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タイムリミット 3

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 クレアにとって最後の夏が終わる。
 そして、クレアも。


【タイムリミット-3-】


「あーあ、ドクターも嘘なんてつかなくてもよかったのに」
「へ?」

 絶望に強いられている心に呆然としながら、俺は素っ頓狂な声を出した。

「余命のことよ。そう長くもたないって、もう自分でわかってたのにね」
「……そう、なのか」
「うん」

 ごほごほと咳を大きくするクレア。もう、限界のようだと俺でもわかった。

「大丈夫か?」
「平気って言えば平気だけど……ちょっと、苦しいかな」
「そっか……。……治りたいか?」
「そりゃあ、治せるものならね。でも、もう……」
「もう……?」
「もう、ダメみたい」
「……! そ、そんなこと言うなよな!」

 クレアはコップを手に取り、口に含む。呆然としていた俺は止める事すらままならず、ただ

「ぁ……」

 と呟く事しかできない。

 クレアが重い口を開く。

「だってほんとだもの。段々、体が重くなってきてる」
「……そんな……」

「ね、グレイ?」
「なんだよ」
「わた……っ」

 咳き込むクレア。服が少し赤く染まるのを見て、俺は愕然とした。

「……っ。私がいなくなっても、ランやクリフくんたちと、がんばって生きていってね」
「あ…ぅ……」

 なんで、俺はしどろもどろしてしまったんだろう。
 なんで、何も言えなかったんだろう。

「バイバイ……グレイ……」

 目を閉じ、息を吐いたクレア。
 そしてもう動かなくなった体を見て、俺はただ一言つぶやいた。

「…っ……クレア…」

 二度と、クレアが目を開けることはなかった。
 
 

 俺は、何もできなかった。
 何も言えなかった。
 力になんて、なれなかった。

 クレアを抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。力のないその抜け殻は、冷たかった。

「クレア……クレア……っ」

 ただそれだけを言い続ける。一体どのくらいそうしていたのだろうか。
 目尻から流れる、一筋の涙。それはフローリングの床に、乾いたシーツに、小さな染みを作って、消えた。

 クレアにとっての最後の夏は、クレアと共に、終わりを告げた。
 月の光が、クレアを照らした。