そして、コアの内部では。
平和と期待と運命と――そして希望が、互いに螺旋していた。
平和と期待と運命と――そして希望が、互いに螺旋していた。
美しく咲いていた花は徐々に枯れて、唯の雑草と化していく中、チェインはディーバの腕を掴ん
だままで、
「――なあ、何か無いのかよ」と、言う。
「何がです?」
「お前が死ぬことなく、世界の崩壊を止める方法だよ」
チェインのそんな問いに、ディーバは微笑んで答える。
「無いですね」
即答。
僅かに抱いていた希望もそんな一言で破られて、チェインは深いため息を吐く。
――方法が無いからって諦めたら、あいつ等に会わす顔が無いしな・・・・。
と、チェインが心の中でぼやいていると、目の前の少女が突然。
だままで、
「――なあ、何か無いのかよ」と、言う。
「何がです?」
「お前が死ぬことなく、世界の崩壊を止める方法だよ」
チェインのそんな問いに、ディーバは微笑んで答える。
「無いですね」
即答。
僅かに抱いていた希望もそんな一言で破られて、チェインは深いため息を吐く。
――方法が無いからって諦めたら、あいつ等に会わす顔が無いしな・・・・。
と、チェインが心の中でぼやいていると、目の前の少女が突然。
「あ、だけど・・・・もしかしたら、可能かもしれない」
「ホントかっ!?」
するとチェインは、ディーバの両肩にそれぞれ手を置いて、真っ直ぐにディーバの目を見つめる。
「どうすればいいんだ!」
「え、あ・・・・ま、まず! 貴方、どうやってコアの中に入ったんです?」
ほのかに頬が朱に染まりつつも、ディーバは凛とした声で言う。
「ああ、これだよ。このリンゴに八妖精の力を込めたんだ」
チェインはそう言って、肩から手を話すと、懐からリンゴを取り出した。ディーバはそれを少し眺めた後、手に取って両手で包むように持つ。
「・・・・おい、何するんだ?」
「・・・・私の魔力を込めるんです」
すると同時に、少女の手は淡く光る。光りが消えても尚、リンゴは光を放っていた。
「これを、どうする?」
チェインが問う。
「――天秤に触れるように、立てかけて置くんです。そうすれば、私の代わりに魔力を天秤に注ぐはずですから私とアブソーは死なずに済みます。だけど、二つの世界の繋がりがおかしくなってしまうかもしれない」
そしてディーバは、「それでもいい?」とチェインに改めて訊いた。
彼は、小さく頷いて、
するとチェインは、ディーバの両肩にそれぞれ手を置いて、真っ直ぐにディーバの目を見つめる。
「どうすればいいんだ!」
「え、あ・・・・ま、まず! 貴方、どうやってコアの中に入ったんです?」
ほのかに頬が朱に染まりつつも、ディーバは凛とした声で言う。
「ああ、これだよ。このリンゴに八妖精の力を込めたんだ」
チェインはそう言って、肩から手を話すと、懐からリンゴを取り出した。ディーバはそれを少し眺めた後、手に取って両手で包むように持つ。
「・・・・おい、何するんだ?」
「・・・・私の魔力を込めるんです」
すると同時に、少女の手は淡く光る。光りが消えても尚、リンゴは光を放っていた。
「これを、どうする?」
チェインが問う。
「――天秤に触れるように、立てかけて置くんです。そうすれば、私の代わりに魔力を天秤に注ぐはずですから私とアブソーは死なずに済みます。だけど、二つの世界の繋がりがおかしくなってしまうかもしれない」
そしてディーバは、「それでもいい?」とチェインに改めて訊いた。
彼は、小さく頷いて、
「勿論だよ、親愛なる女神様」
キザっぽく笑って、言ったのだった。
+++
この気持ちは何だろう、と。
自分にずっと問い続けていた。
チェインさんといると、一刻一刻が楽しくなって。
チェインさんといると、一秒一秒が美しく見えて。
チェインさんといると、一秒一秒が美しく見えて。
この不思議は何だろう、と。
自分にずっと問い続けていた。
チェインさんが傷つくと、私は悲しくなって。
