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無人島

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shousetsu

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雑談では「推理物」とか言ってたけど、「冒険もの」だよ!!

  • 一人の人が続けて書くようなことは、極力控えましょう。
  • 二人の人が交互に書くことも控えましょう。
  • 世界観と主人公だけ先に決めておきます。その他の設定、登場人物については、自分で作るようにしましょう。


【ストーリー背景】

寄り付く島のない孤島。
浜辺には、墜落したセスナと、後ろを向けばいかにも怪しいジャングルと雲に差し掛かる山々が見える。川もない!
男はアフリカの人事開拓支援を指揮をするためにやってきたにも関わらず、その途中、乗っていたセスナが墜落。

パイロットと、他の3人の乗客が見当たらなかった。
これからどうやって生きる……そして、4人をどうやって探す……ジャングルには何かがある……
実直ニホンジンの無人島攻略がいま、始まる!


【主人公】

伊藤 忠敬(イトウ・タダタカ) 26歳
身長、体重、ウェストなどは非常に日本人的。
定期的にジムで鍛えてあるため、筋肉はある。ただし、異常に身体は固い。
性格が、やたらと実直真面目。
某稲のつく大学の経済学部卒。現在は、貿易会社に勤務。
口癖は「私の計算が狂うなんて!!」



ルンシィ
「あああ!!!私の計算が狂うなんて!」
忠敬は嘆いた。
「なんだここは!地図に載ってないじゃないか!」
必死にアフリカ出張の際に渡された地図をめくるものの何一つこの島に関する情報が無かった。日本人の地図の細かさの感覚と、アフリカの地図とはわけが違ったのだ。
見渡す限りのコバルトブルーと、背後のうねる黒々としたジャングル、そして隣には大破して燃えしきっている我がセスナ。潮風にまみれて7・3分けが激しく乱れた。


§key
「あああ!!私の7・3が乱れるなんて!」
忠敬はなお嘆いた。
彼の誇る髪型…7・3分けとテクノカットを混合したある意味センス抜群の日本男児的ヘアー。かのロン毛で有名なハイキングウォーキングの鈴木○太郎も草葉の陰で泣いてらっしゃる程のセンスだ。
勿論、忠敬が尊敬する人物はオート゚リーの春日。
彼は経済学部出身だが、地図を見て絶望の感情と共にまた別の感情がふつふつと込み上げてきた。

測 量 士 の 血 が 騒 ぐ

「ハッ!いかんいかん。まずはここから移動しないと」


やまちー2008
「しかし・・・移動しようにもどこに移動すればいいのだ?」
後ろには、思わず入るのを躊躇してしまうようなジャングルがある。
前には海しかない。
泳いでも助かる可能性などまずない。
だが、移動しなければ始まらない。
絶望的な状況の中、忠敬はあることを思い出した。
「そうだ・・・私のほかにも乗っていた人がいるはずなのだ」
探して見つけ出すことが出来れば、少しは安心できるかもしれない。
そして、その手段は後ろに広がるジャングルに足を踏み入れること。
      • としか、忠敬は考えられなかった。
「・・・よし」
覚悟を決めたか、忠敬は
薄暗く気味の悪いジャングルへ
足を踏み入れていった。
「・・・私の計算が狂うなんて・・・」
と、もう一度嘆きながら。


青夢絵里
――が、しかし。此処は日本ではないのだ。
もしも、猛毒を持つ昆虫やら植物、そして獰猛な獣と遭遇したら――?
忠敬は手ぶらである。
その上彼は平和主義の日本に生まれ育ったので勿論、戦闘経験など皆無である。なので、例えこの場にナイフが在ったとしても、彼はそれを使いこなせないだろう。
まあ、体力はあるので、逃げればいいだけのことだが。
「しかしそれでも、何かしら武器は欲しいな……」
忠敬がジャングルに這入ってもう随分と時間が経ったが――あまり進んでいないだろうと、測量マニアの忠敬は思う。
その原因は――草木。
一歩進むごとに、どこかしら衣服が引っかかり、その度に外し、また一歩進み――の繰り返しである。
「嗚呼、私の計算が狂うなんて――ん?」
忠敬は立ち止まった。
人が、居た。


ルンシィ
ああそうだ、あれは人……そう生身であってほしかった。生きていて欲しかった。
男は必死で走った後の吐き気を催す呼吸をしながら呻いた。
だが、そこにあったのは、屍などでなく、何故か『マネキン』があったのだ。
皮肉なことにどこからどうみてもシリコンラバーが半分引きちぎられ黒カビに蝕まれている『マネキン』だった。
だが、マネキンは太い針金が突き刺さっていることに、計測マニア魂が燃えて、バストを測っているときに気がついた。
「何故こんなところにマネキンが……いや、この芯である針金を抜けば武器に……」


