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夜中


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【今は亡き赤を思いだすのは気ままな時の旅人】



――後に。
今後の世界の運命を大きく変えたとされる、重要な戦いが起こった日の翌日の夜中。
ベル・レンシーは一人、丘の上で夜空を見上げていた。
「・・・・さて、僕はどうするべきか」
そう呟く彼の首には――そう寒くもないのに、髪と眼と同じ色の緑色のマフラーが巻かれていた。
「今までしてきたように、また時を旅するのもいいんだよね。ケド・・・・」

『君』に出会ってしまったから。

手を地面につけて、ゆっくりと、立ち上がる。
黒い世界の中に、輝く町が見えた。
きっと世界の崩落を止めたから、だろうか――夜中だと言うのに、豪華な宴の用意のために生きる風船を膨らませていたり、名物の七色ジュースを作りおきしている妖精の姿が、ちらほら見える。
「ケド、こんな町は僕の世界じゃない」
自分の言ったことが可笑しかったのか、レンシーは軽く笑って、

「僕の世界の範囲なんて、時と空間も含めれば無限にだって存在する・・・・ケド、それでも、僕がこの短い間で見た世界はもっとずっと広く、そして――面白い」

ふふふ、と。
レンシーはまた笑って「全ては『君』に出逢ったから」と呟く。
「『君』はとても惨酷に、そして最悪に絶望を愛してたねぇ・・・・ケド、それだけじゃないんだね。『君』は人を愛すし、人に愛される・・・・そう、『理性』の方なら、ね」

だから、僕は『君』を救いたい。

そう小さな声で言ったレンシーの碧眼は、どこか決意に満ち溢れていて――
どうしようもなく、綺麗だった。
「『君』がもしも死んだら・・・・その力はあの世で誰か一人の魂に伝染する。そうやって、『君』の力は継がれていく・・・・だったら、僕が『本能』の覚醒を止めれば良い、ね」
まあ、その方法が分からないけどねぇ、と、のんびり言った。

そして。

レンシーは時を旅するために、力を使う。

レンシーは『君』を救うために、旅をする。
空中に向けた手が光り、大きな穴が、唐突にできる。
と。
「――何してるんです?」
背後から、少し高い少年の声。
「どうもこうも・・・・また時を気ままに旅しようと思って、ね」
レンシーは一度行きかけた足を戻して、振り返り――銀髪の少年を見据える。

「アブソー達は皆、もうホーリーハウスで寝てます。貴方も早く寝たらどうです?」
「そう言っている自分も寝ていないんじゃないかい?」
「僕は、『実操』の力で宴の用意を手伝ってるんですよ」
「へぇ、君まだ子供なのに・・・・まったく、人使いが荒いねぇ」
「自主的に、ですから」
短くそう答えて、銀髪の少年は訝しそうに、
「で、レンシー・・・・いつ、帰ってくるんです?」
「そんなの、分かんない、それに――」
ふふふ、と笑って、レンシーはキザっぽく答える。

「今の僕はベル・レンシーじゃない――時の旅人・ルベルだよ」

彼は、たまに『旅先』で使う偽名を口にすると、
颯爽と、穴の中へ消えていったのであった。


それ以来。
アブソー達は彼を見ていない。