チェインさんが疵つくと、私は苦しくなって。
チェインさんが疵つくと、私は苦しくなって。
これは何だろう。
これは何だろう。
これは何だろう。
――そして、やっと。
これは、想いだと気付いたんだ。
アルター・チェインという人は、私にとって大きな存在なんだと。
理解して、解釈して。
理解して、解釈して。
ああ、そうなんですね、ノヴァ叔母さん。
確かにこれは、とても美しい感情だと思います。
私は、この想いの名前を、今なら自身と誇りを持って言えます。
だから。
時間はかかってしまったけど――。
だから。
時間はかかってしまったけど――。
私は今、幸せです。
+++
「――・・・・チェイン、さん?」
と。
聞きなれた、しかし、くすぐったいような声が聞こえて――チェインはまじまじと、少女の顔を見る。
聞きなれた、しかし、くすぐったいような声が聞こえて――チェインはまじまじと、少女の顔を見る。
黒い双眼。
ディーバの瞳から、強きな光が消えていて。
アブソーの瞳から、優しい光が溢れていて。
長い髪もすっかり短くなっていて――。
実際、アブソーがディーバになっていたのはとても短い時間だったかも知れないけれど、チェインはアブソーを懐かしく感じて、
「・・・・アブソーの人格に、戻ったのか?」
確かめるように、チェインは言う。
「そう、みたいです。だけど、何でチェインさんが此処に?」
そう問うのと同時に、アブソーは急に『本能』が裏に引っ込んだことを不可思議に思いながら、自分の髪を摘むように触る。
「まあ、色々とあってな・・・・とりあえず、ここから出るか」
「はい、そうですね・・・・ところでチェインさん、私が戻るまでの間に何かあったんですか?」
そんな問いに、チェインどこか言いずらそうにしながらも、
「・・・・分かったよ」と、前置きをしてから、今までディーバがやったことを大雑把に話し始めた。
アブソーの瞳から、優しい光が溢れていて。
長い髪もすっかり短くなっていて――。
実際、アブソーがディーバになっていたのはとても短い時間だったかも知れないけれど、チェインはアブソーを懐かしく感じて、
「・・・・アブソーの人格に、戻ったのか?」
確かめるように、チェインは言う。
「そう、みたいです。だけど、何でチェインさんが此処に?」
そう問うのと同時に、アブソーは急に『本能』が裏に引っ込んだことを不可思議に思いながら、自分の髪を摘むように触る。
「まあ、色々とあってな・・・・とりあえず、ここから出るか」
「はい、そうですね・・・・ところでチェインさん、私が戻るまでの間に何かあったんですか?」
そんな問いに、チェインどこか言いずらそうにしながらも、
「・・・・分かったよ」と、前置きをしてから、今までディーバがやったことを大雑把に話し始めた。
+++
――そして、幾分かの時。
話し終えたチェインは、疲れたようにため息を吐いた。
すると、
「何をしているのですか!」
案の定、アブソーは大声で叫ぶ。
「もしも・・・・もしもそれで世界がどこか可笑しくなってしまったら・・・・私は――」
すると、
「何をしているのですか!」
案の定、アブソーは大声で叫ぶ。
「もしも・・・・もしもそれで世界がどこか可笑しくなってしまったら・・・・私は――」
「生まれた意味が無い、とか言うんじゃねぇぞ?」
と言って、チェインは、頭をかきながら、
「あのよ、お前は『全ての生きるもの』に希望を与えるのが義務であり、使命なんだろ? だったら、その中にお前もいるんじゃないか?」
「・・・・どういうことですか」
アブソーが首をかしげて言うと、チェインは「つまりだな、」と言って。
「あのよ、お前は『全ての生きるもの』に希望を与えるのが義務であり、使命なんだろ? だったら、その中にお前もいるんじゃないか?」
「・・・・どういうことですか」
アブソーが首をかしげて言うと、チェインは「つまりだな、」と言って。
