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「――――」


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赤い剣が己の体から生えているのを見て――
初めて、私は刺されたのだと理解した。

死ぬのは嫌だ、ということは万人が思うことだと思います。
私もまた、そう思う。
ならば何故、自分から盾になったのだと、問われたら、私は迷わずこう言うでしょう――
「本当の騎士に成りたかったのだ」と。

貴方も――もしもティーがアブソーだったら、同じ事をしたでしょう。
アルター・チェイン。
口の悪い自信家。色恋には疎い。Mr.鈍感。剣術の腕はなかなか。自己主張しているかのような金髪。強い意志を秘めた碧眼。『変化』の力。騎士。

私の一番の親友。
チェイン。
お願いです。

せめて泣かないでください。耐えてください。

騎士は最後まで、戦う義務があります。
護る義務があります。
だから、だから――

そんな顔を、しないでください。


アブソー。
優しく美しい少女。凛とした声。不安そうな声。恋愛は不得意分野。純粋な心。。ディーバ。希望的に強大な魔力の主。艶のある黒髪。この世の全てをを覆う黒目。女神。

今となっては唯一の、私の家族。
ガディス。
私は、前の名前でないと、貴方のことを本当に呼んだ気がしません。

やはり貴方は妹でした。

義理であっても紛い物であったとしても、貴方は絶対に妹でした。
過去から未来まで、私は貴方の兄です。
だから、せめて、誰かのために倒れた私を――

誇らしく、思ってください。


ハートピア・ティー。
明るく気丈な女性。男言葉を遣う。心優しい。生きるもの全てを大切にする。自分のことは後回し。長く美しい茶髪。魅力ある強い茶色の目。護られる者。

私の好きな人。
ティー。
やはり貴方が一番愛おしい。

騎士の姫。

好きになったきっかけは、とうに忘れました。
しかし、おそらく。
私には貴方がいないと、きっと駄目なのです――

貴方に私は生かされたのです。


ああ、そろそろ、でしょうか。
声も音も色も言葉も時間も空間も感触も嗅覚も聴覚も視覚も味覚も触感も――
全てが分からない。
ずっと昔に感じたことがある、この現象は、

死。

生命がなくなること。死ぬこと。また、生命が存在しないこと。
存在、しないこと。


しかし、だけど。
何故なのでしょうか。
声も音も色も言葉も時間も空間も感触も嗅覚も聴覚も視覚も味覚も触感も――
何もないこの状況で。

ティーだけが見えるのは。

「・・・・てい・・・・ぃ・・・・・・」
薄れ往く意識の中。掠れた声で、呟くように言う。
呼ばれた彼女は、驚きながらも、私の顔を覗き込む。
――ティーが、何かを言っているけれど、私には聞こえない。
しかし、聞こえなくてもいい。
私にはひとつだけ――この世界で遣り残したことがある。
今、それを思い出した。
思い出したことができた。

だから、私は。

辛うじて残った全身の力を使って――

「――――」

言葉を、紡ぐ。
そして――

暗転。

+++

「ねぇ、クルー」
「何ですか、ティー」
「君は・・・・全部分かってるんじゃないの?」
「何のことをです?」
「――私の気持ち」
「・・・・何故、そう思うのです」
「単純明快、クルーは『知識』の力を持ってるでしょ。なら、他人の思考も分かるはず」
「成程。確かに」
「・・・・だから、さ。クルーも素直になろうよ・・・・女の子からっていうのは、ちょっと紳士らしくないよ?」
「・・・・・・・・分かりましたよ、じゃあ」
「ああああ!! 今じゃなくて!!」
「・・・・だったら、どういう状況で言えばいいんです?」
「ほら、普通そういうのって、こういう普通の場面じゃなくて――

――もっとロマンチックなほうが、いいでしょ?」

+++

最期の騎士。
クルー・アポト二ティー。
妖精界一の剣術を持つと言われた男は、最後の言葉を遺し――



儀式の間にて、亡くなった。