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「んんー? 僕のこと、呼んだかな」


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それは陳腐な妄想だけども。
人はそれを考える。
深く、深く。
広く、広く。
そして、人のその行動は決して使命とかでは無くて――


「例えばの話。子供が過去に遡って、自分を産んだ人物――つまり自分の母をナイフで刺して殺 したら、どうなるか」

「・・・・何を話すかと思ったら、物騒な御伽噺ですか・・・・」

「そう言うなって。で、お前はどう思う?」

「そうですね・・・・私は、両方死ぬと思う。ていうか、常識的にそうじゃないですか?」

「・・・・常識、か。そんな思想の制限みてぇなのに捕らわれてたら、本当の答えは出ないな」

「そう、ですか。なら、貴方はどう思うのですか?」

「オレか? そうだな・・・・オレだったら、こう答える――」


「――親にしても子にしても、強い方が生き残るってね」





その日は快晴だった。

「君達は一体どこで何をやっていたんだい?!!」
開口一番。
アブソー達が『トウキョウ』から戻ってきた後、最初に聞いた台詞は、タイニーのそんな声だった。
タイニーは声のボリュームを下げないままに、続ける。
「植物を使って君達と連絡をとろうと試みたのに、まったくと言っていいほど君達が行った時空には植物が無かったっていうんだから、本当馬鹿げてるよ!!」
「た、タイニー・・・・? 俺たちがいない間に何かあったのか?」
見かねたチェインが、そう声を掛ける。
タイニーは、

「いないも何も、現在進行形で『何かあった』よ!! 儀式までの期間が一週間も無いんだ!!」

と言った。
否、叫んだ。
「「「「・・・・え」」」」
事実を今しがた知ったものたちは、口をそろえて、驚きの声を上げた。
「それは、大変ですね・・・・」
冷静さを取り戻したクルーは、静かに言う。
「あ、分かりました。まだ一人足りないのですね!」
「そうか・・・・まだあいつが――レンシーがいねぇ」
八妖精は八人揃わないと、意味が無い。
世界バランス調整儀式が、行えない。
つまり、破滅。
双方の世界は――死ぬ。
「だったら、今すぐにでも行かねぇと間に合わねぇ――」
チェインが焦ったように、それこそ額に冷や汗までかいて言ったところで――

彼は現れた。

さっきまでそこにいたとでも言うように。
当たり前のように、そこにいた。
そして、もっと詳しく具体的に言うならば――

彼は未来から飛んできたのだ。

時を自由に気楽に航海し。
友の下へと、戻ってきた。

「んんー? 僕のこと、呼んだかな」
緑髪に緑眼。
彼こそが――『時航【タイムトラベル】』の力を持つ妖精。
ベル・レンシー、その人だった。

背後にひっそりと立つレンシーに、何か違和感を覚えつつ振り向いてから、チェインは恐る恐ると言った様子で、声を掛ける。
「あの、よ・・・・。レンシー、だよな」
「じゃあ逆に聞くけど、僕以外の誰だっていうの?」
ふふふと笑って、レンシーは続ける。

「忘れたのかな、僕は時や空間を自由に移動できるんだよ?」

ゆっくりと、しかし確実に歩みを進めながら、レンシーは更に続ける。
「聞くところによると、八妖精が時空へ飛ばされたんだってね。僕のその被害を受けた一人だケド。このとおり、力を使ってみたら、妖精界に戻れたってわけ」
ホント、ラッキーだったよね、と言って、ピタリと、足を止める。
「でさ、時間ないんなら、もう行かないとまずいんじゃない?」
その言葉に、クルーは目が覚めたように、
「そうですね。もう少し再会の喜びをかみ締めたかったのですが、今はそんなこと言っていられません」

そんな冷静な声に、空気は一転して、緊張感溢れる雰囲気となる。
そして――白い城壁を堂々とさらす城を、見やる。
アブソーとチェインとクルーは、時空を巡った、あの旅を思い出した。