「アブソー、お前も『生きるもの』だったら、誰かしらに救われないといけない
――そのための、『騎士』だろ?」
と、言って。
チェインは自らを指差す。
すると、アブソーは目を伏せて、どこかきごちなく問う。
「・・・・あの、チェインさん。貴方が『騎士』だと言うんなら、どうして私を助けてくれるんですか?」
顔を上げて、アブソーは大きな目でチェインの顔を真っ直ぐに見つめる。
チェインは思わずその純粋な目から視線をずらし、顔を僅かに赤らめて、しかし、きっぱりと、ゆっくりと、
「・・・・本来なら、よ。か、帰った時に伝えるはず、だったんだけど、な・・・・・・」
そこで、小さく深呼吸。
そして、チェインは必死に、アブソーを見つめた。
チェインは自らを指差す。
すると、アブソーは目を伏せて、どこかきごちなく問う。
「・・・・あの、チェインさん。貴方が『騎士』だと言うんなら、どうして私を助けてくれるんですか?」
顔を上げて、アブソーは大きな目でチェインの顔を真っ直ぐに見つめる。
チェインは思わずその純粋な目から視線をずらし、顔を僅かに赤らめて、しかし、きっぱりと、ゆっくりと、
「・・・・本来なら、よ。か、帰った時に伝えるはず、だったんだけど、な・・・・・・」
そこで、小さく深呼吸。
そして、チェインは必死に、アブソーを見つめた。
女神の黒眼と騎士の碧眼が交差する。
「お、俺、さ・・・・お前が――」
刹那。
地面が割れた。
地面が割れた。
眼の交差が、同時に、無くなる。
枯れた花が、
渇いた土が、
渇いた土が、
地面に存在しているものが、割れて。
そしてそのまま――沈んでいく。
そしてそのまま――沈んでいく。
「な、何だよ、これ・・・・!」
チェインは突然の状況に困惑しつつも、すぐさまアブソーの傍に近寄り、
「早く逃げるぞ!」
と言って、少し乱暴にアブソーの腕を引っ張る――だが。
チェインは突然の状況に困惑しつつも、すぐさまアブソーの傍に近寄り、
「早く逃げるぞ!」
と言って、少し乱暴にアブソーの腕を引っ張る――だが。
アブソーは、動かない。
ディーバは、動かない。
ディーバは、動かない。
「・・・・私が、・・・・・やらなければいけないんです。そうしないと、世界は・・・・」
「けど、もう魔力を込めたリンゴは天秤に立てかけて置いた――なら、世界は崩壊なんてしないはずじゃねぇのかよ」
「きっとそれじゃ、駄目なんです。私じゃないと、いけないんです」
そんな言葉を紡ぐアブソーの眼は――どこか違和感のある雰囲気をかもちだしていて。
と。
再び割れた場所から、周りが引きずまれるように沈んでいく。
そしてその範囲は、もうすでに二人がいる場所まで侵食してきて――。
「きっと、リンゴにつめた魔力だけじゃ、足りなかったんです・・・・やっぱり私が直接・・・・!」
アブソーはそういい残して、今や岩場と化した地面を、どこかおぼつかない足取りで走っていく。
「な・・・・おい! 止めろアブソー・・・・っ!」
焦ったチェインは、その後を追うために足を一歩踏み出す、が。
その瞬間。
アブソーが、振り返り、
惑わすように、魅せるように、薄く笑う。
それは、まさに、希望の女神――ディーバの笑みで。
「けど、もう魔力を込めたリンゴは天秤に立てかけて置いた――なら、世界は崩壊なんてしないはずじゃねぇのかよ」
「きっとそれじゃ、駄目なんです。私じゃないと、いけないんです」
そんな言葉を紡ぐアブソーの眼は――どこか違和感のある雰囲気をかもちだしていて。
と。
再び割れた場所から、周りが引きずまれるように沈んでいく。
そしてその範囲は、もうすでに二人がいる場所まで侵食してきて――。
「きっと、リンゴにつめた魔力だけじゃ、足りなかったんです・・・・やっぱり私が直接・・・・!」
アブソーはそういい残して、今や岩場と化した地面を、どこかおぼつかない足取りで走っていく。
「な・・・・おい! 止めろアブソー・・・・っ!」
