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喜劇悲劇笑劇!


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デパート一階の隅にあるアイスクリーム店。
そこにある二人がけのテーブルにクルーとリビーは向かい合って座っていた。
店内はシックな色で飾られており、天井に内臓されたスピーカーからクラシックが流れている。
クルーとリビーの他にも、家族連れや男女の客が何組かいた。
「んー! 美味しいですね!」
リビーはストロベリー味のアイスを一口食べて、感想を漏らした。
顔は、これ以上ないくらいに幸せそうだった。
「リビー・・・・良かったんですか? 自分だけ買えばよかったのに・・・・」
と言うクルーの手には、バニラ味のアイスがあった。
ちなみに、まだ手をつけていない。
「いいんです。いいんですよ。いいに決まっているんです。愛しのアポトニティー様のためでしたら、230円くらいどうってことは無いです」
230円がどのくらいの価値なのかは分かりませんけど、と言って、リビーはもう一口、アイスを口に運んだ。
「そうですか。それでは、お言葉に甘えて・・・・」
そして、クルーがアイスを食そうとした瞬間。

何故かアイスに深々とナイフが刺さっていた。

「なっ・・・・!」
「きゃっ!」
リビーが小さな悲鳴をあげた。
クルーが急いで周りを見渡すと、店内にいた客達が皆武器――包丁。ナイフ。バット。スタンガン。エトセトラエトセトラ・・・――を持って、こちらを向いていた。
否。
店内に限らず、入り口近くにある窓の外にある廊下にも、その類の人間がいることを、クルーは確認する。
どうやら、アイスに刺さったナイフは誰かが投げたものらしかった。
「リビー、まずいですね」
「うわわわわわどどどどどうしましょー!!」
「慌てないでくださいよ。何故こんな状況なのかは分かりませんが、とにかく――」
言いながらクルーは、背にある羽に手を伸ばした。
「貴方は私が守ってあげます」

+++

クルーが剣を持って防衛している頃。

三人はのんきに気楽に平和に歩いておりました。
そこで、アブソーは隣のチェインに聞く。
「そういえば、あちらではどのくらいの時が経っているのでしょうか?」
「あちらって、妖精界のことか?」
「はい」
「けどよ、タイニーに聞かないと分かんねぇし。それによ、聞くにも植物が無ぇから」
「あ、そういえば・・・・」
周りには雑草すら、無い。
緑がまるで無かった。
「大丈夫でしょう。もしも間に合わなかったらここが崩壊してる」
未来、といっても、あくまで人間界ですから。
エドワードは言って、さらに歩を進めた。

補足をいれよう。
この時のエドワードの頭の中にはリビーのことしか無かった。
そのことが、この後起こる事件に少なからず影響を与えてしまうことに、本人はまだ気付いてはいない。

+++

そして、一分後。
エドワードを見失った。

アブソーとチェインは、灰色の都会の真ん中に、ただずんでいた。
そもそも、トウキョウにはさっき来たばかりという状態だったので、無闇に動いたらそれこそリビーの
、またはエドワードの二の舞だった。
という事情により、とりあえず二人は立っていた。
「あの、チェインさん。これからどうしますか? ずっとこのままというわけにはいかないですし」
「まぁそれは正論なんだけどよ・・・・」
そして、お互いがそれぞれで今後の行動について思案している時に。
チェインはそれを聞いた。
微かな、ほんのわずかな音だったからこそ、戦いの場を踏んできた彼にしか聞こえなかった。
「どうしました?」
少しだけ身にまとう空気を変えたチェインにアブソーは訊いた。
彼は答える。
「いや、なんか悲鳴みたいのが聞こえたんだけど・・・・」

+++

「きゃああ!! アポトニティー様ぁあ!!」
リビーがそう叫んで視線を向けた先に、彼は立っていた。
体のところどころから血を流したままで。
足はふらついたままで。
目もどこか虚ろなままで。