§key
「ってなるかあぁーー!」
大学のコンパで鍛えられた華麗なるノリツッコミが炸裂! が、こんな非常事かつ人間の見当たらないジャングルに残るのは虚しい静寂だけだった。

--ゲコゲコッ

「嗚呼、そこのカエルのお嬢さん。ご静聴ありがとう。」
そして、忠敬は考える。
この針金は武器にこそならないが、何か小さい物を刺して使う分には問題無さそうだな、と。
なら、どう使うか…。勿論、食料確保の為に使うのが妥当だろう。
そういえば、カエルって食べれるんだったっけな。

「……ジュル。ターゲット…ロックオン」


--ゲコッ!?

やまちー2008
蛙はその忠敬の雰囲気を察したのか、一目散に逃げ出していった。
「あ、いや、ちょ、待て!!」
忠敬は必死に追おうとした。

―――追おうとしたが。
その2秒後には、忠敬はバランスを崩して地面に突っ伏していた。
なぜか?答えは明白である。
忠敬の服に、草木が引っかかっていた。


ルンシィ
「はは……こ、こんなジャングルだ!もっと大物がいるにちが……ちがいない!」
泥と汗まみれとになったスーツの臭いを嗅いで、わずかに吐き気を催した。
「蛙がつかまらなかったのは……まぁ、計算の範疇だ……だが!私の計算が狂うなんて!こんなに汚れるはずではなかった!くっそぉ~……クリーニングの金が……ああ!糸が糸があああああああ!!!!!!!!」
ようやく草木に糸が引っ掛かっていることに気づいた。スーツが動けば動くたびに短くなっていった。
その後、一気に襲ってきた疲れとともに忠敬は呆然と座って空を見上げ始めた。本では到底聞けない奇怪な鳥の声と響き渡る猿の声がした。
空虚は時間の流れとともに発見を生んだ。
水の音がするのだ。
そういえば、何も飲んでいない。
のどがうっそうとした雨林の中で乾ききっていることに怒りを覚えた。そう、これも計算外だ。
忠敬は水のする音を『本能の赴くまま』という素振りを示して必死で聞き分けた。



「そっちか!!!!!」
と、忠敬は三時の方向を指差し、一目散に走り出した。
5日間くらいロクな飯にありついていなかったライオンが、ついに獲物を見つけた時の様に。
が、走っている最中に木の枝にスーツの糸が引っ掛かった。
忠敬が二度同じ過ちを繰り返すなど、誰が思っていたことか。
「なっ!! またかっ!? 私の計算が狂うなんて!! まぁいいや!!!!!!!!!!!」
忠敬はそんな『些細』な事を気にもせず、走った。

そう・・・・・・。
忠敬はこのプロセスの中で格段に成長していたのである。

忠敬は走った。なんかもう、破れてスーツじゃないようなスーツ姿で。
ただあふれる水の音が聞こえる方へと。



その音源へとたどり着いたとき、忠敬のスーツはもはや見る影もなくなっていた。
しかし、それですら忠敬は気にしない。だが、またもや彼は叫んだ。
「ああ! そんな、私の計算が狂うなんて! もっと綺麗な清水が湧いているはずだったのに!」
忠敬の目の前に広がる水源は、濁りに濁りきった水溜りだった。とても人が飲めるものではない。岩から湧いているのが見て取れたが、その湧き水ですら濁っていたのである。
さすがに今回は、まぁいいやとは言えない。一口なら害もなさそうだし飲んでみるか、と身をかがめたその時、視界に映る草むらが揺れた。
「……ん?」



中途半端に取り戻した野生の魂が鈍いアドレナリンを忠敬に走らせた。
――何だ!?
一瞬の走馬灯とともに必死に近くの林に隠れた。もちろん枝にスーツが引っ掛かったことは当然のことである。
恐怖と戦慄が走る。何かが向こうの草むらから出てくる……
「しぬのか!?私は!!死ぬなどということは私の数式に存在しないはずだ!!」
全身の冷や汗をたぎらせ向かう草むらを覗く。その度にスーツが短くなっていく。そう、我が命同然のように……
そこにいたのは
そう、なんと、

『カピバラさん』だった。



「Freeze! Who are you!」
第一声がそれだった。
カピバラさんは近付いてくるのが誰なのかも確認せずに武器を構えたのだ。振り向き様のその早さ、まるで軍人かぶれのような動きで構えたのだ、……ぶっとい針金を。