焦ったチェインは、その後を追うために足を一歩踏み出す、が。
その瞬間。
アブソーが、振り返り、
惑わすように、魅せるように、薄く笑う。
それは、まさに、希望の女神――ディーバの笑みで。
「希望が枯渇している」
と、言う。
そして、続ける。
そして、続ける。
「純潔なる私に、こんな絶望等は要らない。無垢なる己に、こんな悲愴感は入らない――
私にもっと笑顔と歓喜と喜びを・・・・!」
そうして、アブソーは、天秤へと足を進めた。
もしも。
ファント。
彼が絶望だけを追い求める絶望中毒者だとするならば。
ディーバ。
彼女が希望だけを追い求める希望中毒者だとするならば。
ファント。
彼が絶望だけを追い求める絶望中毒者だとするならば。
ディーバ。
彼女が希望だけを追い求める希望中毒者だとするならば。
時と場合によって、どちらも大して変わりもなく人を不幸にさせるのだろうと、その時チェインは思った。
「待てアブソー! その先に地面は――」
「・・・・え」
フワッ、と。
独特の浮かぶ感覚。
その先には先の見えない暗闇。
その先には不安にさせる黒色。
「待てアブソー! その先に地面は――」
「・・・・え」
フワッ、と。
独特の浮かぶ感覚。
その先には先の見えない暗闇。
その先には不安にさせる黒色。
嗚呼、落ちてしまう。
まだ希望は完成していないのに、と。
『希望』しか求めない彼女には最早、己やアブソーの身の危険についての興味は皆無で――。
と。
腕に確かな感触。
チェインがアブソーの細い腕を必死に掴んでいた。
「・・・・っ、待ってろ、よ」
「・・・・・・」
そして、時間もあまり経たない内に、アブソーは無事に、地面の上に立った。
「やっぱり、意識だけを本能化しても、思うようには動けないんですね。・・・・何故、助けたのです?」
「は、ま、まあそりゃあ・・・・た、大切な存在だから・・・・」
顔を真っ赤にして答えるチェインに、アブシーはため息をついて、
「・・・・そ、もう、いいです。あなた達にはほとほと呆れました――それじゃあ、私は大人しくしています」
『希望』しか求めない彼女には最早、己やアブソーの身の危険についての興味は皆無で――。
と。
腕に確かな感触。
チェインがアブソーの細い腕を必死に掴んでいた。
「・・・・っ、待ってろ、よ」
「・・・・・・」
そして、時間もあまり経たない内に、アブソーは無事に、地面の上に立った。
「やっぱり、意識だけを本能化しても、思うようには動けないんですね。・・・・何故、助けたのです?」
「は、ま、まあそりゃあ・・・・た、大切な存在だから・・・・」
顔を真っ赤にして答えるチェインに、アブシーはため息をついて、
「・・・・そ、もう、いいです。あなた達にはほとほと呆れました――それじゃあ、私は大人しくしています」
これ以上の希望を創ることは、もう無理そうですし。
と、言い残して。
最後に綺麗に笑って。
残ったのは、幼げな少女の眼。
「・・・・チェインさん? また私、意識が無くなってしまったんですが・・・・また何かあったんですか?」
「いや、何でもねぇ。そんなことよりも、早くここから出て――」
最後に綺麗に笑って。
残ったのは、幼げな少女の眼。
「・・・・チェインさん? また私、意識が無くなってしまったんですが・・・・また何かあったんですか?」
「いや、何でもねぇ。そんなことよりも、早くここから出て――」
言って、チェインが立ち上がろうとした瞬間。
彼が立っていた地面が、まるで謀ったように、崩れて、奈落へと落ちていく。
驚愕の表情のチェインと共に、落ちていく。
「チェインさん!」
アブソーが、手を伸ばす。
チェインは一瞬で、彼女が自分の体重を支えきれないと、判断して。
その手を、振り払い。
彼が立っていた地面が、まるで謀ったように、崩れて、奈落へと落ちていく。
驚愕の表情のチェインと共に、落ちていく。
「チェインさん!」
