私は鼓膜を劈くような金属音で、目を覚ました。
横を見ると、目覚まし時計が鳴っている。
私はそれを止めると、その反対側に視線を向けた。
「うー。あ、エド兄様、おはよぉ・・・・」
うす紫色の髪を乱れさせて、愛しい我が妹は私にそう言った。
「おはよう、リビー。ところで、髪がすごいことになっているよ」
「え、ホント? ちょっと鏡見てくる!」
リビーはベットから降りると、洗面所の方へとことこと歩き出した。
そこで改めて今の状況を確認する。
横を見ると、目覚まし時計が鳴っている。
私はそれを止めると、その反対側に視線を向けた。
「うー。あ、エド兄様、おはよぉ・・・・」
うす紫色の髪を乱れさせて、愛しい我が妹は私にそう言った。
「おはよう、リビー。ところで、髪がすごいことになっているよ」
「え、ホント? ちょっと鏡見てくる!」
リビーはベットから降りると、洗面所の方へとことこと歩き出した。
そこで改めて今の状況を確認する。
まず、私達は何故ここにいる?
私達は確か、馬車に乗って城に帰っていたはずだなのだ。
そして、気付いたら妖精界ではない世界にいた。
私が思うに、ここは時空なのだとは思うが。
幸い、宝石をいくつか持っていたので、ここの世界の紙幣に替えて生活することはできるのだが――帰れるかどうか分からない、というのが現状だ。
ただ、一番心配なのは私達の使命を達成できるかどうか。
確か、そろそろ儀式をしなければ、世界は――
「エド兄様」
「・・・・どうした、リビー」
「あの、あれって・・・・」
言いながら、リビーは窓の外を指差す。
私はそれに従って、外を覗く。
ここは『マンション』という建物なので、いささか高さが邪魔し、リビーが何を指差しているのか
分からなかった。
そこで、彼女が一言。
そして、気付いたら妖精界ではない世界にいた。
私が思うに、ここは時空なのだとは思うが。
幸い、宝石をいくつか持っていたので、ここの世界の紙幣に替えて生活することはできるのだが――帰れるかどうか分からない、というのが現状だ。
ただ、一番心配なのは私達の使命を達成できるかどうか。
確か、そろそろ儀式をしなければ、世界は――
「エド兄様」
「・・・・どうした、リビー」
「あの、あれって・・・・」
言いながら、リビーは窓の外を指差す。
私はそれに従って、外を覗く。
ここは『マンション』という建物なので、いささか高さが邪魔し、リビーが何を指差しているのか
分からなかった。
そこで、彼女が一言。
「あれは、アポトニティー様ではありませんか!!」
「なに!?」
さすが我が妹。
クルーを探すことに関しては一流だ。
「とりあえず、迎えに行こう。リビーも行くか?」
「もちろんですよ!」
そこで私達は早速服を着替えると、玄関のドアを開いた。
さすが我が妹。
クルーを探すことに関しては一流だ。
「とりあえず、迎えに行こう。リビーも行くか?」
「もちろんですよ!」
そこで私達は早速服を着替えると、玄関のドアを開いた。
+++
「リビー、クルーはどこら辺にいたんだ?」
「えーと。こっちかな?」
リビーはキョロキョロと必死に大きな紫色の目を動かしていた。
まったく、何故ココはこんなにも人ごみが多いのだ。
「えーと。こっちかな?」
リビーはキョロキョロと必死に大きな紫色の目を動かしていた。
まったく、何故ココはこんなにも人ごみが多いのだ。
この――『トウキョウ』という都市は。
一度はぐれたら、二度と会えなくなってしまいそうだ。
「リビー、迷子になると大変だ。くれぐれも私から離れないように・・・・」
目を彼女がいるはずのところへやる。
「リビー、迷子になると大変だ。くれぐれも私から離れないように・・・・」
目を彼女がいるはずのところへやる。
我が妹の姿は無かった。
どうやら、待ちきれず勝手に一人で行ってしまったらしい。
…………。
心臓が止まったような気がした。
「・・・・絶対に探し出からな。リビー」
私は決意を固めると、騒がしい都市へ一歩を踏み出した。
…………。
心臓が止まったような気がした。
「・・・・絶対に探し出からな。リビー」
私は決意を固めると、騒がしい都市へ一歩を踏み出した。
+++
サイラー・エドワード。
サイラー・リビー。
二人合わせてサイラー兄妹。
彼らは、貴族。
