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不純だ。この世界は不純だ。水が弾ける音がひとつ、ふたつ。創られては消され、創られては消され―。どうして私にはユメが見れないのだ。ユメでしか無いのだ。「ほう、ユメビト候補ですか。」「ええ、先代の王が選出した大臣も来年には13歳となってしまいます。」「しかし、早すぎはしませんか?」そう言い、重なった書物を本棚に丁寧に戻していく。その本棚には童話など一冊も無い。「そうは言ってられないのですよ、ユメビトは長い経験が必要です。シミュレーション能力だって、そう簡単には身につかない。」最後の一冊となった書物を大事そうに抱え、睡眠の邪魔が入らないように隅々まで整備されたベッドへと歩き出す。「それでは、失礼しますね。」防音加工されたその重苦しい扉のノブに手をかける。「シオン、お待ちなさい。」「…?ああ、そうでしたね。」振り返ると、まだ幼さが残る王が居る。ゆっくりと近付き、その細く長い繊細な手は、少年の髪をまるで風のように優しく撫でた。そう、彼はまだ子供なのだ。私達が犯してきた罪を、その小さな背中に背負わせるのはあまりにも酷すぎる運命ではないだろうか。「では、失礼しますね。」そして、闇は少年を包んでいった。
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