ここで旅が始まり。
ここで旅は終わる。

不思議とサイクルしているようで、またここから何かが始まる気もした。

しかし――何かが始まるためには、ここで失敗してはいけない。

ここで、世界を破壊してはいけないのだ。

「ところでよ、マニ」
刹那のような静寂を破ったのは、チェインのそんな声だった。
「お前・・・・まだぬいぐるみのままなのか?」
[不本意ながら]
マニは力を使って、地面に書きなぐるように、言葉を彫る。
そして、至極当然のように。
皆の視線は――タイニーへと集まった。
「・・・・ん? 僕かい?」
「とぼけない方が身のためだよ、タイニー」
エドワードが眼鏡を直しながら言うと、それにリビーが繋げるように。
「こんな悪戯をする人は、タイニー以外にいません」
そして、同意の意を示すように、皆は頷くなりの反応をしめす。
そんな光景を見タイニーは、やれやれといった様子で肩をすくめた後、ティーが抱いていたマニ――『不本意ながら』テディベアの状態だが――を取る。
そして、唐突に――
「えい」と、小さな掛け声。

タイニーの手が光り、マニは小さくなっていた。
そんな一見脈絡の無い行動に戸惑いながらも、アブソーは訊く。
「あの・・・・タイニーさん? 何でマニさんを小さく――」
「あぁ。なんとなくっていうか、最近悪戯してなかったから」
うっぷん晴らすために、かな? と、おどけながら答えた。
「ちょ、ちょっと待て。こんな状態で、マニは儀式を行えるのか?!」
「ま、まぁ。儀式は『コア』に力を込めるだけでできますから、そこは心配はいらないのですけど・・・・」
しかし、クルーはやはり、先ほどの行動に納得できてはいない。
だけど、そんなことでいちいち議論をする時間など残っていないことも、また事実だった。


一週間。
それは見方によっては長い時間にもなる。
だが。
急がなければいけない理由があった。
避けなければいけない事態があった。
恐れなければいけない存在があった。

例えばそれは、彼の口癖を借りるなら――

――最悪の『悲劇』。

絶望的に強大な魔力の主。
赤い絶望。
ファント。

「――では、行きましょうか」
クルーはそして、皆の先頭になって、城へと歩みを進める。
その先にある、惨酷な運命など知らずに――。
強く、強く、歩く。

そして、チェインは、微かな疑心を抱く。
あの違和感。
レンシーを見た時の、違和感。
何か、胸がもやもやとする。
そして、この時。
チェインはその違和感についてあまり考えることなく、城へと這入る。
その決断が、今後の展開に少なからず影響することに、
まだ、彼は気付かない。

そして、タイニーは、薄く笑う。
無意味なように見える行動にも、何かしら根拠や理由や目的がある。
そしてそれは、タイニーの場合だけ例外、ということは無い。
タイニーは――小人。
小人は、元々賢いのだ。
当然、策も練る。
タイニーは、アブソーの問いに、改めて答える。
「――これはね、保険なんだよ」
呟いたその言葉は、誰にも聞こえることなく、消えた。




