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「くそ…っ!」彼はもう限界に達していた。いくら騎士団の最高位だとしても、これだけの量を相手するのは不可能だった。剣も既に刃が欠け、使い物にならなかった。「ここで負けるわけには…!」彼には守るべきものがあった。その存在が、彼を身体を動かし続けさせた。「危ない!」彼は彼女を覆うようにかばった。狼の爪が背中に喰い込む。その度、平気な顔をして彼女に見せるが、数え切れない傷が、彼の痛々しさを物語る。「ごめん…なさい…。」少女の頬に伝う滴が、彼の足元に落ちる。どうして、何故だ。何故、僕等の邪魔する。どうして、何故だ。何故、君に涙が流れる。この手は何故、彼女一人守れないんだ。「これを!」聞き慣れない声。少年の胸元に向かい飛んでくる剣。もう既に限界を迎えた身体を翻し、空中で捕まえ、一気に鞘を振り抜く。その勢いのまま滑走し、流れるように切り裂いていく。限界は確かに存在した。しかし、限界を超えた瞬間を目の前にして、もう限界など無かった。
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