「なぁ、やめないか?」
「これも仕事です。私たちには使命がある。」
普段持ち慣れない、幼い少女にはまだ大きい剣を携えて、
金色の長い髪の間から見える、女の子らしい顔は今はもう無い。
ルカ様を目覚めさせるために、ただその目的だけが彼女を突き動かしていた。
「こんなの、やっぱりよくない。」
此処は、夢の中。
厳密にはルカ様の今見ている夢の中だ。
夢は記憶を反映する。
だからこそ、その人の意志が強く出るもの。
「荒んでる…。」
「そうね…。」
この世界には悲しみが溢れていた。
街は廃れ、魔物は多く徘徊し、人々の姿はもう無かった。
「もう少しで―。」
「危ない!」
狼の姿をした、一匹の魔物が彼女に襲い掛かった。
避けはしたが、狼の鋭い爪は確実に心臓を狙っていた。
「ここは僕が!リンは下がって!」
重々しい一本の剣を抜き、狼の目の前に突き出す。
使い慣らされた剣は、狂い無く魔物を捉えていた。
まだ彼は小さく子供だが、間違いなくその姿は一人の戦士だった。
揺らぐ事の無いその瞳は、冷静に狼を追い詰めていく。
「これで…!」
振り上げられた剣が、狼を切り裂いた。
「ねぇ、ケイト…!」
「…!」
周りには無数の魔物が、二人を取り囲んでいた。
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