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ティーとマニ


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「チェインさん・・・」
「な、何だ?」
「これは、本物なのでしょうか。それとも、私が夢を見ているのでしょうか?」
「二人がまったく同じ夢を見るわけがないだろ・・・」
「それに、今私達がいるのは普通の世界ではなく、時空ですよ」
「では、認めないといけないんですね」
アブソーはそう言って、目の前の『何か』を見た。

「これは――・・」

+++

三人は再び、あの屋根の上にいた。
タイニーにクルーは一緒に来るか、と聞いたところ、
「私は残って、もう少し犯人について調べてみるよ。あの巨木とゆっくり話したいしね」
微笑みと共に、そう返ってきた。

「では、皆さん。行きましょう」
「おう」
「は、はい」

――・・・おや? 

アブソーはワープをするためにチェインと手を繋いでいたのだが、
微かにその頬は赤かった。

――もしかして・・・もうすでに彼らは両思いなのでは・・・?

クルーはふとそう思ったが、アブソーの思想をみて考え直す。

――いや・・・彼女、の方は自覚はしていない、のでしょうか。

そして、クルーはあることに気付いた。

――・・・チェインはいつ己が恋をしていることを知ったのでしょうか?

タイニーが気付かせたのでしょうか? と思ったときには、移動はすでに完了していた。

+++

何も無かった。
土と空気と空しかなかった。
他には何も存在しなかった。

アブソー達が着いたのは地平線まで続く大地だった。

大地、といってもそこに緑はなく、周りを見渡しても茶色い地面しか視えなかった。
「何も無いです」
「・・・誰もいないんじゃねえか?」
「妖精を探すのにも苦労しそうですね」
それぞれが思ったことを口にだしていた時――

『それ』は突如、上から現れた。

+++

「でわ、認めないといけないんですね」
アブソーはそう言って、目の前の『何か』を見た。
「これは、ドラゴンだということを――・・」


『何か』もとい、ドラゴンは、
そのガラスのように煌く鱗と、力強い翼を持っていた。
そして、ドラゴンは三人が呆気にとられている中で
己の翼を動かして、少しだけ風を創り、地に足を着けた。
「クルー、あれって・・・」
「ドラゴン。伝説上の怪獣。翼と大きな爪を持ち、中には炎を口から吐くものも存在する、らしいですよ」
「・・・誰がお前の知識を披露しろって言ったんだよ」
「そういうことではないんですか?」
その時、アブソーは気付いた。
「あ・・・チェインさん・・・・あれは」
「お前も気付いたか」
「・・・・? 皆さん何を・・・」
そして、クルーも気付いた。
アブソー達の目線の先にはドラゴンがいた。
しかし、彼らが見ていたのはもう少し上だった。

ドラゴンの翼の間に、人が居た。

「ここの時空には、人がいるってことが分かってよかったな」
「だけど、あの人は良い人なんでしょうか?」
「・・・・」

クルーはじっと『彼女』を見つめていた。

「おい、クルーいきなり黙り込んじまってどうしたんだよ」
「・・・チェイン、あの人をもっとよく見て下さい」
「・・・女性のようですね」
「女性? ・・・まさか・・・・!」
『彼女』は突如ドラゴンの上で立ち上がると、颯爽と三人の目の前に飛び降りた。
クルーは『彼女』に手を差し伸べて、
「心配してましたよ」
優しく言った。
「ははは。二人とも・・・久しぶりだね」
『彼女』――ハートピア・ティーはクルーの手をとると、優雅に三人の下へ歩き始めた。

+++

「私達を時空に飛ばした?!」
「そうですよ、ティー。チェインと私以外の八妖精は時空に飛ばされたんです」
「そんな簡単に時空に飛ばせるものなの・・・?」
「・・・あのよぉ・・・」
「ん? 何、チェイン?」
「た、高すぎねぇか?」

ティーを含めた四人は、先ほどのドラゴンの背に乗り、風のごとく雲の中を飛んでいた。
ドラゴンの背中は思った以上に面積が広く、四人がゆったりと座れるほどだった。
チェインのそんな言葉に、茶髪を結い上げているティーは軽く笑って、
「それぐらいで弱音なんか吐くなよ」
「よ、弱音じゃなくて・・・こいつが・・・」
チェインの腕にはアブソーが必死にしがみついていた。
「・・・この子って・・・あんたの子供?」
「違うに決まってるだろ!!」

