書きフライ☆wiki支部

・世界は思っていたものとは違っていて

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匿名ユーザー

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世界は俺が思っていたものとは全然違った。
頭上の空は、どこまでも広がっているものではなく、巨大なビル群に囲まれ、切り取られたもので、それに澄んだ青ではなく、濁った色をしていた。
また、風は清らかな、そして母のように優しくつつんでくれるものではなく、身体を舐め回していくかのような、生温かく、毒々しいものだった。

だが、その2つ以上に僕の想像を見事にぶち壊したものがいた。
それは、象のような、だが象の数倍はある巨大な身体を道いっぱいに広げ、血のように赤い頭から尾に続くたてがみをなびかせながら、するどく巨大な牙を剥き出しにして、黄色い殺気だった目で俺を睨みながらこちらに向かってきていた。
「助けてくれ!!」
必死に叫び声を、恐怖で潰れそうな喉から吐き出すが、誰もがちらと俺のほうを見て、そして怪訝そうな顔をするだけだった。
ゆっくりと、だが圧倒的プレッシャーをはなちながら歩くその怪物から、俺を助けようとするものはいなかった。
しかも、見て見ぬフリをしているというわけではなく、その怪物に気付いていないかのようだった。

気付くと、怪物は牛一頭なら丸呑みにできるのではないかと思えるぐらい大きな口を開け、俺に喰らいつこうとしていた。
異臭が鼻を突き、死と生温かい息が俺の頬を撫でていく。

(あ、これ死んだな)

そう思ったとき、1発の銃声が鳴り響いた。
しかし、発射された弾丸は怪物ではなく、道を歩く1人のスーツ姿の男性の頭を貫いていった。
男性が崩れ落ち、路面にぶつかる。
辺りに血飛沫が飛び散る。
そして、男性が倒れたと同時に、目の前の怪物が苦しそうなうめき声をあげ消えていった。

一瞬、時間が止まったかのように静まり返る。
そして、決壊したダムから水が一気に流れ出るかのように、人々の口から悲鳴があふれ出てきた。

そんな中、1人の若い白髪の男性が、その手に拳銃を握り、眉ひとつ動かさず、冷たい瞳で俺のほうをじっと見ている。 

突然、ぐっと引っ張られたかのように、俺の思考は悲鳴の波に流され、今日の朝まで引き戻された・・・

 

「君の就職先は警察の一部署だよ」
そう説明され、俺は施設の職員に飾り気のない1室に案内された。
そしてそこには、2人の男性がいた。 
1人は、一点の汚れもないような本当に真っ白な白髪で、すきとおるような綺麗な、これまた白い肌をした青年だった。
その青年の顔立ちはとても整っていて、美しかったが、その美しさは美術品のような、無機質な美しさで、俺は少し不気味に思った。
そしてもう1人は、人のよさそうな笑みを浮かべ、ほどよく陽焼けた健康的な小麦色の肌をした青年だった。
また、白髪の青年同様整った顔立ちをしていたが、白髪の男とは違い、生き生きとした美しさだった。

「わては龍、ちゅーんや。 よろしゅう。」
そう言って、小麦肌の青年、龍は笑顔で手を差し伸べてきた。
「俺は翔矢っていいます。 よろしくお願いします。」
俺は龍さんにならい、笑顔でそう言い手を握った。
「あの、それでそちらの方は?」
ちらと白髪の青年のほうを見ながら俺は尋ねる。
「ああ、あいつはルールて呼ばれとる。 無口でおまけに無表情やから誤解されること多いけど、根はいいやつやからあいつともよろしゅう頼むわ。」
またもやにこやかな笑みを浮かべながら龍さんは答える。
「ルール、ですか・・・」

そう俺が言ったとき、室内に電子音が鳴り響いた。
携帯を耳にあて、2、3言なにか話したあと、携帯を閉じ、龍さんは
「仕事や。 翔矢くんも一緒にきい。」
と言ってきた。
「仕事ってなにするんですか?」
急ぎ足で行く龍さんの背中に向かってそう尋ねる。
「それは向こうについてからのお楽しみや。」
俺の質問を受け取ると、龍さんはウインクをしながらそう言ってきた。
そして、俺は答えをしるためにも、その後を追った。・・・

 

「・・・警察です。 道を空けてください。」
その言葉により、辺りの悲鳴は止み、俺の思考も今に引き戻された。
誰かが通報したのだろう。
威圧的な警察服に身を包んだ警官たちは拳銃を持ちたたずむルールーの元へと進んでいく。
だがその歩みは、龍さんによってさえぎられた。
「同僚なんやし、そないおっかない顔せんといてーな。」
ニコヤカに笑いながら、彼はポケットから手帳のようなものを取り出した。
そして、その手帳を目にした瞬間、警官たちの態度が、イヤ雰囲気といったらいいのだろうか? とにかくそれまでのトゲトゲした様子が嘘のようになくなった。
例えるならば、おあずけをくらった犬のようなかんじだ。

「まあそういうことなんで。 あとよろしゅう。」
笑いながら龍さんは、警官たちに手を振り彼らの横を通っていく。
そしてその後ろをルールがついていく。
しかし、殺人者であるはずのルールを警官たちは止めようとはしなかった。
「ほな、帰ろか。」
龍さんはポンと俺の肩に手を置きながらそう言い、車に乗り込んでいった。
そしてルールもそれに続く。
俺も急いで、彼らに続き乗り込んだ。

 

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