俺は泣いた。声も上げずただ泣いた。優しさが、思いやりがないと勘違いしていた俺を後悔した。俺に優しさを、思いやりを感じて感動した。そうして静かにプレゼント工場から、アメリカから静かに俺は日本へ戻った。
アメリカへ、ひとつのメッセージを残して。

「ありがとう」