彼は、立っていた。

「もう止めてください・・・・私は平気ですからぁ・・・・」
泣きながら言うリビーをチラリと見て、そして、クルーは目前の集団を見た。
いくらクルーが剣術の達人とは言え、前回のマグマとは違い、今度の相手は人間。それも尋
常じゃない人数がいた。
最初よりも数は半分以下には減っているものの、まだまだ少ない人数とは言えなかった。

――血を、幾分か流しすぎましたか・・・・私としたことが、少し油断しましたね。

頭のなかではあくまで冷静に状況分析すると、再度剣を構え、目を閉じた。
呼吸を整え、そして、目を開き、彼は敵に突撃した。

+++

「・・・・オカシイよな。あきらかに」
「罠、のようにも見えますが」
チェインが悲鳴の発信源へと向かい、目の前にあったのは高いビル。
そして、その入り口部分に、黒い制服を着た人間が列をなして並んでいた。
「チェインさんが悲鳴をここから聞いたのなら、行かないわけにはいきません。困っている人は助
けないといけませんし、あの悲鳴の持ち主はリビーさんかもしれません」
アブソーは言うと、颯爽と入り口へと向かう。
「まてまてまてって。絶対に通す感じじゃねぇぞ、あれは」
「確かにそうですが・・・・じゃあどうするんですか? チェインさん」
ははは、よくぞ聞いてくれた、と大袈裟に言って、
「一つ、策があるんだ」

+++

「あの、チェインさん?」
「何だ」
「それって、策、というほどでもないんじゃないですか?」
アブソーとチェインは、ビルの裏に向かう途中、策について話していた。
裏に行けば行くほど人数は少なくなっていったので、人混みばかり見ていた二人にとってそ
の光景は少し不気味に見えた。

まるで、誰かが人を追い払っているような、そんな不気味。

そして、アブソーは怪訝そうな顔をして、
「チェインさんが『変化』の力でビルの壁を紙にするなんて、あまり『策』とは言わないじゃない
んですか? どちらかというと、方法というか・・・・」
「そんな細かいことをいちいち考えなくたって良いだろ? ・・・・さて、ここら辺でいいか」
チェインは歩みを止めると、おもむろに壁に手をついた。
そして、手が光りだす。

+++

その頃。
クルーとリビーは窮地に立たされていた。

二人はそれぞれ人間達の手によって紐状のもので拘束されていた。
勿論、クルーとリビーはすでに武器を持っておらず、クルーにいたっては血を流しすぎたのか、
意識が朦朧としていた。
「リビー・・・・すいません、貴方を最後まで守れないようです」
力なく、クルーが言った。
「あの・・・・アポトニティー様。私思ったのですけど、この人達、どこか不自然なんですけど」
「不自然・・・・」
リビーの言葉にある可能性をおぼえたクルーは、目を閉じ、人間達の思想を視た。
「・・・・・・? アポトニティー様、どうしたのです?」
リビーが心配そうにクルーに問いかけた瞬間、クルーは目を見開いて、
「これも、これもファントの仕業なんですか!!」
誰かに怒鳴るように、彼は叫んだ。
「あ、アポトニティー様、ファントってもしかして――」

ドゴッ。

と。嫌な音がした。
リビーの向かいにいるクルーの背後に、バットを持った、少年がいた。
そして、少年は言う。
「さぁーて。悲劇の幕開けだよ」

+++

あの赤く染まった公園で、私の両親は死んだ。

私のもとへ帰ってきた時、彼らはすでに人間の形をとどめてはいなかった。
私とリビーと一緒に駆けてくれた脚も
私とリビーを抱いてくれた腕も
私とリビーを撫でてくれた手も
私とリビーの涙をふいた指も
私とリビーが好きだった顔も
私とリビーと同じ色の眼も
愛していたのに。
全てを全ては全てが全てに、絶望だった。