アブソーが、手を伸ばす。
チェインは一瞬で、彼女が自分の体重を支えきれないと、判断して。
その手を、振り払い。
「――――」
声には出さず、呟いて。
どこか、悲しそうに、悔やむように、しかしとびっきりの笑顔で。
どこか、悲しそうに、悔やむように、しかしとびっきりの笑顔で。
ああ、落ちる。
けどそれも良いか。
けどそれも良いか。
彼女のためなら――・・・・。
+++
「あのさ、これは一体どういうことかな? マニ」
「僕に聞いたって・・・・分かりませんよ。タイニー」
タイニーとマニ――二人の視線の先には、
「僕に聞いたって・・・・分かりませんよ。タイニー」
タイニーとマニ――二人の視線の先には、
眩いばかり光を放つコアがあった。
「どうして・・・・アブソー様とチェイン様が何かしたのでしょうか・・・・」
「さあね――だけど、この様子は決して悪いわけではなさそうだよ」
そんな意味深なレンシーの言葉に、眠っているクルーの傍にいたティーは、
「レンシー、何が言いたいの? この世界は、どうしちゃったの?」
どこか不安そうに、訊いた。
すると、レンシーは上――天井を見上げて、言う。
「消去法だよ。もしもアブソー達が失敗してたら世界はとっくの昔に地獄になってるはず。ケド、そうなってないってことは、世界のバランスは保たれたってこと・・・・」
「しかし、もしもバランスが保たれていたのなら、このコアの輝きは一体――」
未だに光り続けるコアを不思議そうに見ながら、エドワードが言うと、
「僕が唯一分からなかったのは、それだよエドワード。だけど、冷静に考えるとさ――世界のバランスが正常になった場合に、そのコアの状態は有り得ないんだよ」
そう言って、レンシーはどこか楽しそうな顔を、皆に向けて、
「レンシー、何が言いたいの? この世界は、どうしちゃったの?」
どこか不安そうに、訊いた。
すると、レンシーは上――天井を見上げて、言う。
「消去法だよ。もしもアブソー達が失敗してたら世界はとっくの昔に地獄になってるはず。ケド、そうなってないってことは、世界のバランスは保たれたってこと・・・・」
「しかし、もしもバランスが保たれていたのなら、このコアの輝きは一体――」
未だに光り続けるコアを不思議そうに見ながら、エドワードが言うと、
「僕が唯一分からなかったのは、それだよエドワード。だけど、冷静に考えるとさ――世界のバランスが正常になった場合に、そのコアの状態は有り得ないんだよ」
そう言って、レンシーはどこか楽しそうな顔を、皆に向けて、
「ならもう答はひとつしかないよ、それは――」
+++
そんな中。
コアの様子は一変していた。
枯れた花や乾いた土などは、もう無くて――。
コアの様子は一変していた。
枯れた花や乾いた土などは、もう無くて――。
「これで、終わったんでしょうか」
咲き乱れる花々をベットに横たわりながら、アブソーは言う。
「終わったはずだぜ、何もかも」
隣に同じように横たわるチェインは、そう返す。
そして二人は、お互いに顔を合わせて、同時に、笑って、
咲き乱れる花々をベットに横たわりながら、アブソーは言う。
「終わったはずだぜ、何もかも」
隣に同じように横たわるチェインは、そう返す。
そして二人は、お互いに顔を合わせて、同時に、笑って、
「平和だな」「平和ですね」
あの時。
「チェインさんっ――!」
と、アブソーが叫んだ時。
「チェインさんっ――!」
と、アブソーが叫んだ時。
突如、チェンが落ちた地面の裂け目から花が飛び出したのだ。
驚く暇も無く、チェインはその花の勢いで上に吹っ飛ばされた後、姿勢を整えて、地面に降り立った。何が起きた、とアブソーに問う前に、全ては終わっていた。
さきほどの光景が夢だったかのように、静かに、綺麗に、花は咲く。
さきほどの光景が夢だったかのように、静かに、綺麗に、花は咲く。
そして、今。
「――さっきのは、何だったんだろうな」
