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黒幕

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「ティーさんはあんなにすごい技も持っていたんですね!」
「あはは。お世辞はいいよ、アブソー」
「いいえ! お世辞ではないです! これは事実です!!」

など、女子組で話に花を咲かせている隣で、チェインとクルーは、自分も頑張ったのに、と心の中でぼやいていた。
テディベアも含めた5人は、マグマたちをひととおり倒した後、チェインやクルーが負った傷の手当てをし、アブソーから、ティーとマニ、クルー、チェインの順番で円になり座っていた。
[ところで、もうここに長居する理由はある?]
ティーの腕に抱っこされたマニは、砂で他の四人にそう伝えた。
「ふむ、確かにマグマは全滅させましたし、もう向日葵達が困ることはないでしょう」
「なら、アルファさんも心配要らないですね」
アブソーはそう言うと、上を見上げた。
大きなシルエットが目に映った。

「ただ納得がいかないのは、そのマグマの行動だ」
チェインは腕を組んで、
「マグマが動いているのは・・・ここは時空だから、に収まっても」
[問題は、そのマグマの行動の訳や動機]
「そこなんだよなぁ」
珍しく難しい顔をして言った。
「珍しく頭を使いましたね」
「・・・・」
金髪の青年は、クルー無言で睨んだ。
「それは私も気になってた」
ティーは口を開くと立ち上がって、何度も見た向日葵を見下ろした。
「この向日葵達は強い魔力を持ってる。
 けど、それは向日葵を食べても破壊しても手に入らない」
その後をアブソーが続ける。
「たとえ破壊したとしても、もう魔力を手に入れるのは無理だと分かって、
 もう向日葵達に危害は加えないはずです」
「よくできました」と言って、クルーはアブソーの頭をなでた。
チェインのクルーに対する怒りゲージが、少し上がる。
[なら、その問いに対する答えはどうなるんです?]
マニが至極当然の疑問を浮かべた。
「・・・手詰まりですね」
クルーが残念そうに呟いた。
そこで四人は再び頭を抱えた。
そして、それに対する突破口が突然現れた。
懐かしい声と共に。

「答えはもうとっくの昔に解いたよ」

その声は何故か向日葵から聞こえた。
そして、その事実はある一人の人物を真っ直ぐに示した。
ティーは声に驚き、向日葵達のほうをむいて、何か分かったように、
「・・・へぇ、そうかい。色々聞きたいことはあるけど、それは後にしよう」
そして、優しい笑みを浮かべて、

「とにかく、久しぶりだねドゥワーフ・タイニー」

「タイニーさん! タイニーさんなんですね?!」
アブソーは立ち上がると、向日葵のほうへ走っていった。
「お、おい! ・・・行っちまった」
手のかかる娘ですね、と言って、クルーは立ち上がると、
「さて、私達も行きましょうか、ティー」
ティーに手を差し伸べ、
「うん、そうだね」
ティーがその上に手を重ね、

[答え、というのも気になります]

マニがそう言って、三人はアブソーの後を追い始め、
「待て! 俺を置いていくな!」
最後に、チェインが叫んだ。

+++

「タイニーさん、聞こえますか?」
一足先にたどり着いたアブソーが、花に問いかけた。
「お、その声はアブソーかい?」
「はい! そうです」
元気なアブソーの声とは対称的に、タイニーの声はどこか重くなっていく。
「そうかい。・・・あのさ」
「はい、何ですか?」

「『ディーバ』っていう言葉、聞いたことあるかい?」

アブソーはしばらく考えた後、
「・・・・すみません、聞いたことはありません。」
「いや、知ってないならいいんだ。気にしないでよ」
タイニーの声の調子は、元に戻っていた。

「やっほー、覚えてる?」
アブソーの後ろから、声が飛んだ。
「・・・この声は、ハートピア・ティーかい?」
ティーは嬉しそうに、
「ビンゴだよ! わが友よ!」
と言って、向日葵に抱きついた。
「ティー、ソレはタイニーではありませんよ」
「コレは、クルー・アポト二ティー」
その声に、クルーは少し呆れて、
「・・・フルネームでなくてもいいでしょうに」
「別にいいじゃん。クルーの名前は忘れやすいし」
「言ってくれますね」
そんなやりとりに、アブソー達の顔には笑みが自然と浮かび――そして。
「タイニー、元気か?」
追いついたチェインが声をかける。
「アルター・チェイン、もちろん元気さ」
チェインは笑って、
「そっか、・・・良かった」
「僕も、君が元気そうでなによりさ」
短いやりとりの間で、タイニーの声はさらに明るくなっていた。

+++

「タイニー、元気か?」
ドクンと、心臓が跳ねた。
「アルター・チェイン、もちろん元気さ」
声、震えて無かったかな?
「そっか、・・・良かった」
タイニーは、城の外に生えた花を見ながら、
「僕も、君が元気そうでなによりさ」
笑って、言った。
「本題に行こうか」
そして、タイニーは自分しかいない空間の中で、真剣な顔をして、

「マグマは動かされていたんだ。本当の黒幕に、ね」

「……黒幕とは、どういうことですか?」
クルーがずいと、向日葵に近付く。
「そのまんまの意味さ。マグマの背後【バック】に真犯人がいるんだよ」
クルーはふむ、と頷き。
「なるほど。マグマはマリオネットにすぎなかった、というわけですか」
「だったら、どうだってんだよ」
「その事実によって、何か分かるのですか?」
その二人の問いに、ティーはほんの少し面倒臭そうに、そして律儀に答える。
「二人とも見たでしょ? あの半端ない数のマグマを。しかも、あれを個々に正確に且つ攻撃的にそして 俊敏に操るぐらいの魔力を持つ妖精なんて、そうそういないよ」
[けど、僕達はそれだけのことをやってのける妖精を、一人だけ知っているんです。チェインも耳にしたことがあるはずです。]
チェインはそのマニの言葉にぶるっと身震いした。
それは恐怖や悪寒や武者震いからなのかは分からない。
そこで、アブソーが分かったのはたった一つの事実。
それはとてもやっかいで、だけどとても簡単なもの。

――その『黒幕』は、凶悪にして強大な妖精。

「まさか、その黒幕って・・・・」
「そのまさかさ、チェイン」
「私も信じたくは無かったんですけどね」
「けど、マグマの一件がその人物を真っ直ぐに示しているのさ」
[面倒なことになりそうです]
各々が心に思ったことを言っている間、アブソーは少しも話の内容が見えてなかったので、
「あの、皆さんが話している人って、誰なんですか」
皆の視線が小さな少女に集まり、クルーが口を開き、そして、そして――

「『絶望的に強大な魔力の主』。私達はその妖精を『ファント』と呼んでいます」

そして少女は気付いた。
その絶望的という言葉には、希望や平和の文字など含まれていないことに。
その絶望的という言葉には、悪意や破壊の文字が含まれていることに。

アブソーは不安そうな目を浮かべ、
「もしかして、八妖精達を時空に飛ばしたのも・・・」
「多分、いや今思えばそんなことができるのもただ一人に絞れてしまう、か」
「つまり、こういうことだろ?」
そしてチェインは少し声を張り上げて、断言した。

「この一連の騒動は、全てファントの仕業だ」

この時、アブソーの心の中に今はまだ小さな恐怖の種が埋められた。
今は、まだ小さな――『ファント』という名の種を。