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サイラー兄妹


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私は鼓膜を劈くような金属音で、目を覚ました。
横を見ると、目覚まし時計が鳴っている。
私はそれを止めると、その反対側に視線を向けた。
「うー。あ、エド兄様、おはよぉ・・・・」
うす紫色の髪を乱れさせて、愛しい我が妹は私にそう言った。
「おはよう、リビー。ところで、髪がすごいことになっているよ」
「え、ホント? ちょっと鏡見てくる!」
リビーはベットから降りると、洗面所の方へとことこと歩き出した。
そこで改めて今の状況を確認する。

まず、私達は何故ここにいる?

私達は確か、馬車に乗って城に帰っていたはずだなのだ。
そして、気付いたら妖精界ではない世界にいた。
私が思うに、ここは時空なのだとは思うが。
幸い、宝石をいくつか持っていたので、ここの世界の紙幣に替えて生活することはできるのだが――帰れるかどうか分からない、というのが現状だ。
ただ、一番心配なのは私達の使命を達成できるかどうか。
確か、そろそろ儀式をしなければ、世界は――
「エド兄様」
「・・・・どうした、リビー」
「あの、あれって・・・・」
言いながら、リビーは窓の外を指差す。
私はそれに従って、外を覗く。
ここは『マンション』という建物なので、いささか高さが邪魔し、リビーが何を指差しているのか
分からなかった。
そこで、彼女が一言。

「あれは、アポトニティー様ではありませんか!!」

「なに!?」
さすが我が妹。
クルーを探すことに関しては一流だ。
「とりあえず、迎えに行こう。リビーも行くか?」
「もちろんですよ!」
そこで私達は早速服を着替えると、玄関のドアを開いた。

+++

「リビー、クルーはどこら辺にいたんだ?」
「えーと。こっちかな?」
リビーはキョロキョロと必死に大きな紫色の目を動かしていた。
まったく、何故ココはこんなにも人ごみが多いのだ。

この――『トウキョウ』という都市は。

一度はぐれたら、二度と会えなくなってしまいそうだ。
「リビー、迷子になると大変だ。くれぐれも私から離れないように・・・・」
目を彼女がいるはずのところへやる。

我が妹の姿は無かった。

どうやら、待ちきれず勝手に一人で行ってしまったらしい。
…………。
心臓が止まったような気がした。
「・・・・絶対に探し出からな。リビー」
私は決意を固めると、騒がしい都市へ一歩を踏み出した。

+++

サイラー・エドワード。

サイラー・リビー。

二人合わせてサイラー兄妹。
彼らは、貴族。
彼らは、天才。
そして、何よりも誰よりも絆が強かった。
困難災害障害天災事故試練にも、対抗し、尚且つ、切れない絆。
それが彼らの、最大の武器にして、唯一の切り札。

例えばそれは旧友同士の腐れ縁のような――、
例えばそれは恋人同士の赤い糸のような――、
例えばそれは天敵同士の因縁のような――、

――絆。
人と人を繋ぎ、架ける物。

それを持つサイラー兄妹の片割が、何故か一人で、俺の前に座っている。

+++

「で、どうやって時空に飛んだのかな、君達は」
「それは後で話すが・・・・それよりも、リビーはどうした」
「・・・・・・・・不覚だった。私が不注意なばっかりに、リビーは・・・・」
エドワードは最後、消え入りそうな声で言うと、頭を抱えて何やらぶつぶつと呟き始めた。
アブソー、チェイン、エドワードはとある喫茶店にいた。

少し時間を遡る。
アブソー達は無事に時空に、トウキョウに着いた。
しかし、人ごみにまみれ、クルーとはぐれてしまったのだ。
そして、残った二人が適当にさまよっているのを、偶然エドワードが見つけたのだ。
以上、経緯。

「けど、クルーさんのことは見たんですよね?」
「・・・・・・見たのはリビーだけだが」
「まぁ、リビーとクルーが合流していれば取りあえずは安心なんだが」
そこで、チェインは置いてあったカフェオレを一口飲んだ。
ちなみに、アブソーの前にはオレンジジュース。
勿論、全てエドワードの奢りだった。
「ああそうだ。確か・・・・アブソー、でしたか。貴女、人間界にいたんですよね?」
「はい、そうですけど」
「人間界ってものは、こんな感じだったのか?」
そうですね・・・・、と言いながら、アブソーは改めて周りを見渡した。
高くそびえる灰色の建物。
そこに映し出される映像。
自動で走る色とりどりの馬車。
人混み。人混み。人混み。

「・・・・少なくとも私が知っている人間界は、こんな風では無かったと思います」
「そっか。それじゃあここは、さしずめ未来の人間界ってことになるかな」
「未来の・・・・か。時空ってのは、そこまで含んじまうのか」
感心したようにチェインは言って、空になったカップの底を見つめた。

