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病院


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【護る病人はある言葉を護られる見舞い人に要求する】



クルー・アポト二ティーが目覚めたのは、戦いが終わってからちょうど1日がたった時。
「・・・・・・・・・・」
ゆっくりと、意識を覚醒した。
すると、
天井と壁の白がまず眼に入る。
そして次に、病院独特の臭いが、ツンと鼻にくる。
生きているからこその、感覚と感触。
……生きている。
何故、生きている?

私は死んだはずでは・・・・?

クルーはある病室の中で、そんなことをまず思った。
「・・・・彼は・・・・ファントはどうなったのでしょう・・・・それに、皆は・・・・」
彼の脳裏にはまるで走馬灯のように――次々と、仲間の顔が浮かんでいた。
愛すべき妹の笑顔。
口の悪い親友の怒鳴り顔。
それに――彼女の悲しむ顔。

それは、彼が一度人生を終えたときに、最後に見た光景。

「・・・・ティー」
自然と口から出た言葉は、思いのほか小さくて――
と。

「ん? 呼んだ?」

「――!?」
声のした方向を向けば案の定、茶髪を下ろしたティーが居たので、クルーは反射的に上体を起き上がらせる――が、腹に残るファントからの剣傷が痛み、思わず腹を押さえて呻いた。
「ちょっとクルー、無理はしないでってば! いくら生命の珠の力でも、完全に治すことはまだできていないんだから」
「う・・・・せ、生命の珠・・・・?」
確か、と。
彼は回想を始める。
タイニーとマニが協力してファントに生命の唄を歌わせたことまでは、覚えている。
そこで自分が死んだことも。
その後。
コアにその影響で異常をきたした場合。
その生命の珠に、コアを元通りに直すことを願う――はずだった。
しかし今、彼女は。
「ティー、もしかして・・・・私を生き返らせることに生命の珠を使いましたか?」
「うん、そうだけど」
即答。
まるで当然のように。
「それなら、皆は・・・・! 一体、何が起こったのですか、私が暢気に寝ている間!」
彼は大きな声で、焦燥の表情でティーに聞く。

「クルー、そんなに大声で言わなくても聞こえてるから――大丈夫、双方の世界も皆も、無事。まったくもって平和だよ、本当に、怖いくらい・・・・」

今までの戦いが嘘みたいに、此処は希望で溢れてる。

ティーはそして、クルーの黒髪を優しく撫でる。
「だけど、さ・・・・クルーの死と引き換えに世界が救われるのは、凄く嫌だったよ」
ティーは俯いて、静かに語り始める。
「クルーがこの世からいなくなる代わりに、この世が平和になったら私は・・・・きっとこの世界をものすごく憎く思う。アブソーやチェインが存在しているこの世界を好きなはずなのに・・・・!」
同時に、ティーの体は小さく震えだした――ポツリと、真っ白なシーツに染みが一点。二点。
クルーはそれをただ黙って見つめながら、歯がゆい気持ちになった。もしも傷が治っていたら、すぐさま彼は行動に移っていただろう。

――抱きしめたい。

紳士で冷静な彼は珍しく、今までに無いくらいに、強くそう想った。
「ティー、顔を上げてください」
あやす様に優しく声を掛けると――クルーは自分の髪を撫でていた白い手を取る。
「私は、病院の中のベットで、こうして横になっています。死んでいません。貴方の目の前に居ます。だから、泣かないで」
ティーはゆっくりと、どこかぎこちなく顔を上げて、真っ直ぐにクルーの眼を見つめて、
「なら、クルー、もう一度言ってよ」
「何をです?」
「・・・・あんたの思う、ロマンチックな場面で言った言葉!」
赤面しながら言うティーを訝しげに見てから、クルーはその例の言葉を思い出し、
「私は、一回言うだけで勇気の底を尽いたのですが・・・・」
「いいから言え!」
「・・・・まったく、貴方という人は・・・・」
呆れたように、しかしこの上なく幸福そうな表情で――彼は、微笑む。
「ティー、あいし――」

「クルー、いるか?」
突然現れたのは、うす紫色の髪を持つ青年。
クルーは思わず驚いて、青年を見つめた後「どうしたんです?」と問う。
「いや。リビーがどこに居るか聞きたかっただけなんだが、邪魔したようだな」
「気にしないでください――おそらく、リビーは公園に居ますよ」

「・・・・やはり、そこだと思うか」
自嘲気味に笑って「じゃあな」と一言のこし、青年は白い部屋から消えた。
そして二人は向かい合い。
可笑しいように、笑う。

「ティー、愛してる」
「うん、ありがとう、クルー」

彼女が聞いた、愛の告白。
彼が求めた、ある言葉。
ティーはただ、一言。

「愛してる」