チェインは青空を見上げながら、隣に訊く。
「私にも、よく分かりません。だけど、世界の崩壊を止めることはできました」
「ああ、そうだな」
そして、静寂。
風邪のささやきだけが聞こえる。
と。
「そういえば、世界のどこが可笑しくなったのでしょうか」
「・・・・この様子だと、どこも変わってないように見える・・・・あ」
チェインは起き上がって、周りを見渡し――ある物を見つけた。
「・・・・?」
アブソーはそんな様子を不思議に思って、その先を追うように見る。
「――さっきのは、何だったんだろうな」
チェインは青空を見上げながら、隣に訊く。
「私にも、よく分かりません。だけど、世界の崩壊を止めることはできました」
「ああ、そうだな」
そして、静寂。
風邪のささやきだけが聞こえる。
と。
「そういえば、世界のどこが可笑しくなったのでしょうか」
「・・・・この様子だと、どこも変わってないように見える・・・・あ」
チェインは起き上がって、周りを見渡し――ある物を見つけた。
「・・・・?」
アブソーはそんな様子を不思議に思って、その先を追うように見る。
天秤についてあるはずの二つの皿が、無くなっていた。
それは――天秤、とは最早呼べないだろう。
『柱』とでもいうのだろうか。
しかし、それが放つ威厳は未だに在ったので、『ただの柱』というわけではないらしい。
そこにはちゃんと、世界を調節するだけの魔力が在る。
『柱』とでもいうのだろうか。
しかし、それが放つ威厳は未だに在ったので、『ただの柱』というわけではないらしい。
そこにはちゃんと、世界を調節するだけの魔力が在る。
「で、何で皿がついてないんだ?」
チェインは上半身を起き上がらせて、地べたに座る姿勢になる。
アブソーもそれにならって、同じ姿勢に。
「・・・・推測、です、あくまで」
言うと、アブソーは『柱』を指差して、
「天秤というのは、皿を使ってバランスを量る道具です――だけど、今の天秤には肝心の皿がついていません。つまり、その役目を終えたんだと思うんです」
「・・・・ていうことは、何が言えるんだ?」
チェインが眉をひそめて、隣へ首を向けて問うと、アブソーは何故か微笑んで、
チェインは上半身を起き上がらせて、地べたに座る姿勢になる。
アブソーもそれにならって、同じ姿勢に。
「・・・・推測、です、あくまで」
言うと、アブソーは『柱』を指差して、
「天秤というのは、皿を使ってバランスを量る道具です――だけど、今の天秤には肝心の皿がついていません。つまり、その役目を終えたんだと思うんです」
「・・・・ていうことは、何が言えるんだ?」
チェインが眉をひそめて、隣へ首を向けて問うと、アブソーは何故か微笑んで、
「役目を終えた、ということを言い換えると、もうする必要が無い、ということです。
そう・・・・チェインさん、つまり世界は最終的に救われたんです。何故なら――
そう・・・・チェインさん、つまり世界は最終的に救われたんです。何故なら――
+++
「それは――人間界と妖精界、二つの世界はひとつになったってこと」
レンシーはきっぱりと言って、皆の反応をうかがうように見る。
案の定、その顔に浮かんでいたのは、驚きと困惑。
「え、ちょっと待ってくださいレンシー様。ならば、今ここにも人間が・・・・」
「いや、そういうわけでも無いと思うよ、リビー」
その声の方へリビーが顔を向けると、タイニーが指を顎に当てて、何やら考え込んでいた。
「もしも、人間達が直接この世界にやって来てたら、それこそ世界が丸ごと変わっちゃうはずさ。勿論、僕たちがいる儀式の間もね。だから――二つの世界がより密接な関係になった、と言ったほうが正しいと思うね」
長い説明を一気に言ったタイニーは、一度息を吸って「理解したかい?」とおどけて尋ねる。
すると、今まで黙っていたエドワードが頷いて、
「大まかに、だがな。・・・・まだ私達は全ての現状を把握しきれてはいないかもしれない、だが、ひとつ言えることはあるだろう?」