「って、アンタもか!」

いや、微妙に忠敬の物とは違っていた。
彼のには……カエルが刺さっていた。

「Who are you! Hey,jap! Who are you!」
「なんか……負けた」

「Who are ----」
「黙れ」
「スミマセン」



というかその前に。
ツッコミやら入れる、それ以前に。
動物なのに何故人語を喋っているのかと、忠敬は思わないのだろうか。
それこそ、計算が狂っている――だが、否。
忠敬は、成長している。
確実に、適応している。
忠敬が住んでいた都会とはかけ離れた――この命がけの無人島の中で。
だから彼は、些細なことでは計算しない。
はずれても、大声を上げて嘆かない。
それは――『現在の状況の』忠敬にとっては冷静と言えば冷静とも取れるが、感情的と言ってしまってもいいようなもの――矛盾したものだったが、それはともかくとして。
忠敬は言った。
「……これ、食ったら美味いかな」




「What say‥‥??」
カピバラさんは太く固い首をおしまげ、必死に伸ばした蹄に届かせ、「What say‥‥??」の素振りを見せた。ブンブン蹄がぶれる。何故かのびきった後ろ足がプルプル震えていた。
「これから、お前を食う……」
目の前には焼いた姿が交錯させられた。そして針金を強く握り、カピバラさんに走りかかろうとした。
が、その時!!
濁った仄暗いの底からブクブクと泡が立ちはじめた。
「何か……いる……?!」
忠敬はアドレナリンがまだまだ止まらない!!



ふいに泡が立っている沼から何か、藻が絡んだ棒切れのようなものが出てきた。
忠敬は思わず数歩後ろにさがった。なにかごわごわしたものに触ったので見てみると
カピバラさんが忠敬にくっついて怯えている。「What??!! What`s this???」
続いて、その沼から何やら悲鳴とうめき声の中間のような奇声が聞こえてきた。
「$#○※□∬!!!!」二人はさっきまで食いかける、食われかけるの関係だったにも
関わらず、共に抱き合って振るえ始めた。そんな様子を知ってか知らずか
沼の主はさらに派手に泡を立て、その姿を現し始めた。



「汝が落としたのは、この金の斧か?それとも、銀の斧か?」
 沼から姿を現したその人物は、開口一番にそう言った。
 にごった沼から出てきたとは思えないほど真っ白なローブに身を包み、フードで顔を隠している。声からして男だろうか?右手に金の斧、左手に銀の斧を持っている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 しばしの沈黙。それを破ったのはローブの男。
「ふむ・・・、間違えたか?」
「いや、こっちに聞かれても・・・」
 男の疑問に対し、返答に困る忠敬と、相変わらず震えているカピバラさん。
 それを意に介することなく、男は沼に両手の斧を投げ捨てた。そして、
「ここで会ったのも、何かの縁だ」
 忠敬に向けられた男の指が一瞬、光を放ち、それが消えると、スーツが新品同様の状態に戻っていた。
「人語を話す動物がいるのだ、このくらいはよかろう?これはおまけだ。貴重な品だから、無くさぬようにな。それと、西に向かうといい」
 男はそういって何かを投げてよこしてきた。
 忠敬がそれを受け止め、視線を戻したとき、男の姿はなかった。




泉の男に投げ渡されたそれは、金の斧でも銀の斧でも普通の斧でもない、1枚の紙だった。
それも、宝のありかが描いてある紙や、この島からの脱出方法が書いてある紙でもない。
それは、500円分の図書券だった。
そう、しかも図書券。 図書カードではなく、とうの昔になくなった図書券だった。
このときばかりは、成長したとはいえ忠敬は叫ばずにはいられなかった。

「私の計算が狂うなんてーーーーーーーーー!!」



然とする忠敬。
500円の図書券…平安時代のやまと絵が描かれていた。
「これを持って…西へ…」
南?から北?へジャングルを抜ける風がパラパラと図書券を揺らした。
「オーウ!ナイス、ジャパニーズカイガ、デスネー!!」(英語めんどいからカタカナにした。)
カピバラさんがモフモフ口を動かした。やたらと新着されたスーツと不釣り合いの泥と傷と汗だらけの顔でカピバラさんを見下した。
「ワタシー、ジャパニーズカイガ、ダイスキデース!ワタシ、タクサン、クイモン、モテマース!!コウカン、シマセーンカー?」
アフリカに派遣されるだけあって、忠敬は英語はできるのだ。このくらい朝飯前に分かるのだ!
「交換?(change?)」
もう一度、図書券を見つめた。