+++

「・・・・リビー」
「何ですか?」
「あなたは一体何がしたいのですか?」
「アポトニティー様。それは乙女にしてはいけない質問ですよ」
そう言って少女は、クルーとつないでいる手を少し強く握った。
リビーはクルーを見つけた直後、自分が兄とはぐれていることに気付いたが。何分クルーと二人っき
りになれたので、すぐそばに自分の仮住いとしてのマンションもあったが、
「アポトニティー様、私、ずっとずーっと前からエド兄様とはぐれてしまったんです。しばらく一緒に探
してくれませんか?」
勿論言われなくても分かるが、一応言おう。嘘である。
しかし、そこで断れないクルー。
というわけなので、現在はリビーの思惑通りに進んでいた。
「しかし、貴女さっきから視線を動かしていないですよね。それはエドワードを探していないとも解
釈できてしまうのですが」
「えぇえ?! あ、アポトニティー様は、わわわ私のことを、こんな純粋で可愛らしい女の子を疑う
と、そう言うのですか!!」
「い、いえ。そういうわけでは・・・・」
あまりの剣幕でそのようなことを言われてしまったので、クルーはもう黙るしかなかった。
「まったくもう。いくらアポトニティー様でも、そのようなことを言われては、傷つきます」
あぁ、痛い痛い、と言いながら、リビーは大袈裟に胸の辺りに手をあてる。

――昔からこの子は、本当に世話が焼けるというかなんというか・・・・。

クルーは一人思案しながらも、黙々と目を動かしていた。

+++

そして、場所は変わり。
喫茶店。

「あぁ、そういえばよ。エドワード、お前って『ファント』のことは知ってるよな」
「いちおうは。・・・・何故いきなりそんなことを」
「実はよ。お前らも含め、八妖精が時空へ飛ばされてんだよ」
エドワードは少しだけ、驚いたように表情を変えた。
「・・・・それは、本当か」
「おう。厳密に言うと、俺とクルーは無事だったんだがな」
そうか、と相槌を打って、エドワードは言う。
「それをやったのが、ファントだと。貴方はそう言いたいわけですか」
「そうだな・・・・それだけのことをやるためには、それぐらいの魔力を使うからな」
チェインはそう締めくくって、もともと置いてあった水を飲んだ。
「しかし、至極納得がいかない」
何がだ? とチェインが聞き返すと、

「こんなにも素敵なアブソーがチェインの恋人だなんてな」

「「・・・・へ?」」
「まったくもって不可解だ」
勝手に話を進めるエドワードに、二人は力強く言った。
「ち、違うに決まっているだろ! 馬鹿じゃないのか?!」
「断じて! 断じて違いますですよ、エドワードさん!!」
「です、が多いよ。アブソー」
エドワードは冷静に言って、
「大丈夫。からかってみただけだ」
「・・・・・・」
そんなエドワードにチェインは無言で睨み。
アブソーは心底ほっとしたように胸に手をあてていた。

+++

「アポトニティー様。私、エド兄様がいる場所に心当たりがあるんですけど・・・・」
その言葉につられて、クルーとリビーはある大きなビルの1階にいた。
勿論、リビーにはまったくエドワードを探す気がないので、クルーだけが無駄に目を動かすはめにな
っていた。
「アポトニティー様。ところで、ここには一人で来たんですか?」
唐突に、質問。
「ここ、というと・・・・」
「この時空――ここではトウキョウと呼んでいるようですが」
あぁ、それでしたら、一人ではありませんよ、と前置きをして、クルーは続ける。
「チェインと、アブソーという名前の女の子と来ました」
「女の子!?」
リビーはカッと目を見開いて、クルーに詰め寄った。
「その女の子とはど、どのような関係ですか?!」
「関係と言われましても・・・・」

――今ココで妹だと言っても、信じてくれるでしょうか・・・・。

なので、クルーは嘘をつかずに、こう答えた。
「親しい関係、と言えばいいでしょうか」
「親しい・・・・関係・・・・」
ならば、と言ってリビーは問う。
「アポトニティー様は、その、アブソーというお方をどう思っているのですか」

「愛していますよ」

即答。
なんの迷いも躊躇も無く、クルーは言った。
リビーは固まっていた。
「アブソーは私の大事な人です。だから――」

もう、彼女を失いたくはありません。

クルーは言い終わって、隣で唖然とするリビーに、
「・・・・あぁ、すいません。私らしからぬことを言ってしまいました」
ははは、と爽やかに笑うクルーにときめく暇もないくらいに、リビーは落ち込んでいたのだった。

+++

「くしゅんっ」
「ん? 大丈夫か」
「あ、はい。ただのくしゃみですから」
「ふむ、誰かが噂でもしたか?」
なにせ、アブソーは美人だからな、と言って、エドワードは突然立ち上がって、
「ここにじっと座ってお茶をしてても仕方ない。リビーと・・・・クルーを探そう」