クルーはティーにアブソーの事情を簡単に説明した。
そして、ティーは震える少女に近付いて、
「アブソー、か。・・・へぇ、人間界から来た少女ってわけか」
「は、はじめまして」
アブソーは涙眼でそれだけ言った。
「あぁ。高いところは苦手なんだね・・・待ってて」
そう言ったティーは、ドラゴンの頭の方に近付いて、言った。
「アルファ! もっと低く飛んでくれない?!」
ドラゴンにその声が届いたのか、
徐々に自分達が天から遠ざかるのがわかった。
アブソーはあらかさまにホッ、と胸をなでおろした。
そこでふと、クルーは疑問をティーにぶつける。
「ティー。何故このドラゴンの名前がアルファ、なんですか?」
すると、少女はさも当然という風に、
「だって、角がα【アルファ】の形に似てるだろ?」
笑って、言った。

+++

チェインの心臓は高鳴っていた。
さきほどまで自分の腕にからみついていた少女はおちつきを取り戻し、
今はおとなしくチェインの横に座っていた。

――今思うと、あの状況はすごく恥ずかしかったな・・・。

チェインは隣の少女に目をやった。

――俺はこいつのことが好き・・・か。

チェインは愛おしそうに彼女を見つめて、思った。

――なら、こいつは俺のこと、どう思ってんだ?


風は、獅子が吠えるような音を出していた。
そんなオトの中を、四人と一匹は真っ直ぐに飛ぶ。
「おい、ティーは見つかったんだからもう妖精界に帰らないか?」
「しかし、ティーによると、もう一人ここに妖精がいる、ということです」
「だからその妖精も連れて行くために、こうやって迎えに行ってるのよ」
その時、チェインは遠くを眺めて、
「それらしきものは・・・どこにもないぞ」
ティーはふふふ、と笑って、
「まぁ、見てなって」
その言葉を聞いて、風をうけながら三人はじっと前を見る。

そして、茶色の地平線の上に、微かに黄色が現れた。

「あれは、なんでしょうか・・・」
「あれはね、アブソー。花だよ。」
ティーが答えた。
「花、ですか?」
「こんな荒地のようなところに、花なんて咲くのでしょうか?」
「クルー、少しは頭を働かせなよ」
四人と黄色の花畑の距離は、もうそれほど遠くは無かった。
「花がこんなところに咲くなんて、理由はひとつしかないだろ?」
クルーは少し考えて、
「・・・花が魔力を持っているから、でしょうか?」
ティーは指をクルーに向けて、
「ビンゴ!」
楽しそうに言った。

+++

ドラゴン――アルファから降りた四人は、空から見た花畑に近付いていった。
花はこげ茶色の円を中心として、黄色の花びらが何枚も付いていた。

その姿はまるで、

「太陽。みたいな形だな」
その時、アブソーは何か思い出したように、
「・・・ティーさん。私、これ視たことありますよ」
「だろうね」
ティーは花をビシッっと指差して、得意げに言う。

「この花は、ヒマワリ! 日に向かう葵と書いて、向日葵って言うんだ!」

+++

――お客さんです。三人も。

――嬉しいです。嬉しいです。

――チェイン・アルターとクルー・アポトニティーです。私の友達です。

――懐かしいです。懐かしいです。

――そして、あの女の子。キレイな顔です。

――かわいいです。かわいいです。

――そして、私の愛しい人。ハートピア・ティー。

――美しいです。美しいです。

――私も、みんなのところに行きましょう。

――楽しそうです。楽しそうです。

+++

「あ、出てきたよ! もうひとりの八妖精が!」
ティーがそう叫んで、花畑の中を指差した先にいたのは――

――宙に浮いているテディベア (またの名を、くまのぬいぐるみ) だった。

三人が呆気にとられる中で、ティーはテディベアを抱き上げて、言った。
「紹介します! マニです!」