彼らは、天才。
そして、何よりも誰よりも絆が強かった。
困難災害障害天災事故試練にも、対抗し、尚且つ、切れない絆。
それが彼らの、最大の武器にして、唯一の切り札。
彼らは、貴族。
彼らは、天才。
そして、何よりも誰よりも絆が強かった。
困難災害障害天災事故試練にも、対抗し、尚且つ、切れない絆。
それが彼らの、最大の武器にして、唯一の切り札。
例えばそれは旧友同士の腐れ縁のような――、
例えばそれは恋人同士の赤い糸のような――、
例えばそれは天敵同士の因縁のような――、
例えばそれは恋人同士の赤い糸のような――、
例えばそれは天敵同士の因縁のような――、
――絆。
人と人を繋ぎ、架ける物。
人と人を繋ぎ、架ける物。
それを持つサイラー兄妹の片割が、何故か一人で、俺の前に座っている。
+++
「で、どうやって時空に飛んだのかな、君達は」
「それは後で話すが・・・・それよりも、リビーはどうした」
「・・・・・・・・不覚だった。私が不注意なばっかりに、リビーは・・・・」
エドワードは最後、消え入りそうな声で言うと、頭を抱えて何やらぶつぶつと呟き始めた。
アブソー、チェイン、エドワードはとある喫茶店にいた。
「それは後で話すが・・・・それよりも、リビーはどうした」
「・・・・・・・・不覚だった。私が不注意なばっかりに、リビーは・・・・」
エドワードは最後、消え入りそうな声で言うと、頭を抱えて何やらぶつぶつと呟き始めた。
アブソー、チェイン、エドワードはとある喫茶店にいた。
少し時間を遡る。
アブソー達は無事に時空に、トウキョウに着いた。
しかし、人ごみにまみれ、クルーとはぐれてしまったのだ。
そして、残った二人が適当にさまよっているのを、偶然エドワードが見つけたのだ。
以上、経緯。
アブソー達は無事に時空に、トウキョウに着いた。
しかし、人ごみにまみれ、クルーとはぐれてしまったのだ。
そして、残った二人が適当にさまよっているのを、偶然エドワードが見つけたのだ。
以上、経緯。
「けど、クルーさんのことは見たんですよね?」
「・・・・・・見たのはリビーだけだが」
「まぁ、リビーとクルーが合流していれば取りあえずは安心なんだが」
そこで、チェインは置いてあったカフェオレを一口飲んだ。
ちなみに、アブソーの前にはオレンジジュース。
勿論、全てエドワードの奢りだった。
「ああそうだ。確か・・・・アブソー、でしたか。貴女、人間界にいたんですよね?」
「はい、そうですけど」
「人間界ってものは、こんな感じだったのか?」
そうですね・・・・、と言いながら、アブソーは改めて周りを見渡した。
高くそびえる灰色の建物。
そこに映し出される映像。
自動で走る色とりどりの馬車。
人混み。人混み。人混み。
「・・・・・・見たのはリビーだけだが」
「まぁ、リビーとクルーが合流していれば取りあえずは安心なんだが」
そこで、チェインは置いてあったカフェオレを一口飲んだ。
ちなみに、アブソーの前にはオレンジジュース。
勿論、全てエドワードの奢りだった。
「ああそうだ。確か・・・・アブソー、でしたか。貴女、人間界にいたんですよね?」
「はい、そうですけど」
「人間界ってものは、こんな感じだったのか?」
そうですね・・・・、と言いながら、アブソーは改めて周りを見渡した。
高くそびえる灰色の建物。
そこに映し出される映像。
自動で走る色とりどりの馬車。
人混み。人混み。人混み。
「・・・・少なくとも私が知っている人間界は、こんな風では無かったと思います」
「そっか。それじゃあここは、さしずめ未来の人間界ってことになるかな」
「未来の・・・・か。時空ってのは、そこまで含んじまうのか」
感心したようにチェインは言って、空になったカップの底を見つめた。
「そっか。それじゃあここは、さしずめ未来の人間界ってことになるかな」
「未来の・・・・か。時空ってのは、そこまで含んじまうのか」
感心したようにチェインは言って、空になったカップの底を見つめた。
+++
「・・・・リビー」
「何ですか?」
「あなたは一体何がしたいのですか?」
「アポトニティー様。それは乙女にしてはいけない質問ですよ」
そう言って少女は、クルーとつないでいる手を少し強く握った。