「西へ向かうといい」

この言葉が自分の心にまとわりつく。はたして、このまま「yes. we can!」と言っていいものか選択の時が迫られた。腹は空腹の限界をとっくにこしている。だが、泉からあらわれた人間が助言をしてくれたものだ…もしかして、この島ではとてつもない価値があるものではないのだろうか?これを簡単に交換してしまってよいものか…
忠敬は、せかすカピバラさんを前に、空腹と決別の格闘に悩みぬく。



RPG的な展開で言うと、明らかにこの500円図書券はフラグだ。
こんな所で手放せば、確実にゲームオーバー。
「たいせつなもの」リストに入るくらいの物に違いない。
しかし、この空腹を耐え忍び続るのも、そろそろ限界だ!
どうする、私!ライフカードだよ!ちょっとネタ古いとか承知の上だよ!

「ドウスルデスカー!」

冷静に考え直してみれば、元々私はコイツを食べようとしていたんじゃないか!
この図書券を渡さず、それにコイツを食えば、全てが上手くいく!全く、私自身が恐ろしい!天才過ぎて困る!

「ノーサンキュー!!」

忠敬は大きな声で言った。
今の私、絶対にカッコいい。

「オー!ザンネンデース!」

『カピバラさん』がこの場を離れようとする。
すかさず忠敬は、『カピバラさん』をめがけて走り始めた!




「What!?」
忠敬の、まるで猪の突進のようなすさまじい足音に気付いたのかその場を立ち去ろうと背中を向けていたカピバラさんは振り返る。
いや、もしかしたら忠敬のすさまじい殺気にわずかに残った野性の本能が反応したのかもしれない。
そして、カピバラさんは自らの中に残った野生の本能の命じるがままに、その前足の先についた硬い蹄を振り返りざまに忠敬の顔面に向けて放った。
だが、忠敬もカピバラさんとほぼ同時に自らの拳を振り上げ、そして振り下ろしていた。
まるで、それまで溜めていた野生の本能を一気に解き放つかのように、この島に上陸した直後の忠敬からは想像もできない殺意を乗せた拳がすさまじい勢いでカピバラさんの顔面へと迫っていく。
だが、カピバラさんの都会のアスファルトのように硬い蹄も忠敬の鼻の先まで来ていた。
「「殺.る!!」」
2人の、否、2匹の獣の野生がぶつかり合う。



だがここで忠敬は――計算する。
果たして、これが私の勝ちで終わる可能性はあるだろうか?
勿論、在るにはあるだろう。
しかもそれは確実に、零に近いという風な絶望的数値というわけではない。
……が。
ひいきしてみても――それは五分五分。
「ならばっ!」
忠敬はカピバラさんに伸ばしていた拳を引っ込めると同時に、無理矢理に体勢を崩す
。結果――両者の渾身の一撃は、共に空振り。
「Ha,ha! What are you doing?! (はははは! 君は何をしているんですかあ?!) 」
仰向けの体勢となった忠敬の顔の真上を、まるでスーパーマンのような格好で通り過ぎるカピバラさん。
「その言葉、そっくりそのまま――あんたに返すことにしよう!」
そう高らかに叫ぶ忠敬を訝しげに見てから、カピバラさんはやっと気付いた。

目の前に固い木の幹があるということを――!

「Oh,my.Go――d!」
ゴツン、という鈍い音と共に、カピバラさんの悲鳴はジャングル中に響きわたった。
「ははは、これなら五分五分の勝負よりも幾分か分のいい勝負になるからな。私はこの孤島に来て初めて――木というものに、感謝したよ」
そして忠敬は、仰向けになったときの衝撃で破れたものと思われるスーツの袖を一瞥して、嘆息。
「嗚呼、だがしかし。せっかく新しくなった私のスーツがこんなことに――私の計算が狂うなんて」
刹那。
忠敬のお腹が苦しそうに鳴く。
食材はもうすでに確保した――ならば。
「お次は火の調達……」