「何ですかそのバラの花束」

「ん? ・・・・あぁ、買った」

「それは包装紙見れば分かりますよ。誰にあげるんです?」

「あれれ、それは嫉妬かな?」

「・・・・別に、違いますけど。ただ、気になっただけです」

「それが嫉妬っていうんだよ」

「それじゃあ、誤解を生まないためにも言い換えます。好奇心です」

「それは屁理屈っていうんだよ」

「・・・・・・で、誰にあげるんです?」

「なんだか誤魔化されたね――オレは遠回りに言うのが苦手だから、ストレートに言うよ」


「お前にあげる。誕生日おめでとう」




「では、レンシーさんは色んなところに行けるのですね」
「うん。そういうことかな。結構疲れるけど」
そうして、アブソーとレンシーは並んで歩きながら、緊張感が感じられないような会話を交わしていた。
そして、そんな二人をチェインは背後から見つめる。
「・・・・・・・・」
――やっぱり、可笑しい。いや、可笑しいっていうより、不快っていうか・・・・。
「嫉妬、ですか」
「うおっ! クルー、いきなり現れるなよ!」
「・・・・さっきからいましたけど」
呆れたように言うクルー。
そして、チェインの肩にポンと手を置いて、
「それにしても――」
と言う。
「遂にここまで着ましたね、チェイン」
「・・・・まぁな」
ふと、後ろに眼を向けると、サイラー兄妹は手を繋いで、ティーとタイニーは小さくなったマニを笑いながら、城の地下へと続く螺旋階段を下りていた。
そこでチェインは、いままでの旅を思い返す。

タイニーと合流した、うっそうとした森。
ティーとマニに再会した、向日葵とドラゴンのいる砂漠。
エドワードとリビーに一緒に戦った、トウキョウという名の灰色の町。

「・・・・なぁ、クルー。俺達ってさ、まともな時空にいってないよな」
「? なんの話ですか。私は、チェインも嫉妬心を覚えるまでの人になった、と言ったんです」
「はっ?! なんだよそれ!」
――・・・・ていうか、緊張感を感じているのは、俺だけなのか?
チェインがそんなことで焦りながら、淡々と階段を下りていくと、やがて大きな広間に出た。
前の方で、レンシーの声がする。

「ほら、アブソー。これが儀式の間だよ」

別名が――その城壁の純白さから、白雪城と呼ばれる城の地下に存在する、ぽっかりと空いた空間。

儀式の間。

大雑把に言えば、円形の大きな部屋なのだが、床には何やら様々な文字が彫られている。
それは、特別な魔方陣を書くときに使うような、高度な文字だったり、古代より受け継がれてきた、神秘の文字だったりと、とにかく、普段目にしないような奇怪で奇妙なものばかりだった。
そんな、珍しい文字よりよっぽどアブソーの目を引いたもの――

――儀式の間の中心に、光り輝く水晶があった。

それは、人が二人、めいいっぱい手を広げて繋いだ時の、手の輪にすっぽりと入るくらいの大きさで、細長い形状をしていた。
「アブソー、見てみなよ。――あれが、『核【コア】』。世界と世界を繋ぐ要。妖精の中にはクリスタルって呼ぶ人もいるくらい、すごく、綺麗なんだ・・・・」
うっとりと、水晶――コアを眺めるレンシーの視線を追うように、アブソーもそれに目を向けて、「・・・・確かに、本当に、綺麗です」と、呟く。
「それでは皆さん。邪魔が入らない内に、さっさと用事を済ませてしまいましょう」
そう言いながら、クルーはコアの数歩手前まで歩く。
それに続いて、他の八妖精もクルーと同じような距離を歩き、コアを囲むように立った。
そして、アブソーは、レンシーの後ろで待機することにした。
クルーが、言う。
「では、力を、注いでください」
集中するためなのか、八妖精全員が、眼を閉じる。

そして、静寂。
怖いくらいの、無音。

そして――、

いきなり、だった。
グルンとレンシーは首をひねって、背後にいたアブソーを見やって、
「――――!」
体が凍る。

動かない。
動けない。
逃げたい。
逃げない。

恐ろしい。

アブソーがその刹那で見た、レンシーのその眼は、本来緑であるはずの、眼の色は――

――どうしようもないくらいの、赤だった。

「うふふ、また会いましたね」
小さな女神、と。
突如出現させた赤い剣を、少女へと構える。
その顔は、楽しそうに苦しそうに可笑しそうに、歪んで笑う。
そして、切っ先を、少女に、向けて、

突如金属音がした。

「やっぱりお前かよ」
チェインが、己の剣の腹を使って、ファントの剣をとらえていた。