リビーはクルーを見つけた直後、自分が兄とはぐれていることに気付いたが。何分クルーと二人っき
りになれたので、すぐそばに自分の仮住いとしてのマンションもあったが、
「アポトニティー様、私、ずっとずーっと前からエド兄様とはぐれてしまったんです。しばらく一緒に探
してくれませんか?」
勿論言われなくても分かるが、一応言おう。嘘である。
しかし、そこで断れないクルー。
というわけなので、現在はリビーの思惑通りに進んでいた。
「しかし、貴女さっきから視線を動かしていないですよね。それはエドワードを探していないとも解
釈できてしまうのですが」
「えぇえ?! あ、アポトニティー様は、わわわ私のことを、こんな純粋で可愛らしい女の子を疑う
と、そう言うのですか!!」
「い、いえ。そういうわけでは・・・・」
あまりの剣幕でそのようなことを言われてしまったので、クルーはもう黙るしかなかった。
「まったくもう。いくらアポトニティー様でも、そのようなことを言われては、傷つきます」
あぁ、痛い痛い、と言いながら、リビーは大袈裟に胸の辺りに手をあてる。
「何ですか?」
「あなたは一体何がしたいのですか?」
「アポトニティー様。それは乙女にしてはいけない質問ですよ」
そう言って少女は、クルーとつないでいる手を少し強く握った。
リビーはクルーを見つけた直後、自分が兄とはぐれていることに気付いたが。何分クルーと二人っき
りになれたので、すぐそばに自分の仮住いとしてのマンションもあったが、
「アポトニティー様、私、ずっとずーっと前からエド兄様とはぐれてしまったんです。しばらく一緒に探
してくれませんか?」
勿論言われなくても分かるが、一応言おう。嘘である。
しかし、そこで断れないクルー。
というわけなので、現在はリビーの思惑通りに進んでいた。
「しかし、貴女さっきから視線を動かしていないですよね。それはエドワードを探していないとも解
釈できてしまうのですが」
「えぇえ?! あ、アポトニティー様は、わわわ私のことを、こんな純粋で可愛らしい女の子を疑う
と、そう言うのですか!!」
「い、いえ。そういうわけでは・・・・」
あまりの剣幕でそのようなことを言われてしまったので、クルーはもう黙るしかなかった。
「まったくもう。いくらアポトニティー様でも、そのようなことを言われては、傷つきます」
あぁ、痛い痛い、と言いながら、リビーは大袈裟に胸の辺りに手をあてる。
――昔からこの子は、本当に世話が焼けるというかなんというか・・・・。
クルーは一人思案しながらも、黙々と目を動かしていた。
+++
そして、場所は変わり。
喫茶店。
喫茶店。
「あぁ、そういえばよ。エドワード、お前って『ファント』のことは知ってるよな」
「いちおうは。・・・・何故いきなりそんなことを」
「実はよ。お前らも含め、八妖精が時空へ飛ばされてんだよ」
エドワードは少しだけ、驚いたように表情を変えた。
「・・・・それは、本当か」
「おう。厳密に言うと、俺とクルーは無事だったんだがな」
そうか、と相槌を打って、エドワードは言う。
「それをやったのが、ファントだと。貴方はそう言いたいわけですか」
「そうだな・・・・それだけのことをやるためには、それぐらいの魔力を使うからな」
チェインはそう締めくくって、もともと置いてあった水を飲んだ。
「しかし、至極納得がいかない」
何がだ? とチェインが聞き返すと、
「いちおうは。・・・・何故いきなりそんなことを」
「実はよ。お前らも含め、八妖精が時空へ飛ばされてんだよ」
エドワードは少しだけ、驚いたように表情を変えた。
「・・・・それは、本当か」
「おう。厳密に言うと、俺とクルーは無事だったんだがな」
そうか、と相槌を打って、エドワードは言う。
「それをやったのが、ファントだと。貴方はそう言いたいわけですか」
「そうだな・・・・それだけのことをやるためには、それぐらいの魔力を使うからな」
チェインはそう締めくくって、もともと置いてあった水を飲んだ。
「しかし、至極納得がいかない」
何がだ? とチェインが聞き返すと、
「こんなにも素敵なアブソーがチェインの恋人だなんてな」
「「・・・・へ?」」
「まったくもって不可解だ」
勝手に話を進めるエドワードに、二人は力強く言った。
「ち、違うに決まっているだろ! 馬鹿じゃないのか?!」