忠敬はあたりを見回す。
―が、しかし火をどうやって調達しようか…。
さきほど美味しくイタダキマスする予定で殺ったカピバラさんがいくら美味しそうにみえるとはいえ、さすがに火でこんがりいかないとおいしくないだろう…。
お腹が空きすぎて先ほどまで音が鳴るだけで感覚はなかったのだが、食材を手にいれたせいだろうか。空腹による独特の吐き気がこみ上げてきた。
もう時間はない…。
自分の体が持つのも時間の問題だ…。
ぐうきゅるるるるるっるうるる…と情けない音。
「こんな恥を誰もいないところで晒してしまうとは…笑いがとれるチャンスだったのに…。私の計算が狂うなんて!!!!」
叫んでしまった忠敬は、一気に体力を消耗してしまい、その場に崩れ落ちた。
いわゆるHPが100ある中残りが5くらいの状態に陥っていた。
「う…くそ…っわたしの…計算が…狂うなんて…っ」
「HAHAHA!!It is really a person not to mention you!!(はははは!!貴方は本当におろか者ですね!!)」
「な、にぃいいいいいい??!!」
忠敬は力の入らない体をひねり、声の方向を向いた。
なんと、カピバラさんが復活しているではないか―!!!
カピバラさんは愛らしい容姿に似合わない、不敵な笑みを浮かべてチッチッチ。と人差し指(?)を口の前で左右に振る。
「The stuff is sweet to pull out the nature at the end!!(最後に気を抜くとは、詰めが甘いですね!!)」
「くそ…っ私の―」
お決まりのセリフを言おうとしたが―
忠敬は固まった。
触りなれたあるものの感触。
そしてこみ上げるナンテコッタ感―…
ポケットには、ライターが入っていた。
「私の計算が狂うなんてぇええええええええええ!!!!!」



「ま、待て、カピバラ君。ここは一つ、お互いを尊重しあって……」
「シャラ~ップ、ソンナ話ハ、通ジマセンヨォ~?」
 怒り心頭のカピバラ君。空腹という地獄は既に限界突破している。もちろん、戦う力など残ってなどいない。
 忠敬が脱兎のごとく逃げ出したのは言うに及ばず。もちろん、お決まりのセリフを残して。
「私の計算が狂うなんてええええええええええ!!!!」
 しかし、疲労と悪路で足はもつれ、スーツが繁みに引っ掛かってしまう。当然のごとく、丈の短くなるスーツ。縺れ合った足は絡まり合い、忠敬はその場に倒れこんでしまった。もちろん、戦う気力どころか、立ち上がる体力さえない。ただ弱々しく、
「私の……私の計算が、狂うなんて……」
 と、呟くことしかできない。
 カピバラさんは、ゆっくりと近づいてくる。木々の間から見える太陽のおかげで、忠敬は自分が西へと進んだことを理解したが、今わの際でそんなことを思っている自分を滑稽だと嘲いたくなり、図書券を上空へと突き出して、臨終の言葉。
「私の計算が……狂うなんて」
「ダレカソコニイルノカ?」
 その声は、カピバラさんのものではなかった。



 頭上の段差から猛獣を震わせるかのような図太い声。その一声が言い終えるかどうかの瞬間に声の主はカピバラさんと忠敬の間に跳躍……割って入った。
 剛々とした黒い体毛は全身に満遍なく生えそろっており、時折見える褐色肌は野生を連想させ、夜目もききそうな眼が唯一の人間らしさを覗かせる。
 だが、彼は人間だ。先程まで狩ると狩られる関係だった両者でさえ本能的に感じ取る。そして、またそれと同時に本当の意味での“狩ると狩られる関係”……すなわち、弱肉強食。さらに言えばこの場での支配者を感じ取る。
 忠敬は初めて自然の摂理を目の前にした。だが、震え上がるべき弱者は冷静に強者を分析していた。それは興味本位か、それとも生存本能か。

「ナニ ヲ シテイル オマエタチ」

 獰猛な声をよそに忠敬は確信を得る。
 人間……いや、生物という種は便利な事に環境に適応する能力があるのだ。
 彼は人間……これは覆しようがない。図太い声と思われた音はよく聞けば単なる猛獣の唸りであった。こんな風になるのだから幼少期から野生と隣り合わせだったに違いない。
 彼こそターザンなのだ、と忠敬は結論を出した。




 ディズニー映画でしか出会った事の無いターザンが今目の前に……ロン毛の超イケメンのアニメターザンは幻想、醜男も裸足で逃げ出すようなリアルターザンこそが現実である。
 忠敬とカピバラは知恵を絞って生き残る道を探る。
 この場から逃げるにはどちらかが餌食になるしかない、ならば……!

(アイツを囮にするしかない!)
(アイツを囮にするしかない!)

 二人(?)は思い立つと、すぐに行動に移る。

 互いの間に直立しているターザンに向かって走りだし、一発殴った所で……お互い同じ方向に走って行った。

「お前、なんでこっち来んだよ!?」

「そりゃ、こっちの台詞だ!」

 案の定、木という木を利用して追っ掛けるターザン。二人の努力も空しく、ジャングル中を駆け回る事となった。
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