クレアにとって最後の夏が終わる。
そして、クレアも。
【タイムリミット-3-】
「あーあ、ドクターも嘘なんてつかなくてもよかったのに」
「へ?」
絶望に強いられている心に呆然としながら、俺は素っ頓狂な声を出した。
「余命のことよ。そう長くもたないって、もう自分でわかってたのにね」
「……そう、なのか」
「うん」
ごほごほと咳を大きくするクレア。もう、限界のようだと俺でもわかった。
「大丈夫か?」
「平気って言えば平気だけど……ちょっと、苦しいかな」
「そっか……。……治りたいか?」
「そりゃあ、治せるものならね。でも、もう……」
「もう……?」
「もう、ダメみたい」
「……! そ、そんなこと言うなよな!」
クレアはコップを手に取り、口に含む。呆然としていた俺は止める事すらままならず、ただ
「ぁ……」
と呟く事しかできない。
クレアが重い口を開く。
「だってほんとだもの。段々、体が重くなってきてる」
「……そんな……」
「ね、グレイ?」
「なんだよ」
「わた……っ」
咳き込むクレア。服が少し赤く染まるのを見て、俺は愕然とした。
「……っ。私がいなくなっても、ランやクリフくんたちと、がんばって生きていってね」
「あ…ぅ……」
なんで、俺はしどろもどろしてしまったんだろう。
なんで、何も言えなかったんだろう。
「バイバイ……グレイ……」
目を閉じ、息を吐いたクレア。
そしてもう動かなくなった体を見て、俺はただ一言つぶやいた。
「…っ……クレア…」
二度と、クレアが目を開けることはなかった。
そして、クレアも。
【タイムリミット-3-】
「あーあ、ドクターも嘘なんてつかなくてもよかったのに」
「へ?」
絶望に強いられている心に呆然としながら、俺は素っ頓狂な声を出した。
「余命のことよ。そう長くもたないって、もう自分でわかってたのにね」
「……そう、なのか」
「うん」
ごほごほと咳を大きくするクレア。もう、限界のようだと俺でもわかった。
「大丈夫か?」
「平気って言えば平気だけど……ちょっと、苦しいかな」
「そっか……。……治りたいか?」
「そりゃあ、治せるものならね。でも、もう……」
「もう……?」
「もう、ダメみたい」
「……! そ、そんなこと言うなよな!」
クレアはコップを手に取り、口に含む。呆然としていた俺は止める事すらままならず、ただ
「ぁ……」
と呟く事しかできない。
クレアが重い口を開く。
「だってほんとだもの。段々、体が重くなってきてる」
「……そんな……」
「ね、グレイ?」
「なんだよ」
「わた……っ」
咳き込むクレア。服が少し赤く染まるのを見て、俺は愕然とした。
「……っ。私がいなくなっても、ランやクリフくんたちと、がんばって生きていってね」
「あ…ぅ……」
なんで、俺はしどろもどろしてしまったんだろう。
なんで、何も言えなかったんだろう。
「バイバイ……グレイ……」
目を閉じ、息を吐いたクレア。
そしてもう動かなくなった体を見て、俺はただ一言つぶやいた。
「…っ……クレア…」
二度と、クレアが目を開けることはなかった。
俺は、何もできなかった。
何も言えなかった。
力になんて、なれなかった。
クレアを抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。力のないその抜け殻は、冷たかった。
「クレア……クレア……っ」
ただそれだけを言い続ける。一体どのくらいそうしていたのだろうか。
目尻から流れる、一筋の涙。それはフローリングの床に、乾いたシーツに、小さな染みを作って、消えた。
クレアにとっての最後の夏は、クレアと共に、終わりを告げた。
月の光が、クレアを照らした。