「断じて! 断じて違いますですよ、エドワードさん!!」
「です、が多いよ。アブソー」
エドワードは冷静に言って、
「大丈夫。からかってみただけだ」
「・・・・・・」
そんなエドワードにチェインは無言で睨み。
アブソーは心底ほっとしたように胸に手をあてていた。
「まったくもって不可解だ」
勝手に話を進めるエドワードに、二人は力強く言った。
「ち、違うに決まっているだろ! 馬鹿じゃないのか?!」
「断じて! 断じて違いますですよ、エドワードさん!!」
「です、が多いよ。アブソー」
エドワードは冷静に言って、
「大丈夫。からかってみただけだ」
「・・・・・・」
そんなエドワードにチェインは無言で睨み。
アブソーは心底ほっとしたように胸に手をあてていた。
+++
「アポトニティー様。私、エド兄様がいる場所に心当たりがあるんですけど・・・・」
その言葉につられて、クルーとリビーはある大きなビルの1階にいた。
勿論、リビーにはまったくエドワードを探す気がないので、クルーだけが無駄に目を動かすはめにな
っていた。
「アポトニティー様。ところで、ここには一人で来たんですか?」
唐突に、質問。
「ここ、というと・・・・」
「この時空――ここではトウキョウと呼んでいるようですが」
あぁ、それでしたら、一人ではありませんよ、と前置きをして、クルーは続ける。
「チェインと、アブソーという名前の女の子と来ました」
「女の子!?」
リビーはカッと目を見開いて、クルーに詰め寄った。
「その女の子とはど、どのような関係ですか?!」
「関係と言われましても・・・・」
その言葉につられて、クルーとリビーはある大きなビルの1階にいた。
勿論、リビーにはまったくエドワードを探す気がないので、クルーだけが無駄に目を動かすはめにな
っていた。
「アポトニティー様。ところで、ここには一人で来たんですか?」
唐突に、質問。
「ここ、というと・・・・」
「この時空――ここではトウキョウと呼んでいるようですが」
あぁ、それでしたら、一人ではありませんよ、と前置きをして、クルーは続ける。
「チェインと、アブソーという名前の女の子と来ました」
「女の子!?」
リビーはカッと目を見開いて、クルーに詰め寄った。
「その女の子とはど、どのような関係ですか?!」
「関係と言われましても・・・・」
――今ココで妹だと言っても、信じてくれるでしょうか・・・・。
なので、クルーは嘘をつかずに、こう答えた。
「親しい関係、と言えばいいでしょうか」
「親しい・・・・関係・・・・」
ならば、と言ってリビーは問う。
「アポトニティー様は、その、アブソーというお方をどう思っているのですか」
「親しい関係、と言えばいいでしょうか」
「親しい・・・・関係・・・・」
ならば、と言ってリビーは問う。
「アポトニティー様は、その、アブソーというお方をどう思っているのですか」
「愛していますよ」
即答。
なんの迷いも躊躇も無く、クルーは言った。
リビーは固まっていた。
「アブソーは私の大事な人です。だから――」
なんの迷いも躊躇も無く、クルーは言った。
リビーは固まっていた。
「アブソーは私の大事な人です。だから――」
もう、彼女を失いたくはありません。
クルーは言い終わって、隣で唖然とするリビーに、
「・・・・あぁ、すいません。私らしからぬことを言ってしまいました」
ははは、と爽やかに笑うクルーにときめく暇もないくらいに、リビーは落ち込んでいたのだった。
「・・・・あぁ、すいません。私らしからぬことを言ってしまいました」
ははは、と爽やかに笑うクルーにときめく暇もないくらいに、リビーは落ち込んでいたのだった。
+++
「くしゅんっ」
「ん? 大丈夫か」
「あ、はい。ただのくしゃみですから」
「ふむ、誰かが噂でもしたか?」
なにせ、アブソーは美人だからな、と言って、エドワードは突然立ち上がって、
「ここにじっと座ってお茶をしてても仕方ない。リビーと・・・・クルーを探そう」
「ん? 大丈夫か」
「あ、はい。ただのくしゃみですから」
「ふむ、誰かが噂でもしたか?」
なにせ、アブソーは美人だからな、と言って、エドワードは突然立ち上がって、
「ここにじっと座ってお茶をしてても仕方ない。リビーと・・・・クルーを探そう」