今私の城にいるのは、何人かの召使と執事、そして、私とリビーだけだった。
ぽっかりと穴が開くとは、こういうことなんだと、実感した。

私はその痛みを忘れはしない。
もうその痛みを味わいたくはない。

だから私はリビーを守ると、心に誓った。
今となっては唯一の血の繋がった人を、失いたくは無いから。

もう二度と、もう二度と――。

+++

「さて、ここはどこだろう」
エドワードはチェイン達とはぐれた後、己の勘を頼りに歩いていたのだが――勿論そんな歩き方をすればもっと迷うことは明らかだ――見知らぬ場所に出てしまっていた。
「いや、ここがどこかは関係ない。早くリビーを探し出さないと……変な人にひっかかってしまっては大変だからな・・・・」
エドワードは顔面蒼白になりながらも、必死に目を動かしていた。だが、相変わらず見えるの
は灰色の建物や人混みだけだった。
そして、エドワードは眼鏡を手で押し上げて、一旦自身を落ち着かせる。
「・・・・仕方が無い。可愛い妹のために、少し仕事をしなければ」
疲れるのは嫌なんだけどな、と呟き、唐突にエドワードは目を閉じた。

彼の周囲の空気が、蠢いた。
しかし、それは微々たる動きだったので、気付くものは誰もいなかった。

+++

少年は笑っていた。
とてもとても可笑しそうに、狂ったように、嬉しそうに、この状況を楽しんでいた。
その姿にリビーは、どうしようもないような恐怖を覚えていた。
何の躊躇もせずに、まるでそれが当たり前のように、クルーを殴ったこの少年に。

形は子供なのに、 中身は悪で満たされているような。
そんな有得ない不一致に、彼女はただ怯える。

「ねぇ、何でそんなに震えてるのぉ? おねーさん」
「あぁ・・・あ・・・・ぁ」
「口がガタガタ言ってるよー。あ、もしかして、ボクが怖いのぉ?」
少年はリビーに近付いて、顎を手でつかみ、自分の顔へと向かせた。
「ほら、こんなに可愛い男の子なのに。おねーさんおもしろーい」
「貴方は――!!」
リビーは叫ぶ。
「貴方はファントなのでしょう!! どこが可愛い男の子ですか!! アポトニティー様を平気で殴ってしまうなんて・・・・貴方は最悪な男です!!!」
「待ってよ、私がファントだという指摘は半分しかあってないよ。それに、そんな言いがかり困るよ。こっちも仕方なくやってるんだから、さ。」
そして、少年はそばにいた人間からナイフを奪うようにとって、どこか誇らしげに、
「なんたって、私は『絶望的に強大な魔力の主』なんだからね――観客に絶望を与えるのが、私の務めだろう?」
そして、少年――ファントは。
躊躇も無く迷いも無く後悔も無く慈悲も無く意思も無く――希望も無く
真っ直ぐに、ナイフを振り下ろした。

刹那。

確かに、微かに、遠くから、声が聞こえた。

「止めろぉおおおおおぉおお―――!!!」
チェインの、声だった。

「ん?何?」
折角のクライマックスなのに、と少年は振り返る。
目の前に回転しながら飛んでくる金色に輝く剣があった。
「うおぉお!!?」
即座に身をかわす。
そして、少年の後ろにいたリビーの後ろにいた人間に、一撃を食らわせた。
「あぁあああ!! チェインさん、何て事をするのですか!!」
「え、いや、まさか避けるとは思わなくて・・・・。第一、あいつら敵だろ?」
「敵だから傷つけてもいいなんていう道理はありません!!」
アブソーは叫んで、リビーのところへ駆け寄る。
チェインは剣を拾って、少年に切っ先を向けた。
「お前のお相手はクルーに代わって俺がしてやるよ」
「・・・・ふふふ。面白いですね、しかし、悪くは無い」
少年は、ナイフを構えて、目の前にいる金髪の青年へと目を向けて、

「さぁ、アンコールの時間です」