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寂しい風が吹き荒れる夜道に、一人の黒髪の少年が歩いていた。
腰には錆付いた刀を携え、元は着物と思われる衣服は所々破れている。
恐らく、金も住む所もなく流浪しているのだろう。



 「・・・街か・・・。」



よろよろと歩く少年が向かう先には、建物から漏れる光で輝く一つの街だった。
金も、住む所もない。しかし街に行けば大勢の人がいる。
強奪、窃盗。これらを実行するには十分すぎる街だった。



無論、少年だけではない。
侍と銃士が溢れ、争いを繰り返すこの世界には、既に無法地帯と化した街が多くある。
住む家がない人間が、自然と行き着き犯罪を繰り返す・・・。
次第には、自らの事しか考えなくなり、争いに身を投じていくのだ。



そして、育てきれなくなった子供を捨てていく大人も少なくなかった。



そう、その少年もまた、捨てられた子供の一人。



 「・・・ん・・・。」



何かに気づいた様に、歩いていた少年がいきなり立ち止まった。
近くに、複数の人影が見えてきたのだ。
恐らく一人の子供を、複数の男が取り囲んでいるのだろう。



 「やめて・・・!」



声からするに、まだ若い少女だろう。
抵抗する少女をよそに、男達は少女を担ぎ上げ、得意げに言った。



 「へへ・・・さっさと売り払っちまおう・・・!」



これも、無法地帯故の所業か・・・。
人身売買も行われる街では、子供の誘拐が後を絶たない。



 「・・・。」



よくある事だ。
あの少女を助ける義理もない。
面倒なのは御免だ。
そう自分に言い聞かせ、また歩き始める少年。
だが、男の一人が放った言葉によって、再度少年の足を止める事となった。



 「・・・『親に見捨てられた』って所か・・・?こんな街の近くで・・・可愛そうに。」



笑いながら、少女の顔を覗き込む男。



 「・・・くそ・・・!」



その光景を見た少年の体の中で、何かが疼き出した。
『親に捨てられた』という言葉を聞き、憎悪の感情が蘇る。
そして気づいた時にはもう、少年の体は動き出していた。



 「・・・待て。」



街へと向かう男達に向かって一言。
見れば全員、刀や銃を持っている。



「・・・なんだ?」



不機嫌そうに振り返る男。
そして、少年もまた子供だと知ると、不機嫌そうな顔が嬉しそうな表情へと変わる。



 「・・・へへ!こいつも売っちまおう!」



今にも飛び掛ってきそうな男達を見てか、少年は腰にある刀を抜こうとしている。



 「・・・そんな錆びた刀でどうするつもり・・・。」



そう男が言い掛けた時、少年が刀を抜く。



 「・・・なんだ・・・!?」



少年が抜いた刀を見て、男達は驚きの表情を見せる。
錆びていた刀が、大きな変貌と遂げたからだ。



そして、少年は刀を振り上げる。




―――邪念に満ちた、黒い刀だった。

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