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カゲリとカガリの出会い


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――拙者には、無理だ。

ある国の城内で彼――いや、彼女はそう嘆いた。黒髪を無造作に束ね、白の和服姿、腰の帯には細長い鞘が納まっている。そんな彼女の名は、陰里カゲリ。暗.殺を主に生業とした忍びである。
カゲリの、今宵の任務はある国の姫の誘拐である。そして現在、遂行中なのだが――。彼女は同情してしまったのだ、これから誘拐する姫に。

それは数日前のこと、カゲリが城の詮索をしていた時だった。何を詮索していたかというと、城の警備、そしてこの城の部屋の配置だ。そして、姫の顔を拝むためでもあった。捕まらないかというともちろん、警護士に変装をしていたので誰も気がつくわけがない。
警備・間取りを確認し、姫の顔を拝めたのはもう夕暮れ時だった。カゲリは疲れたような、苦い微笑をし、姫の顔を確認する。

「……ぁ」

カゲリは思わず、声を漏らしてしまった。
魂が何処かにいってしまったかのような顔。紅い瞳には深い悲しみの色。しかも髪の毛は白の中に薄い灰色が混じっている。そして何より驚いたのは、周りが呼ぶ姫の名だった。

「忌姫(イミヒメ)様、早くお部屋にお戻りなされ」
「……ああ」

皮肉な名だった。それがとても可哀想で――。

それが同情の理由だった。あのときの姫の顔が忘れられなかった、カゲリの『初めての』手落ちだった。抱いてはならない感情――そう、忍びの郷も任務も捨てて、この姫と逃げるという思い。彼女はその思いと、郷への思いに押し潰され苦い表情を浮かべると、その後姫を静かに抱いて外へと抜け出した――。

翌朝、カゲリの目の前で姫はおきた。始めはぼうっとしていたが、やがて意識がはっきりとしてくると、カゲリの存在に気がつき、驚いた顔をした。

「お目覚めですか?姫」
「……」

彼女は無言のまま頷いた。そして、カゲリが事情を話すと姫は、とても嬉しそうに、けれどそれを抑えるかのように軽く微笑んだ。

「さて、名前がないと不便ですね。そして敬語というのも慣れぬものですね」
「……」
「とりあえず、敬語やめていいですか?」
「……ぁぁ」
「ふう、苦しかった。とりあえずお主の名は?」
「……忌(イミ)と言う」
「似合わぬな、主はそんなにもかわいいのに。どうだ、改名せぬか?」
「!!」
「ふふ……、何か望みの名はあるか?」
「……ない」
「そうか、ではカガリでどうだ?」
「……カガ、リ?」
「そうだ。お主の目は紅く、篝火の如く綺麗だ、だからカガリ」
「いい……名、カガリ」

彼女は、嬉しそうに呟いた。カゲリもそれを見てほっとする。

「では、行こうか。カガリ」
「……ぇ?」
「いろんなところへ行くんだ。様々な物を見ていこう」
「……はい!」

これが、カゲリとカガリの出会いだった。そして二人の旅の始まりだった。