「そうだね、確かに」
そしてティーは、クルーに語りかけるように、彼の顔を覗き込んで言う。
案の定、その顔に浮かんでいたのは、驚きと困惑。
「え、ちょっと待ってくださいレンシー様。ならば、今ここにも人間が・・・・」
「いや、そういうわけでも無いと思うよ、リビー」
その声の方へリビーが顔を向けると、タイニーが指を顎に当てて、何やら考え込んでいた。
「もしも、人間達が直接この世界にやって来てたら、それこそ世界が丸ごと変わっちゃうはずさ。勿論、僕たちがいる儀式の間もね。だから――二つの世界がより密接な関係になった、と言ったほうが正しいと思うね」
長い説明を一気に言ったタイニーは、一度息を吸って「理解したかい?」とおどけて尋ねる。
すると、今まで黙っていたエドワードが頷いて、
「大まかに、だがな。・・・・まだ私達は全ての現状を把握しきれてはいないかもしれない、だが、ひとつ言えることはあるだろう?」
「そうだね、確かに」
そしてティーは、クルーに語りかけるように、彼の顔を覗き込んで言う。
「最後の戦いは、私達の勝利で終わったんだよ」
クルーの顔に、微笑みが浮かんだように見えた。
+++
「今度こそ、戻るからな・・・・」
「はい、今度こそ戻りましょう」
どこかうんざりしたように頭をうなだれるチェインに対して、アブソーは生き生きと笑顔を浮かべていた。
「くそ・・・・こんなに時間かけるつもりじゃなかったのに・・・・俺の気持ちも・・・・」
「チェインさんどうしました?」
「い、いや。何でもない」
そうですか、とアブソーは笑顔を浮かべて――
「はい、今度こそ戻りましょう」
どこかうんざりしたように頭をうなだれるチェインに対して、アブソーは生き生きと笑顔を浮かべていた。
「くそ・・・・こんなに時間かけるつもりじゃなかったのに・・・・俺の気持ちも・・・・」
「チェインさんどうしました?」
「い、いや。何でもない」
そうですか、とアブソーは笑顔を浮かべて――
前兆も何も無く、チェインの腕に己の腕を絡ませる。
「な、おいアブソー! お、お前・・・・」
「チェインさん、私、嬉しいんです」
「な、何がだよ」
いつもどおり、赤面でそんなことを言うチェインに、アブソーは少し笑ってから答える。
「チェインさん、私、嬉しいんです」
「な、何がだよ」
いつもどおり、赤面でそんなことを言うチェインに、アブソーは少し笑ってから答える。
「チェインさんもクルーさんも皆無事なままで、終わったことがです」
そして、二人は。
アブソーの力を再度使って、花咲く世界から出たのであった。
アブソーの力を再度使って、花咲く世界から出たのであった。
+++
そして、結局。
この物語は誰が主役だっただろうか。
愛した希望と壊れた絶望か。
無垢な少女と純粋な騎士か。
はたまた、赤い絶望の再生だったのか。
それは彼らが死んだ後の未来に遡ったって、分かりはしない。
この物語は誰が主役だっただろうか。
愛した希望と壊れた絶望か。
無垢な少女と純粋な騎士か。
はたまた、赤い絶望の再生だったのか。
それは彼らが死んだ後の未来に遡ったって、分かりはしない。
しかし、それでも。
全てが終わった時。
笑っていたのは――彼女だったのだから。
世界は希望で満ちるだろう。
そこに、誰が話の中心かなど、関係が無い。
全てが終わった時。
笑っていたのは――彼女だったのだから。
世界は希望で満ちるだろう。
そこに、誰が話の中心かなど、関係が無い。
それはひとつの果実から始まり。
それはひとつの果実より終わる。
それはひとつの果実より終わる。
そしてそこから、また何かが始まるのだろう。
まだ、彼らの物語は、終わりではない――。
それはひとつの果実からⅤ End...
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